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2008年10月 アーカイブ

2008年10月02日

法人税、住民税、事業税の表示と税率のはなし

まずは、基礎知識から。

法人税・住民税・事業税は「企業の所得」に対して一定税率を
かけて計算・納付する税金です。

支払う原因と支払先によって、次のようになります。

1法人という組織であることで、所得のうちから国に収めるべき税金
 →法人税

2法人という組織であることで、所得のうちから都道府県・市町村に
 納めるべき税金
 →住民税

3事業を営んでいるということで、所得のうちから都道府県に
 納めるべき税金
 →事業税

なお、ここで、所得というのは、
「税法の世界における儲けの」ことです。

●税法(税務)上の儲け「(課税)所得」 
 =「損益計算書上の純利益」プラスマイナス「税務調整額」
   (P/L)               ↑
                     一定の交際費、
                     費用の否認額、
                     収益・費用の認容額
                     など…

と、このように、会計(P/L)上の利益に、一部の調整額を
たしひきした金額が、「税務上の儲け」である(課税)所得なんですね。

ここで、つぎのような事例を考えてみましょう。

(1)損益計算書上の、税金計算前の純利益(収益マイナス費用)は、
   10570万円であった。
(2)当期中に支払った事業税の額は720万円である。
   内訳:前期に納税義務が発生した事業税の未払い 360万円
      当中間期に、仮払(半金)として払った分 360万円
      
      当期中に支払った事業税(B/S仮払金等)720万円
      →損益計算書(P/L)には掲載されていない。

  (※その年度中に支払った事業税は、税務上、所得を計算
    する上で、損金(経費)として認めてもらえます。しかし、
    法人税・住民税の支払額は、損金として認められません。)

(3)税務調整額は、「交際費の損金不算入額150万円」だけだった。
(4)法人税、住民税、事業税の税率は、次のようなものとする。
   ●法人税率…30.00%
   ●住民税 … 5.19%(規定上は法人税率30%×17.3%)
   ●事業税 … 7.20%
    ―――――――――
    単純合計…42.39%
    =========

そして、損益計算書の表示は、下記のようになります。

●税金計算前の損益計算書(単位:万円)

   損益計算書(末尾付近)
 ――――――――――――――
 売  上  高  ×××××
    :        : 

         ――――――
 税引き前当期純利益10570 →税金計算(確定申告書)
                        ↓
 法 人 税  ▲(     )←←←←←←←←・
 住 民 税  ▲(     )
 事 業 税  ▲(     )
         ――――――
 当期純利益   (10570)
         ======

ここで、法人税等(法人税+住民税+事業税)の額を、
別途、
(1)法人税確定申告書の別表4・別表1および
(2)地方税の申告書というところで
計算します。

(1)―1法人税申告書別表4より

     税引き前当期純利益 10570 
  加算:交際費の損金不算入+  150 
  減算:事業税の支払額  ▲  720 
              ―――――― 
     課 税 所 得   10000
              ======

(2)―2法人税申告書別表1より
     課 税 所 得   10000
     ×税率(30%)   3000万円 … A

(3)住民税・事業税申告書より
    1住民税
      法人税の額      3000
     ×税率(17.3%)  519万円 … B

    2事業税
      課税所得      10000
     ×税率(7.2%)   720万円 … C 

●税金計算後の損益計算書
(単位:万円)

   損益計算書(末尾付近)
 ――――――――――――――
 売  上  高  ×××××
    :        : 

         ――――――
 税引き前当期純利益10570 →税金計算(確定申告書)
                        ↓
 法 人 税  ▲( 3000)A ←←←←←←・
 住 民 税  ▲(  519)B
 事 業 税  ▲(  720)C
         ――――――
 当期純利益   ( 5761)
         ======

(注)上記は、あくまで税率の一例を示した
   にすぎません。理解を重視した便宜的な数値例です。
   実際の税金計算事務は、会社規模や地方自治体の
   具体的規則によって多少変わってきますので、
   ご注意下さい。

…以上となりますね。

これは、極めて実践的な説例です。

なお、上記の法人税等(A+B+C)は、
3000+519+720=4239万円です。

これに対し、課税所得は10000万円でしたね。
==========================
※参考
(1)―1法人税申告書別表4より
     税引き前当期純利益 10570 
  加算:交際費の損金不算入+  150 
  減算:事業税の支払額  ▲  720 
              ―――――― 
     課 税 所 得   10000
              ======
==========================

