単独決算における子会社株式・関連会社株式の評価方法

親会社と子会社の定義は、「連結財務諸表原則」という、連結決算をおこなう時のよりどころとなる根本規則集によると、次のように示されています。

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【定義1】
「親会社とは、他の会社を支配している会社をいい、 子会社とは、当該他の会社をいう。」

【定義2】
「他の会社を支配しているとは、 他の会社の意思決定機関を支配していることをいい、次の場合には、当該意思決定機関を支配していないことが明らかに示されない限り、 当該他の会社は子会社に該当するものとする。」

【定義3】 後述
 …
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上記の2つの定義を見ていて気付くことは、「他の会社を支配する」ということが、親子関係を決定付けるキーワードである、ということです。

それじゃあ、「支配するってなにさ?」という疑問についてですが、さらに一歩踏み込んで、「その会社の意思決定機関を支配する」ことですよ!と連結財務諸表原則は言っている訳なのです。

さて、それでは、「他の意思決定機関を支配する」の具体例を、【定義3】として、付け加えてみますね。

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【定義1】
「親会社とは、他の会社を支配している会社をいい、子会社とは、当該他の会社をいう。」

【定義2】
「他の会社を支配しているとは、他の会社の意思決定機関を支配していることをいい、次の場合(【定義3】参照)には、当該意思決定機関を支配していないことが明らかに示されない限り、当該他の会社は子会社に該当するものとする。」

【定義3】 
「(1)他の会社の議決権の過半数を実質的に所有している場合」
「(2)他の会社に対する議決権の所有割合が100分の50以下であっても、高い比率の議決権を有しており、かつ、当該会社の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合」

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つまり、他の会社を支配するには、

●議決権(普通株)の過半数を所有する。
●議決権が過半数以下でも、意思決定機関を支配する。

といった状態にすればいいんですよ、と読み取ることができますね。

なお、意思決定機関とは、この場合、基本としては「株主総会」または「取締役会」をさします。
株を過半数もてなくても、いずれかの機関をを実質的に自社の思うとおりに動かせるようならば、その会社は「子会社です!」となります。

たとえば、A社がB社を子会社だと判断する場合には、
「A社がB社の株式(議決権)の過半数を握っている」か、
「A社が、B社の取締役会の過半数を自社の人間で固めている」か、
「A社が、契約などでB社の重要な財産・営業方針決定を支配できる」
などの事実があるかどうかを見極めるのです。

   親会社           子会社
   A社○ →→→→→→→→→ B社●
      「意思決定機関を支配」

さて、ここまでで、なぜ「親会社・子会社の定義」にこだわったかといいますと、まさに、これが「子会社株式」を所有する動機であり、その後の株式評価の考え方にも影響するからなのです。
なお、上記の親子会社関係ほど強固ではありませんが、それでもなお、グループ企業のはしくれとして、親会社の意向が相当程度、重要な影響を与える会社として、「関連会社」というのがあります。

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【定義4】
「関連会社とは、親会社及び子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、…重要な影響を与えることができる場合における、当該他の会社をいう。」

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関連会社の定義については、
  「重要な影響」
というという言葉がキーワードとなります。

子会社の場合が「支配」の有無を問題にしているのに比べると、ややマイルドです(笑)。
それで、重要な影響を与えているかどうか、というのは、

●その会社の株の20%?50%を実質的に所有しているか?
●20%以下でも、ある契約の存在などにより、重要な影響を与えることができる一定の事実が認められるか?

といった基準で判断されます。

いずれにせよ、「子会社」は支配することによって、「関連会社」は重要な影響を与えることによって、相当程度、親会社の思うとおりに動かすことができます。
はい、今回は、前提知識にずいぶんと紙面をつかいました。
「会計処理の背景には、遠大なビジネスの狙いが隠れている!」ということの一端を、垣間見て欲しかったからなのですね。
ちなみに、上記のごとく、支配関係を維持するために取得した子会社株等ですから、その後、よほどのことがなければ、売却して支配関係を薄める、あるいは解消する、ということはそうめったにありません。
…ということは、「子会社株式、関連会社株式」は、親会社の事業戦略上、安定的に所有することが明らかですから、いちいち毎年、時価で評価替えすることに意味は無いのです。

つまり、「子会社株式、関連会社株式」は、たな卸資産や固定資産のような他の事業資産と同じく、「原価法」というやり方で評価され、バランスシートに
記載されます。
         バランスシート(単独決算)
  ――――――――――――――――――――――
            |
  (固定資産)    |
            |
   子会社株式 100|←原価(時価ではない!)
   関連会社株式 60|←原価(時価ではない!)
            |
これは、2000年以降に本格実施された「金融商品に係る会計基準」の評価原則である「時価法」に対する、数少ない例外的評価方法といえるでしょう。
※株式などの金融商品は、原則として時価評価が求められています。

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なお、連結決算上は、上記の原価法とは違った会計処理になりますが、このあたりはかなり専門的なので、いずれ、柴山会計セミナーで、「連結決算の基礎知識」「連結決算の作り方」といった形で講座を設けたいとおもいます。(近いうちに、公表しますね)
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さて、話を戻します。
その後、子会社や関連会社の経営がそこそこ普通なら原価法のままでもいいのですが、なかには経営が非常に厳しく、赤字がつづいて事業的に失敗となっている会社も、かならずといっていいほど1社以上存在
します。
その場合、たとえば「非上場の子会社・関連会社」のバランスシート上における資本(純資産)が、当初の半額以下に減少した場合を考えましょう。

(1)親会社は、200億円を出資して、子会社を設立した。
   (新規プロジェクトの立ち上げを、子会社設立でおこなった。)
   子会社のB/S(1)        親会社のB/S(1)
―――――――――――――――  ―――――――――――――――
諸資産 230|諸負債  50         |
       |資 本 180←←子会社 180|
       |         株式     |

       ↓

(2)その後、子会社は、赤字を出して資本を半分以下に減らした。
   子会社のB/S(2)        親会社のB/S(1)
―――――――――――――――  ―――――――――――――――
諸資産 130|諸負債  50         |
       |資 本  80←←子会社 180|
       |         株式 (原価)|

このような場合、上記(2)のように、子会社株式を原価(200)で評価するのは、実体を表しませんね。
こうなったら、子会社のバランスシートの価値減少にあわせて、親会社の子会社株式・関連会社株式の評価減もおこないます。

   子会社のB/S(2)        親会社のB/S(2)
―――――――――――――――  ―――――――――――――――
諸資産 130|諸負債  50         |
       |資 本  80←←子会社  80|利 益△100
       |         株式 (修正)|

このように、投資先の子会社・関連会社のバランスシートの状態(財政状態)の悪化や時価の急落を親会社の投資勘定(株式)の評価に反映させ、評価損を計上する処理を、「強制評価減」とか、「減損処理」などといいます。
ある子会社に対する事業損失がはっきりと単独決算書にあらわれますので、非常に貴重な情報です。
しっかりと覚えておきましょう!

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