独学のための「日商簿記1級工簿原計の全体像」

がんばろう日商簿記1級合格、今回は「1級における工簿・原計の体系」ということについてお話したいと思います。

工業簿記・原価計算は、得意な方と苦手な方で大きく差が開きますが、柴山式簿記1級講座受講生で合格された方の得点の内訳を見ると、割と工業簿記または原価計算のどちらかで25点かそれに近い点数を取っているケースが多いです。

あるいは、不合格という残念な結果になっても原価計算では25点を取っていたり、割と工業簿記・原価計算を得意にする人が多いのです。

工簿・原計というのは、満点が取りやすい科目なのです。
商簿・会計は圧倒的に範囲が広いのと、総合問題に柔軟性があるので、満点を取りにくく、取れてもせいぜい20点なのです。
会計学は理論で1個か2個落としてしまうので、なかなか満点を取ることができません。
しかし、工業簿記・原価計算は、どちらか、あるいは両方で満点近くを取って、得点を稼げるケースが多いです。

なので、工業簿記・原価計算は満点を狙いにいっていいと思います。
そうは言っても、闇雲にやってもしようがないので、全体像のお話をしたいと思います。
私も受験生時代は商業簿記・会計学は範囲が広いので得意になるのが遅れましたが、工簿・原計は範囲が狭かったのですぐに得意になりました。

範囲が狭いだけではなく、体系がわかりやすいのと、やることが少ないのです。
ただ、取り組みづらいので、なかなか乗り気になれない方が多いのです。
商簿・会計のほうが簿記2級・簿記3級の流れがあるからやりやすいと考えがちですが、時間がかかるのは実は商業簿記なのです。

今回は、工簿・原計を早く得意にしてしまおうということで、こういう体系をお話します。
体系を頭にたたき込んで、今、自分が全体の体系のどこにいるのかということを常に確認することでレベルアップできます。

工簿・原計の体系図はシンプルですが、商簿・会計の場合はこうはいきません。
来年の6月や11月を目指して勉強される方はこれを意識してみてください。
工簿・原計の体系は、簡単に言うと3つしかありません。

あくまで、中心は、簿記2級で勉強してきた全部原価計算です。

全部原価計算というのは、個別と総合しかありません。
縦軸は個別の実際と個別の標準、そして総合の実際と総合の標準しかありませんが、簿記1級でメインになるのは総合の標準です。
過去の実績を見ると個別の標準というのはほぼ出題されませんが、実務上はあり得ます。
時々「総合って標準しかないんですか?」という質問を受けますが、そんなことはありません。

日商簿記検定の出題実績という意味では圧倒的に総合の標準が多いので、そういう印象を受けるのです。
標準原価計算の肝というのは予定単価ではなく消費数量です。
標準原価計算のポイントは能率を測るだけです。

これが原価管理の本質です。
価格の管理は「実際」でもできますが、「実際」は煩雑なのです。
一番のポイントは、原価管理と同時に計算の迅速性があることです。
これが標準原価計算のポイントですが、それを踏まえてそれぞれの特徴をどう活かすのかということで勉強します。

みなさんにとって最初に一番やっかいに思うのは「実際総合」なのです。

次に「標準総合」で苦労します。
しかし、個別だろうが総合だろうが、実際だろうが標準だろうが、まずは費目別計算をやります。

費目別の次の展開として部門別があります。
ちなみに、原価計算基準上、製造間接費というのは予定配賦かつ部門別が原則です。
原価管理、計算の迅速性、原価の安定性、すべてに貢献するのは、本来は予定配賦で部門別です。

だから、やりやすい順番で勉強をするとなると、実際配賦・単一部門で、部門別はなしの場合です。
しかし、あれは一番レベルの低い原価計算です。
基本は予定配賦かつ部門別であるということをしっかり理解してほしいです。
これができるようになると次のステップにいけます。

だから、「実際原価」とはいいながら、予定単価なのです。
能率差異とか、材料の消費量とか、作業時間とか、能率の善し悪しを判断したいために標準へ発展したと考えてください。
したがって、原価をいかに集計するというかという、原価ありきの考え方が全部原価計算のコンセプトです。

経営者の視点で、損益計算書ありきの考え方が直接原価計算です。
第一期と第二期で同じ販売数量なのに利益が違うのはおかしいという発想なので、P/Lをつくらなければ直接ではありません。
これは一般的にはあまり教わりませんけど、直接原価計算は本来、原価集計ではないのです。
だから派生なのです。

原価集計はあくまで全部原価計算なのです。

では、直接原価計算とは何かというと、P/Lありきで、貢献利益とCVP分析をしない直接原価計算はありえません。
そもそも、直接原価計算というのは、貢献利益やCVP分析を出すといった短期利益計画のためにあるので、原価集計ではないのです。
変動費を製造原価にするというのはあくまで手続きの問題で、ポイントはP/Lありきで、利益管理、しかも短期利益です。
こういう体系を知っているだけでも全然違います。

勉強の割合としては、全部原価計算が8に対して直接原価計算は2です。
それ以外には原価計算の枠外で、意思決定という簿記1級特有のテーマがあります。
構造的意思決定には貨幣の時間価値という考え方がありますが、これは商業簿記にも出てきますので、この理解はとても大事です。
それにプラスして、近年の新しい傾向として「戦略的原価計算」というものがありますが、これは“端っこ”のほうです。
制度原価計算と意思決定の比率も8対2です。

とすると、8割の制度原価計算の中のさらに8が全部原価計算ということになるので、全体の勉強時間の6割は全部原価計算ということになり、直接原価計算と意思決定が2割ずつだと思ってください。
全体の6割が原価管理をベースとする全部原価計算です。
個別と総合に分け、さらにそれらを標準と実際に分けます。

そして標準と実際の決定的な違いは何かを一言で言えるようにしてください。

そして次の2割が直接原価管理で、これは損益計算書ありきです。
損益計算書を作成しなければ、直接原価計算は要りません。
したがって、直接原価計算は利益管理のためにあると思って勉強してください。
だから、「直接標準原価計算」は、直接原価計算の利益管理と、標準原価計算の原価管理のいいとこ取りをしたものだと考えてください。
だから、ここは試験によく出るのです。
そして、最後の2割は、意思決定という新しい簿記1級特有の概念に時間を振り分けてください。

割合としては、全部原価計算が6割、直接原価計算が2割、意思決定が2割です。
このイメージを心掛けて、普段の勉強をしてみてください。
工簿・原計のどちらかで、毎回25点を狙えます。
頑張ってみてください。

私はあなたの簿記1級合格を日々応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

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