ここで、事業税を支払う前の(税金調整前)における
課税所得(儲け)に対する、法人税等の負担割合のことを、
         「実効税率」
というのです。

税金調整前の課税所得
     課税所得      10000
     減算した事業税     720(足し戻し)
               ―――――
     税負担がない所得  10720万円
               =====

この、
税負担前の所得10720万円
に対する
法人税等    4239万円の負担比率が、
よく日経新聞などで
取り上げられる「実効税率」の話なのでした。

ちなみに、上記の例では、
●実効税率=(4239/10720)×100%=39.54%となります。

この39.54%という数字、次のテーマでもある
日経新聞で取り上げられている日本の法人税率の数字と
なっています。

時事問題でよく出る「法人税の負担率約40%」
の計算根拠が、これですっきりしましたね。

…さらに、上記の解説を詳しくお聞きになりたい方は、
下記をどうぞ!

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2008年10月04日

法人税下げが主要国で加速される(2007.2.3*1)

日経2月3日・1面の記事です。
欧州を中心に、
主要国で法人税率を引き下げる
という流れができているようです。

たとえば、ドイツでは、国税と地方税を合わせた
実効税率を、2008年より29%台にする、
という話です。
これは、現状より9%も低くなる、ということですから
驚きです。

フランスなどは、現在の34.4%から、
今後5年間で、なんと20%まで激減させる構想
のようですから、日本もうかうかしていられません。

国際的な実効税率の水準として、
20%台が主流になりつつある、ということですね。

日本はといえば、先ほど計算したように、
40%前後という非常に高い水準で企業が税負担を
追っていますから、今後、他国の企業との間で、
資金留保に差が生じ、国際競争力の観点から不利に
働くのでは?という危機感が出てきてもおかしくありません。

ただし、企業の税負担といえば、
法人税だけでなく、消費税などもありますから、
そういった他の税目とのバランスで、もっとも
所得配分や競争力育成の点で望ましい負担率を
探していくことになるでしょう。

以上、今後の経済・国際競争力をを長期的に占う、
だいじな税率のお話でした。

2008年10月06日

法人税等の仮払いと確定の財務諸表表示

法人の所得(利益)に対して課税される「法人税」、「住民税」、
「事業税」などに関しては、会計上、表示のルールが定められて
います。

ルール1.確定申告の前に、予定・中間などの形で納付したような場合
     …「仮払法人税等」(B/S(バランスシート))

ルール2.当事業年度の決算で確定した場合
     …「法人税、住民税及び事業税」(P/L(損益計算書))

ルール3.確定申告の結果、還付が「確実」となった場合
     …「未収還付法人税等」
     
(説例1)2006.11.30に、300万円を
     予定納付(前年の法人税等の1/2を前金として支払う)した。

            バランスシート
     ―――――――――――――――――――――
     現金預金  ▲300|
               |
     仮払法人税等 300|
               |利益剰余金 ±  0←←・
           ――――|      ――――  ↑
           ±  0|      ±  0  ↑
           ====|      ====  ↑
                            ↑
                            ↑
             損益計算書          ↑
       ――――――――――――――――     ↑
       売 上 高        ×××     ↑
         :           :      ↑
                   ――――     ↑
       税金等調整前当期純利益  ×××     ↑
       法人税、住民税及び事業税   0→→→→→・
                   ――――
       当期純利益        ×××
                   ====

(説例2)2007.3.31に、法人税等の額が700万円に確定した。
     700万円を損益計算の費用として表示すると共に、
     仮払い額300万円と相殺のうえ、
     予定納付額との差額400万円を、未払法人税等として
     表示する。

            バランスシート
     ―――――――――――――――――――――
     現金預金  ▲300|未払法人税等 400
               |
     仮払法人税等   0|
               |利益剰余金 ▲700←←・
           ――――|      ――――  ↑
           ▲300|      ▲300  ↑
           ====|      ====  ↑
                            ↑
                            ↑
             損益計算書          ↑
       ――――――――――――――――     ↑
       売 上 高        ×××     ↑
         :           :      ↑
                   ――――     ↑
       税金等調整前当期純利益  ×××     ↑
       法人税、住民税及び事業税▲700→→→→→・
                   ――――
       当期純利益        ×××
                   ====

