純資産と資本の関係 (日商簿記1級・2級)

今回の「頑張ろう日商簿記1級合格」は、純資産と資本の関係についてお話をしたいと思います。

ここで言う資本は「株主資本」という位置づけでお話をしますが、日商簿記検定1級に限らず、簿記2級を学習されている方もこの機会に純資産と資本について理解を深めて頂ければと思います。

11月に行われる第147回の試験から簿記2級でも連結が出題範囲になりますので、連結の言い回しにも慣れて頂くという意味でも、簿記2級の受験生の方にとっても学習に活かせる内容だと思います。

今回は連結貸借対照表を用います。
連結を対象外とした個別の財務諸表との大きな違いは、子会社に対する親会社以外の株主の持分である「非支配株主持分」が入るか入らないかです。

これがなくなれば普通の個別の貸借対照表になります。
今回はA社という会社があるとします。

借方の「諸資産」とありますが、これは諸々の資産の合計が500あります。
貸方は「諸負債」が200あります。

諸資産500から諸負債200を引くと差額としての資産300が出ますが、これを「純資産」と言います。

ちなみに「純資産」の「純」は「ピュア(純粋)」ではなく「ネット(差額)」という意味です。
ですから、資産の500は本当であれば「総資産」と言ったほうが良いかもしれません。

純資産には「差額」という意味しかありませんので、大した意味ではなく、「資産から負債を引いた、純額としての資産」と思ってください。

さらにこの300の純資産の内訳を見ると、その中に一番大事な「資本」があります。
ここでは資本=株主資本と定義しておきます。

株主資本とは何かというと、資本金と利益剰余金、すなわち元手と果実(利益)ですが、この2つを合わせて220とします。

本当はこの220が積極的な意味での株主の持分で、親会社であるA社に帰属する持分です。
従って、A社が解散・清算して全てをお金に換えたら、220がA社の株主に清算金として分配されるというイメージです。

親会社であるA社の持分が株主資本です。
ですから、純資産のうちA社の株主に帰属するのは220で、残りの80は“不純物”です。

「純資産」とは言いながらも色々なものが混じっている“不純資産”なのです。
昔は資本だけでしたが、会計制度の変更で色々なものが入ってきてしまったのです。

その中で簿記2級の試験にも出てくる有名なものが「その他有価証券評価差額金」です。
要するに株の原価と時価の差額(含み益)のことです。

それから「新株予約権」というものがあります。
これは将来ある投資家からお金を払い込んでもらうのですが、新株予約権という権利(オプション)を売ったのです。

具体的には、将来A社の株式が値上がりしても、予め決めた安い価格(権利行使価格)で株を買える権利です。

ですから、株価が上がると儲かるのです。
株価が上がるとストックオプションが行使されて資本金が払い込まれます。

というふうに、将来株主になれる権利を譲渡したのです。
将来A社の株主を買える権利を売った代金が新株予約権です。

これは純資産の一項目ですが、現在の株主ではないので資本とは区分して「その他の純資産」という位置づけになっています。

純資産のうち純然たる資本は資本金+利益剰余金の220です。
評価差額金は株の含み益です。

新株予約権は将来株主になるかもしれない人から払い込まれたオプションの売却代金で、期限が到来してもオプションが行使されなければ利益に入ります。

そして連結特有の項目である非支配株主持分があります。
「非支配」ですので、親会社以外の株主だと思ってください。

例えば60%だけ株を持っている子会社であれば残りの40%は他人の株主となりますが、その40%の部分(A社以外の子会社の株主の持分)を「非支配株主持分」と言います。

純資産のうち、資本に入らないものの代表例が以上の3つであるということを知っておいてください。

これをイメージしておくと、純資産というのは資本よりも広い概念だということが分かります。

私はいつもあなたの日商簿記検定1級・2級の合格を心から応援しています。
もちろん簿記3級の合格も応援しています。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

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