第135回 商業簿記 割賦販売の「2つのスキル」

がんばろう日商簿記1級合格、今回は「第135回商業簿記 割賦販売の2つのスキル」というテーマでお話をしたいと思います。

11月17日の135回試験は、商業簿記と会計学のどちらも苦戦された方が多いです。

理由は色々あるのですが、会計学は記述式が少し増えたのと、唯一の計算問題がリースでしたが、今回は貸し手の処理が出てきたので、練習が十分ではなかった方も多いと思います。

柴山式の場合、過去問か板書で計算例を出しておきましたが、あれをきっちりマスターしておけば、それなりには点数が取れています。
ただ、リースの貸し手については端の論点なので、今回は巡り合わせが悪いとも思います。
少し前の過去問を見ていたかどうかということと、柴山式の受講生の場合は板書の設例に目を通して練習したかどうかにかかっています。

しかし、リースの借り手の処理をしっかりやっていれば一応点数は取れるので、足切りにはならないはずです。
リースの貸し手の処理まで対策を練ることができる人は全受験生の半分いるかいないかぐらいなので、巡り合わせもあります。
記述問題は範囲が広いので、テキストをいかに真面目にやったかにかかってきますが、これも個人差があります。

今回は得意・不得意で出来が左右されたのかなという気がします。
商業簿記に関しても、多少考える力を試されるような、捻った問題がありました。
なので、商業簿記はやりづらかったと思います。
単純にパターンに当てはめるやり方だと厳しいとは思いますが、過去問の勉強はパターン学習ではなく、思考力を養うために使っていただければ、過去問対策は未だに非常に有効です。

過去問は予想問題ではないので使い方を間違えないでください。
思考力があれば解けないことはありませんが、満点は狙いにくいです。
大変な問題ではありますが、そのなかで解ける問題を探して、しっかり7割以上取ることが大切です。

今回は商業簿記と会計学はそれぞれ15点ずつ取れれば御の字です。
工業簿記・原価計算で40点を取って、合計70点というのが既定路線かと思います。
原価計算は人によっては満点が狙えますし、イージーミスをしても23点ぐらいかなと思います。

工業簿記は、18点は取れるので、2つ合わせて40点以上かなと思います。
今回の原価計算は比較的取り組みやすかったです。
最近の傾向として、原価計算か工業簿記のどちらかで満点近くを取るというのは重要です。
商業簿記に関しては、頑張って欲しい論点が1つあって、割賦販売が出てくるのですが、割賦販売を苦手にしている人がとても多いのです。
これは、対照勘定法なども含めて、端っこの論点も含めて全部満遍なくやろうとしているからだと思います。

割賦販売では2つマスターしてほしいことがあります。

この2つを身に付けておけばなんとかなります。
最近の傾向から言って、日商簿記検定1級の割賦販売はだいたい未実現利益控除法、未実現利益整理法、未実現利益繰延法の3つの勘定科目を使うケースが圧倒的に多いのです。
対照勘定法はあまり出ないのです。
実務的にも未実現利益控除法のほうが使われやすいというのもありので、簿記1級対策としては、まず未実現利益控除法、回収基準、そして戻り商品までが入ったパターンを、1本のストーリーで完璧にできるようになってほしいのです。

そのときに絶対に使うスキルが2つあって、1つが割賦売掛金の分析です。
これは完璧にできるようになってほしいので、柴山式の講座でも口を酸っぱくして言っています。
もう1つは、当期の利益率の利益算定です。
なぜかというと、当期の販売に関して、必ず繰延の売上利益控除がでてきて、今回は戻りも出てきてきます。
昔は戻りはあまり出なかったのですが、最近の簿記1級の傾向からいって戻りはあると思ってください。
戻りも期末の未実現も、当期の利益率を出さなければだめなので、必ずこの2つのスキルは完璧にしてほしいです。

メモを使って説明しますが、このメモはPDFでダウンロードできるようにします。
これはパターンです。
期首があって、まずは利益率をかけて繰延を出します。
今回、前期末の繰延は分かっていませんが、すぐに出せます。
前期は利益率40パーセントと言っているのだから、期首の割賦商品さえわかれば計算できます。
期首は4,500になります。
これは資料の(1)のCでわかります。
利益率は40パーセントなので、1,800。
ということは、前期試算表の繰延は1,800になります。

このように「型」を作ってください。
回収は、資料の(1)のCを見れば出ています。
では、右側の空欄を埋めていきます。
当期は16,875です。
期末の残高は仮残なので引っかからないようにしてください。
修正前の仮残が、期首分が1,350です。

ここは間違えた人もいるかもしれません。

ここは本当の期末の残高ではありません。
応用があって、少し工夫させている、考えさせる問題です。
私は良い問題だと思います。
…割賦売掛金の分析を見ていくと、まずは、当期の発生が16,875ですが、これは売価の計算もできます。

スキルの2番目で、原価率の算定をするときに一般売価ベースで売上を出しています。
前期T/Bから、一般販売が33,000で、割賦販売が16,875(当期発生高)、16,875÷1.25で13,500なので、合計46,500で売価を用意しました。
あとは原価です。
手許商品の引き渡しなどを出さなければいけません。
期末の残高1,350は修正前の仮残高です。
期首分の戻りと期末の合計が仮残で1,350で、当期の仮残が3,750です。
これは「修正前」と出ているので、戻りを引いた後、正しい期末が出ます。
これをやらないとアウトなのです。