この結果、期中に支払った300万円の現金の分だけ、
2007年3月末現在では資産が減少し、
その一方で、2007年5月末に支払義務がある
未納付分の税額400万円が負債として新規に計上されます。

その結果、「期中支払分300+期末負債計上分400」
     =700万円
だけ、納税コストが発生する、
という形になるわけですね。

このように、仮払法人税という科目は、
近い将来の相殺とか精算などを予定する一時的な
性質のものである、ということを覚えておいてください。


[2]船井電機、追徴税額の会計基準変更で下方修正(2007.4.27*17)
4月27日の投資・財務面(17面)で、税金の会計処理に関する
非常に興味深い話題が出ていたので、ご紹介します。
船井電機は、4月26日付けで業績の下方修正を発表しました。

※プレスリリース4.26
http://www.funai.jp/pressrelease/2007/topic_070426.html

そこで、税引き後の当期純利益につき、当初の予想額174億円
から、▲36億円と、210億円もの大幅下方修正が
公表されたのです。

その要因について、プレスリリースを拝見すると、
欧州市場での液晶テレビ価格下落など、市場要因もあるのですが、
なんといっても大きかったのは、「会計ルールの改正による税金
コストの処理方法の変更」でした。

これは、毎年のように大きく変わる会計法令の変動リスクの
一側面として、知っておきたい事柄です。

具体的には、以前に大阪国税局から更正通知を受けた
タックスヘイブン対策税制適用案件で、合計191億円の
追徴課税が仮払法人税等(船井電機の決算書上は「長期仮払税金」)
として、表示されていました。

これは、バランスシートに「未解決の資産項目」として表示して
おり、今後、この案件については、国税当局との審理の結果、
会社側が勝訴する可能性を考え、費用として確定していないこと
から、将来返してもらえる可能性を信じて、資産計上している
ものと想像できます。
※船井電機の2006.9.30中間連結B/Sの一部(概略)

           バランスシート    (億円)
     ―――――――――――――――――――――
               |
               |
     長期仮払税金 191|純資産   1973
               |    

                            
                            
             損益計算書          
       ――――――――――――――――     
       売 上 高        ×××     
         :           :      
                   ――――     
       税金等調整前当期純利益  ×××     
       法人税、住民税及び事業税 ▲54
                     :

ところで、公認会計士協会の方で、
2007.3.8付けで監査・保証実務委員会報告63号というのを
出しまして、それによると、追徴税額について、

「課税を不服としてその撤回を求め法的手段をとることを会社が
予定している場合も想定されるが、その場合であっても、
法的手段をとる会社の意思のみでは未納付額の不計上あるいは
納付税額の仮払処理を行うことは適当ではない。」

        (委員会報告63号2.(1)4より抜粋))

このような扱いが、今般新設されたことにより、
船井電機としても、監査法人と協議の結果、
会計処理の再検討を迫られ、結果として赤字転落に
つながる業績下方修正の主因ともなってしまったわけです。

監査委員会報告、おそるべしです。
なんか、税務通達で、時としてバタバタさせられる
納税者・税理士の関係にも似たイメージを想起させられます。

このように、国会を通過しないサブ法令みたいな
変更で実務が影響を受ける、というケースは、
あまり表面化しませんが、けっこうありがちです。

規則制定に関しての
「適正手続」と「迅速・柔軟性」の綱引きですね。

これも立派な「経営リスク」の一つと思うのですが、
いかがでしょうか。

ご参考までに、上記の状態で、もしも長期仮払税金が
全部当期の費用となった場合、下記のような中間B/S、
損益計算書が想像できますね。

           バランスシート    (億円)
     ―――――――――――――――――――――
               |
               |
     長期仮払税金   0|純資産   1782
               |    

                            
                            
             損益計算書          
       ――――――――――――――――     
       売 上 高        ×××     
         :           :      
                   ――――     
       税金等調整前当期純利益  ×××     
       法人税、住民税及び事業税▲245
 
※1782=1973-191
  245=54+191

※以上は、知りうる公開情報の範囲で、柴山が想像した
 過程図なので、あくまでご参考程度にとどめおいてください。
 一定の事実を保証するものではないので、ご注意下さいませ。

2008年10月08日

船井電機、追徴税額の会計基準変更で下方修正(2007.4.27*17)

