繰延税金資産の意味と、資産計上できる条件

税効果会計という言葉、日本でもここ10年くらいで、
ようやく企業会計の実務にも定着してきた感があります。

私が会計士になりたての15年位前は、税効果なんて、
遠いアメリカの実務さ、フッ、見たいな冷めた目で
見ていたものです。

じっさい、当時、監査法人の研修などで税効果会計の
演習などをやっていても、当時、日本には関係なかったので、
ほとんど気合が入っていなかったことを、昨日のことの
ように思い出します(笑)。

税効果会計が導入された当時の時代背景を見ても、
「銀行や上場企業の自己資本比率アップの調整弁じゃん?」
みたいな印象を持っていた感は否めませんでした。

それが、今では、どの企業も(へたをすると中小企業も)
税効果を取り入れる世の中になり、
「時代の移り変わりって、はやいものね~」などと、
ある意味、感心してしまいます。

さて、そもそも税効果がなぜひつようになるか、
といいますと、
「今年払った税金のうち、将来、取り戻せる
 部分があるから」
ということになります。

たとえば、今年のうちに、会社の規定で
延滞債権として管理していた売掛金1000万円を、
今期の決算で独自に全額貸倒処理し、
評価0円としたとしましょう。

        バランスシート
  ―――――――――――――――――――
           |
  売 掛 金   0|
 (1000から0へ)|
           |繰越利益   0
           |剰余金

         損益計算書
    ―――――――――――――――
        :
         経常利益 1000
    特別損失
     ・貸倒損失   ▲1000
             ――――――
  税金等調整前当期純利益    0
     

このような場合でも、
税法上の厳しい要件を満たしていないと、
売掛金などの金銭債権は、そうかんたんに
税務上も全部または一部を貸倒損失と認めてはくれません。
(じっさいに会社更生法の決定があるなど)

とすると、上記の損益計算書の事例などでは、税務上、
貸倒損失1000を当期の費用としては認めてもらえないので、
貸倒損失の直前までで計上されている経常利益1000万円
に対して、課税されることになります。

※課税所得(税金計算の対象となる税務上の利益のこと)
 
  税金等調整前当期純利益    0
  加算:貸倒損失     1000
             ―――――
  課税所得        1000→・
             ===== ↓
                   ↓
  法人税等(40%とする)    400万円
                  =====

こうなると、損益計算書とバランスシートは、下記のように
なりますね。

        バランスシート
  ―――――――――――――――――――
           |
  売 掛 金   0|未払法人税等400
 (1000から0へ)|
           |繰越利益 ▲400←・
           |剰余金       ↑ 
  ――――――――――――――――――― ↑
   増減     0| 増減     0 ↑
  =================== ↑
                      ↑
                      ↑
                      ↑
         損益計算書        ↑
    ―――――――――――――――   ↑
        :             ↑
         経常利益 1000    ↑
    特別損失              ↑
     ・貸倒損失   ▲1000    ↑
             ――――――   ↑
  税金等調整前当期純利益    0    ↑
  法人税、住民税及び事業税▲400 →→→・

これだと、「利益がゼロなのに、税金の支払が生じている」
と言う状況です。
税引き前の利益と税金の額が、できるだけ40%など
の実効税率に近い対応をしてほしい、というのが
現行の会計の趣旨であるのが一つの論点としてあります。

また、この400万円の税額は、貸倒損失1000万円が、
税務上の問題で、今年は一時的に否定された結果に
過ぎません。

将来、売掛先の企業が法律的に破綻するなど、
税務上の要件を満たせば、そのときに(一年~数年遅れ)で
費用として認めてもらえます。

そのときに、会社で利益が1000万円以上でていても、
税務上、少し遅れて認めてもらえる貸倒損失の分だけ、
課税所得を減額できるので、「将来の税金を減らす」
効果は、十分現時点でものこされているのです。

だから、
「将来の税金を減算する効果がある」ということで、
今回の貸倒損失の一時的な否認額のような項目を、
「将来減算一時差異」というのです。

将来減算一時差異として、実務上良く出るのは、
「減価償却費の過大部分」とか、
「棚卸資産の評価損の否認」とか、
「○○引当金の否認額」などですね。

上記のケースで、
税効果会計を適用した場合、下記のような
決算書の表示になるでしょう。

        バランスシート
  ―――――――――――――――――――
           |
  売 掛 金   0|未払法人税等400
 (1000から0へ)|
  繰延税金資産400|繰越利益    0←・
           |剰余金       ↑ 
  ――――――――――――――――――― ↑
   増減     0| 増減     0 ↑
  =================== ↑
                      ↑
                      ↑
                      ↑
         損益計算書        ↑
    ―――――――――――――――   ↑
        :             ↑
         経常利益 1000    ↑
    特別損失              ↑
     ・貸倒損失   ▲1000    ↑
             ――――――   ↑
  税金等調整前当期純利益    0    ↑
  法人税、住民税及び事業税▲400    ↑
  法人税等調整額      400    ↑
             ――――――   ↑
        当期純利益    0 →→→・
             ======

なお、将来の収益計画で、黒字が出ないと、
「将来の納税額」も発生しませんね。

繰延税金資産は、「将来の支払税額を減らす効果」
はあっても、「将来、納税がない場合」には、
減税しようがないので、存在意義を失います。

還付を受けるほどの強い効力はないですから。
したがって、
繰延税金資産の計上要件として、
「将来、課税所得が十分に発生すること」が
必要になるのですね。

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