回収は、期首の4,500から期首分の仮残1,350を引けばいいのです。
4,500-1,350で3,150が回収高で、これが戻入です。
戻入もすぐ出せます。
3,150×0.4で当期の戻入は1,260円です。
下書きを書いたら、すぐに解答用紙を埋めてください。
3級から言っていることですが、下書きが全部終わってからじゃないと書けない人がいますが、それはダメです。

どんどん書いてください。
戻りがまだわかりません。
期末の本当の残高がわかりません。
当期の回収高は16,875-3,750で13,125です。
当期の場合は回収は関係なく、未回収について繰延割賦売上利益控除を出します。
ちなみに、基本原理で、基礎知識なんですけど、当期販売分の戻りというのは2つのパターンがあって、繰延割賦売上利益控除は、パターン1が戻りと期末の残高をすべて控除するケースで、パターン2が期末の本当の残高で控除して戻りのほうは「戻り商品損失」とするケースです。

このパターンを覚えてしまってください。

戻りは分かっています。
商品売買に関する資料(1)のEで、前期の割賦売掛金450が戻って、当期の1,350が回収不能になったので、450と1,350を埋めます。
あとは、差し引きで期末の正しい残高が出ます。
期首の仮残1,350から戻りの450を引くと正しい残高は900です。
これが出れば“勝ち”です。
ここまで出せるかどうかです。
当期販売分は3,750-1,350で2,400です。
戻り商品の仕分け商品は“スキル3”となります。

本当は、スキルは3つありますが、時間との兼ね合いで2つだけお話しています。
柴山式は戻り商品の部分を事例でやっていますから、ご自身で勉強をしてください。
戻り商品の仕分けは、基本は1つしかありません。
今回は3つのスキルのうち、スキル1「割賦売掛金の分析」、スキル2「原価率の算定」をやります。

それから、当期の販売分について、戻り商品の売掛金が1,350、期末の正しい残高が2,400、どちらにせよ、これは繰延割賦売上利益控除に関係します。
あとは利益率を計算します。
そのときに必ずやって欲しいのは、手許商品と未着品のボックスと仕入勘定の分析を必ず書いて欲しいのです。

柴山式をやっている方は何度も言っていますが、期首、当期の取得、未着があれば未着の到着、引き渡しは一般と割賦の合計、これと一般売価の46,500をぶつけて原価率を出します。

そして期末の残高です。
未着品も期首、当期取得、引き渡し、今回は到着はありません。
仕入勘定の分析ですが、前期T/Bを出します。
仕入勘定というのは当期仕入高ではありません。
前期T/Bは、単なる差額で、30,450です。
30,450を入れて仕入勘定を分析します。

今回は積送などはありませんのでゼロで、未着品の原価2,100は仕入勘定に入ってます。
未着品販売の資料は1の(2)で、「当期から未着販売をはじめた」ということで、期首は未着品ゼロです。
丸為替云々という記述は気にしなくて良いです。
3,075の未着があって、それに対して未着品の売り上げが、2,100の原価で3,000の売上です。
3,075-2,100で、未着品の期末の残高は975ということがわかります。
仕入勘定は、30,450-2,100で、当期取得高は28,350です。
当期の取得を手許商品の取得に入れます。
期首が6,750で、期末の商品棚卸高が2,550、到着はなしです。
差し引きで引渡しを出せばいいのです。
期首6,750+取得28,350-2,550で32,550になります。
これが今回の合否を分けるポイントの1つです。
32,550が出たかどうかです。

これと一般売価46,500をぶつけます。
46,500と32,500を比較して0.7です。
これが一発で出れば実力者です。

今度は、割賦販売の売価が1.25なので、1.25-0.7で0.55の利益です。
0.55の利益を1.25で割ると0.44になります。
いきなり0.44というのを使っても良いですが、割り切れないこともあるので、0.55÷1.25という比率でもいいです。

私が受験生だったときは、割り切れないときのことを考えて0.55÷1.25というやり方をやっていました。
これで戻りの控除もでます。
戻り商品の当期の繰延売上利益は1,350×0.44で594になります。
それから2,400×0.44、あるいは0.55÷1.25で1,026。
どちらにせよ、繰延割賦売上利益控除は、1,056または1,056+594で、パターン1だったら1,650。
これが出せれば合格レベルです。

時間がないので一気にやってしまいましたが、イメージは湧いたでしょうか?
何度も何度も練習して、割賦売掛金をすぐに出せるようにしてください。
原価率の算定も色々ありますが、基本はこのパターンしかありません。
この基本すらできないから割賦販売が苦手なのです。

これに加えて、戻り商品を覚えてしまえば、逆に割賦販売を得点源とすることができます。
簿記1級の割賦販売のスキルは、割賦売掛金の分析をスムーズにできることと、期末の割賦売掛金の残高、当期に販売した割賦売掛金の戻り商品の繰延利益を出すために手許商品の分析をして原価率を出すという2つが王道です。
応用はこれができるようになってからです。
この基本ができていないから割賦販売が苦手なのです。
今回は135回の解説が一部入っていますので、このメモをダウンロードして使って、自分のものにしてください。

私はいつもあなたの簿記1級合格を応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

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