4月27日の投資・財務面(17面)で、税金の会計処理に関する
非常に興味深い話題が出ていたので、ご紹介します。
船井電機は、4月26日付けで業績の下方修正を発表しました。

※プレスリリース4.26
http://www.funai.jp/pressrelease/2007/topic_070426.html

そこで、税引き後の当期純利益につき、当初の予想額174億円
から、▲36億円と、210億円もの大幅下方修正が
公表されたのです。

その要因について、プレスリリースを拝見すると、
欧州市場での液晶テレビ価格下落など、市場要因もあるのですが、
なんといっても大きかったのは、「会計ルールの改正による税金
コストの処理方法の変更」でした。

これは、毎年のように大きく変わる会計法令の変動リスクの
一側面として、知っておきたい事柄です。

具体的には、以前に大阪国税局から更正通知を受けた
タックスヘイブン対策税制適用案件で、合計191億円の
追徴課税が仮払法人税等(船井電機の決算書上は「長期仮払税金」)
として、表示されていました。

これは、バランスシートに「未解決の資産項目」として表示して
おり、今後、この案件については、国税当局との審理の結果、
会社側が勝訴する可能性を考え、費用として確定していないこと
から、将来返してもらえる可能性を信じて、資産計上している
ものと想像できます。
※船井電機の2006.9.30中間連結B/Sの一部(概略)

           バランスシート    (億円)
     ―――――――――――――――――――――
               |
               |
     長期仮払税金 191|純資産   1973
               |    

                            
                            
             損益計算書          
       ――――――――――――――――     
       売 上 高        ×××     
         :           :      
                   ――――     
       税金等調整前当期純利益  ×××     
       法人税、住民税及び事業税 ▲54
                     :

ところで、公認会計士協会の方で、
2007.3.8付けで監査・保証実務委員会報告63号というのを
出しまして、それによると、追徴税額について、

「課税を不服としてその撤回を求め法的手段をとることを会社が
予定している場合も想定されるが、その場合であっても、
法的手段をとる会社の意思のみでは未納付額の不計上あるいは
納付税額の仮払処理を行うことは適当ではない。」

        (委員会報告63号2.(1)4より抜粋))

このような扱いが、今般新設されたことにより、
船井電機としても、監査法人と協議の結果、
会計処理の再検討を迫られ、結果として赤字転落に
つながる業績下方修正の主因ともなってしまったわけです。

監査委員会報告、おそるべしです。
なんか、税務通達で、時としてバタバタさせられる
納税者・税理士の関係にも似たイメージを想起させられます。

このように、国会を通過しないサブ法令みたいな
変更で実務が影響を受ける、というケースは、
あまり表面化しませんが、けっこうありがちです。

規則制定に関しての
「適正手続」と「迅速・柔軟性」の綱引きですね。

これも立派な「経営リスク」の一つと思うのですが、
いかがでしょうか。

ご参考までに、上記の状態で、もしも長期仮払税金が
全部当期の費用となった場合、下記のような中間B/S、
損益計算書が想像できますね。

           バランスシート    (億円)
     ―――――――――――――――――――――
               |
               |
     長期仮払税金   0|純資産   1782
               |    

                            
                            
             損益計算書          
       ――――――――――――――――     
       売 上 高        ×××     
         :           :      
                   ――――     
       税金等調整前当期純利益  ×××     
       法人税、住民税及び事業税▲245
 
※1782=1973-191
  245=54+191

※以上は、知りうる公開情報の範囲で、柴山が想像した
 過程図なので、あくまでご参考程度にとどめおいてください。
 一定の事実を保証するものではないので、ご注意下さいませ。

2008年10月10日

減価償却100万円は、40万円の「無利息借入金」に等しい!

減価償却は、会計技術上、決算手続においてもっとも重視される
項目の一つです。

まずは、減価償却を定義しましょう。
「減価償却とは、固定資産の取得原価を、一定のルールに基づき、
 耐用年数の中で期間配分する会計手続のことである。」

ここで、取得原価とは、「購入時の支出額(購入金額+付随費用)」
のことです。
付随費用とは、「引取費用(運賃)」や、「仲介手数料」などの、
資産取得に直接要した関連支出のことです。

耐用年数とは、その資産の「使用に耐えられる年数」、
すなわち寿命のことですね。

固定資産を、保有期間中に、どのように費用配分するか、
という問題は、非常に悩ましいです。

例を挙げてご説明しましょう。

(例1)1.A社は、1000万円の建物を購入した。
      耐用年数は10年である。
      10年後の見積り処分価値(残存価額といいます)は、
      0円である。
    2.A社は、1年目から10年目まで、毎年、100万円の
      売上高を計上しており、費用は0なので、利益は売上高
      の全額である。
    3.毎年の法人税額は、利益の40%支払うものとする。
    4.A社は、10年目に建物が古くなったので壊した。
      取り壊しのための支出はないとする。
      (建物の実体だけが、10年目に消えてなくなる。)
    5.11年目に、営業を継続するため、同様の建物を
      再建設するために、当初の取得原価と同額、すなわち
      1000万円の再投資資金が必要となる。

■A社の1年目から10年目までの損益計算書

 年 度  売上高   費 用  利 益  法人税 ∥ 建物評価

 取得時    0     0 (  0)   0 ∥ 1000

 1年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 2年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 3年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 4年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 5年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 6年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 7年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 8年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

 9年目  100     0 (100) △40 ∥ 1000

10年目  100 △1000(△900)   0 ∥    0

     ――――  ―――― ―――― ―――― ――――――
損益合計 1000 △1000(   0)△360      -

※現金  1000     0    - △360 =640
 収支

■11年目の全面改修に必要な資金:1000万円
■過去10年で残った現金の額  : 640万円(-)
                 ――――――
■改修のために必要な借入れ額  ; 360万円

このように見ていくと、「利益が10年間、まったく配当に
まわらなかった」としても、売上利益に対する税額40万円×9年
=360万円は社外流出しているため、11年目の再投資資金が
足りなくなります。

これが、減価償却という会計手続をしなかった場合の
財務的な問題点です。

また、上記の表の一番右側を見ると、
建物評価について、10年目に取り壊して実体がなくなった時点で
はじめて取り壊し損失として、1000万円を費用化しています。

なにも手立てを講じなければ、過去10年は、このような損益経緯
となるのですね。

そこで、次に、下記のB社のケースを見てみましょう。

(例2)1.B社は、1000万円の建物を購入した。
      耐用年数は10年である。
      10年後の見積り処分価値(残存価額といいます)は、
      0円である。
      さらに、B社は、毎年、一定額の減価償却費計上
      (使用・時の経過による設備劣化分の見積り費用処理)を
      行った。
      その額は、1000万円÷10年=100万円である。
    2.A社は、1年目から10年目まで、毎年、100万円の
      売上高を計上しており、費用は0なので、利益は売上高
      の全額である。
    3.毎年の法人税額は、利益の40%支払うものとする。
    4.A社は、10年目に建物が古くなったので壊した。
      取り壊しのための支出はないとする。
      (建物の実体だけが、10年目に消えてなくなる。)
    5.11年目に、営業を継続するため、同様の建物を
      再建設するために、当初の取得原価と同額、すなわち
      1000万円の再投資資金が必要となる。

■A社の1年目から10年目までの損益計算書

 年 度  売上高   費 用  利 益  法人税 ∥ 建物評価

 取得時    0     0 (  0)   0 ∥ 1000

 1年目  100  △100 (  0)   0 ∥  900

 2年目  100  △100 (  0)   0 ∥  800

 3年目  100  △100 (  0)   0 ∥  700

 4年目  100  △100 (  0)   0 ∥  600

 5年目  100  △100 (  0)   0 ∥  500

 6年目  100  △100 (  0)   0 ∥  400

 7年目  100  △100 (  0)   0 ∥  300

 8年目  100  △100 (  0)   0 ∥  200

 9年目  100  △100 (  0)   0 ∥  100

10年目  100  △100 (  0)   0 ∥    0

     ――――  ―――― ―――― ―――― ――――――
損益合計 1000 △1000(   0)   0      -

※現金  1000     0    -    0 =1000
 収支

■11年目の全面改修に必要な資金:1000万円
■過去10年で残った現金の額  :1000万円(-)
                 ――――――
■改修のために必要な借入れ額  ;   0万円

…いかがでしょうか。
各年度(1年目~9年目)に減価償却費100万円ずつを、
建物の劣化に伴う評価損として計上することにより、
税引き前の利益を0にすることができました。

実際、各年度末を見ると、建物が少しずつ価値を落としていく、
という見方をする方が、実体にあっていて、例1のときより、
合理的な会計的表現ができていますよね。

そして、10年目の費用である、解体に伴う中古建物の
処分損失は、直前の9年目における帳簿価額(簿価とも言います。
帳簿に登録されている評価額のことです。)100万円が、
0円になる、という感じになります。

ここで、注目すべきは、例1では毎年40万円の資金を
税金として流出させていたのが、例2では、減価償却費の
計上によって社外流出を防止しています。

いいかえれば、「毎年40万円の資金を無利子、無期限で
借り入れている」に等しい財務効果を得ているわけですね~。

それが9年間累積して、みごと、例1における360万円の
資金不足を解消しました。

このように、減価償却費の計上は、「各年度において現金支出を
ともなわず」に、合理的に費用を計上し、節税できるという、
貴重な会計技術なのです。

とても重要な財務効果なので、しっかりと理解してください。

2008年10月12日

「法定耐用年数表」の見直しで、企業負担を軽減(2007.5.20*1)

日経新聞2007年5月20日1面の記事です。
政府が、製造設備の減価償却期間を定める法定耐用年数を見直す
方向で検討に入った、とのことです。

この記事と合わせて図示されている表が興味深いです。
耐用年数は、たとえばパソコンなら4年、
事務机なら金属製なら15年でそれ以外なら8年など、
設備の種類によって異なる年数が詳細に決められています。

生産設備を例に取ると、
日本では、耐用年数を決める区分数が388もあるのに対し、
米国では48、韓国では26と、事務負担が非常に低く、
どの区分にすべきか迷わずに済むケースが多いと思われます。

この、耐用年数の区分をもっと簡素化することで、
税務事務に係る企業の負担を軽くしようじゃないか、
という趣旨ですね。

また、国際的な年数の比較でいっても、
日経の「今日のことば」を参考にすれば、
NC旋盤で「日本10年」、「米国7年」、「韓国8年」
など、国際的に見て、やや耐用年数が長く、
各年度の費用化額が少なくなって節税効果に見劣りが
ありました。

こういったところにも、メスがはいってきています。

今年は、減価償却制度の大きな見直しがあって、
それ自体は、会計人の立場として、非常に前向きで
よろしいのではないか、と感じています。

以上、減価償却に関するトピックでした。

2008年10月14日

販売奨励金のP/L表

販売奨励金とは、委託販売を行っている場合に、
自社の商品を代わりに売ってくれる販売代理店に対して、
販売促進のために支払う手数料のことです。

一般には、「販売手数料」や「販売促進費」などとも
呼ばれている費用ですね。

自社だけで商品を売ろうとするよりも、
代理店を募って、その代理店の人脈とか
販売チャンネルとかを利用して、売上を拡大する方が、
営業戦略上、有利なケースが多いです。

このような場合、代理店がヤル気を出すように、
できるだけ奮発して手数料を出してあげるのがミソです。

たとえば、かつては「1円端末」が携帯ショップの店頭に
ならんだりして、「そんなんで儲かるの?」という
疑問をもたれた方も多いと思います。

もちろん、携帯ショップ(代理店)は、1円で携帯を
売っても、もうかるはずはないですよね。

(説例1)1円で携帯を1万台販売したショップのP/L
     このときの携帯端末の原価を、1台3万円とする。

             損益計算書
       ―――――――――――――――――
       売上高          1万円
       売上原価    △30000万円 (3億円)
                ―――――――
         売上総利益 △29999万円
           :     :

このように見ていくと、売上総利益(粗利)が、
現時点ではなんとマイナス3億円近くとなっているため、
このままでは商売が成り立つはずもありません。

そこで、基本契約にもとづいて、販売奨励金を
携帯端末の販売元請会社であるNTTドコモなどから、
1台4万円の金額で受取ったとしましょう。

(説例2)1円で携帯を1万台販売したショップのP/L
     このときの携帯端末の原価を、1台3万円とする。
     さらに、1台あたりの販売奨励金を4万円ずつ
     受取っていたとする。

             損益計算書
       ―――――――――――――――――
       売上高      40001万円
       売上原価    △30000万円 (3億円)
                ―――――――
         売上総利益  10001万円 (1億1万円)
           :     :

いかがですか?

売上高のほとんどすべてが「販売奨励金」という、
すさまじい状態ですね。これで、1億円強の利益を得ることが
できました。

さて、ここで一方の販売元会社(代理店に販売を委託した会社)は、
どのようなP/Lになるのでしょうか。

(説例3)販売代理店に、1万台の携帯端末(原価2万円)を
     1台3万円で販売し、それと並行して、
     1台4万円の販売奨励金を支払った。
     
             損益計算書
       ―――――――――――――――――
      1売上高      30000万円 (販売高)
      2売上原価    △20000万円 (仕入原価)
                ―――――――
         売上総利益  10000万円 (1億円)

      3販売費及び   △40000万円 (4億円)
         一般管理費
                ―――――――
          営業利益 △30000万円 (3億円)
           :      :

う~む。これでは、売れば売るほど、販売元の会社は、
赤字を増やしてしまいます。

これでは、営業を継続できませんね。

しかし!
もちろんこれには、からくりがあります。

この販売元会社は、携帯販売後、通信料を毎月、
徴収できるのです。

(説例4)販売代理店に、1万台の携帯端末(原価2万円)を
     1台3万円で販売し、それと並行して、
     1台4万円の販売奨励金を支払った。
     その後、一年間で、通信サービス料の売上を、20億円
     消費者から徴収した。

             損益計算書
       ―――――――――――――――――
      1売上高     230000万円 (販売高+通信料)
      2売上原価    △20000万円 (仕入原価)
                ―――――――
         売上総利益 210000万円 (1億円)

      3販売費及び   △40000万円 (4億円)
         一般管理費
                ―――――――
          営業利益 170000万円 (17億円)
           :      :

…と、このように、「機器販売(携帯端末販売)による売上3億円」を
はるかに上回る「通信料収入20億円」があるために、機器販売で
損をしても、トータルで大きな利益を手にすることができるのですね。

「損して得取れ」をまさに地で行っているようなビジネスモデル
といえるでしょう。

ちなみに、
販売奨励金(販売手数料、販売促進費)は、
一般事業会社では「販売費及び一般管理費」で処理・表示しますが、
NTTドコモの財務諸表を見ると、「営業費用」という名称で、
売上原価と一本化しているように見受けられます。

ご参考になれば幸いです。

2008年10月16日

携帯を激安にして、通信費でこっそり回収…?(2007.6.23*1

2007年6月23日の日経1面を見ると、
総務省は、2010年をメドに、携帯電話の利用規制を大幅に見直す、
とのことです。

そのポイントとして、次のようなものが挙げられるようです。
●利用者が契約会社を乗り換えても、携帯電話端末をそのまま使える
●同じ電話番号で複数の携帯端末を利用できる
●携帯電話の値引販売の原資となる販売奨励金を、段階的に見直す

第3のポイントは、今回のメルマガの中心的なテーマとも
関係してきます。

つまり、販売奨励金の形で代理店にマージンを渡し、
それを原資に値引販売させることで端末を普及させるが、
あとで通信料に上乗せし、料金明細上わかりにくい形で
利益を取っている、という指摘があります。

けっきょくは、あとで通信料に上乗せする形で販売奨励金を
回収したいわけですから、事後、かんたんに端末の他社乗り入れを
されると、最初に契約した会社は困ることになります。

だから、かんたんに乗り換えができないように制限されていた、
とも考えられます。

そのような不便さを緩和し、携帯各社の健全な競争を促すためにも、
販売奨励金制度の見直しを図ろう、という意図が見て取れるわけ
ですね。

携帯のビジネスモデルは、私たちに、いろいろな面での教訓を
与えてくれます。

2008年10月18日

経常利益の意味と、構成要素

経常利益とは、「企業の正常な状況下における収益力」を
あらわす指標となる利益のことです。

●具体的には、次のような手順で計算されます。
ステップ1 売上高から売上原価(仕入原価)を引いて、
      「売上総利益(粗利益)」を求める。
               ↓
ステップ2 売上総利益(粗利益)から、営業活動に必要な経費、
      すなわち「販売費及び一般管理費」を引いて、
      「営業利益(営業活動の成果)」を求める。
               ↓
ステップ3 営業利益に、営業外の収益(受取利息・配当金・
      有価証券の売却益・雑収入など)を加算し、
      営業外の費用(支払利息・有価証券の売却損・
      雑損失など)を引く。
               ↓
          「経常利益」が求められる。

※損益計算書の表示例(経常利益まで)

           損 益 計 算 書  (万円)
     ―――――――――――――――――――――
     1.売  上  高      5000
     2.売 上 原 価      3000(▲)
                  ――――――――
          売 上 総 利 益   2000

     3.販売費及び一般管理費   1500(▲)
                  ――――――――
          営 業 利 益    500

     4.営 業 外 収 益       220
     5.営 業 外 費 用       180(▲)
                  ――――――――
          経 常 利 益    540
             :        :

会計について初心者の方は、特に強く意識して、
上記の損益計算書フォームを書けるようになるまで、
何度も読み返してみてください。

会計力が、また一段とアップしますよ!

なお、上記の計算プロセスを見ると、
営業利益の売上高に対する比率(売上高営業利益率)は、
10%と計算されますね。(500万円÷5000万円)

つまり、売上高のうち、仕入原価と営業コストを引いた
本業の儲けは、わずか10%程度しか残らない、
ということなのですね。

実際の企業では、だいたい3%から5%程度の
水準が営業利益の目安となります。

そして、営業外収益、営業外損失といった本業以外の
収支がほぼトントンならば、経常利益は、営業利益に
近い水準になることも、ままありますね。

なお、このあと時事問題としてとりあげたように、
「経常利益のランキング」などを出してみると、
勝ち組企業の法則、反対に負け組み企業の法則などが
推測できたりして、おもしろいですよ。

以上、経常利益に関する基礎知識でした。


[2]経常利益1000億円以上が百社近く(日経2007.7.5*3)
日経新聞、7月5日の3面(関連記事15面)を見ると、
2007年度に経常利益が1000億円以上となる見込みの
上場企業数が、なんと96社と、もうすぐ100社に届き
そうないきおいとなっています。

ちなみに、ITバブルといわれた2000年度で、
経常利益1000億円以上の会社数は、39社でした。

つまり、わずかここ6年の間に、約2.5倍にも
1000億円以上の会社数が増えたことがわかります。

これは、やはり景気拡大を伺わせる注目すべき数字
ですね。

ここで、日経新聞の記事より、経常利益が5000億円
以上と、特に儲かっている企業の名前をあげてみましょう。

●2007年度の予想経常利益、上位10社

1 トヨタ自動車  24

2008年10月20日

経常利益1000億円以上が百社近く(日経2007.7.5*3)

日経新聞、7月5日の3面(関連記事15面)を見ると、
2007年度に経常利益が1000億円以上となる見込みの
上場企業数が、なんと96社と、もうすぐ100社に届き
そうないきおいとなっています。

ちなみに、ITバブルといわれた2000年度で、
経常利益1000億円以上の会社数は、39社でした。

つまり、わずかここ6年の間に、約2.5倍にも
1000億円以上の会社数が増えたことがわかります。

これは、やはり景気拡大を伺わせる注目すべき数字
ですね。

ここで、日経新聞の記事より、経常利益が5000億円
以上と、特に儲かっている企業の名前をあげてみましょう。

●2007年度の予想経常利益、上位10社

1 トヨタ自動車  24

2008年10月22日

日産自動車、収益回復不明~営業減益~(日経2007.7.21*15)

日産自動車の業績回復が、不透明な状態となってきています。
日経2007年7月21日の15面では、
「24日に発表する2008年3月期 第1四半期(4-6月)の
 連結業績は、営業檀家でも減益になる公算が大きい。」
と報じられています。

これに関連して、
4月に年初来の安値をつけてから回復基調だった株価も、
また上値が重くなっていているようです。

また、三菱UFJ証券など6社のアナリストの予想を平均すると、
日産の4-6月の営業利益は1478億円と、前年同期比4%減
の見込みです。

ちなみに、2007年3月期の年間営業利益は7769億円ですから、
第2四半期以降、かなりの増収がないと、
前年度波の水準を維持するのも、難しくなりそうですね。

さて、ここで基礎知識の確認です。

損益計算書のフォーム(一部)を再確認しておきましょう。

           損 益 計 算 書
        ―――――――――――――――
        売  上  高    1000
        売 上 原 価     640(-)
                   ――――
             売上総利益  360

        販売費及び一般管理費  300(-)
                   ――――
              営業利益   60
                :     :

上記を見ると、営業利益がどれくらいになるかを
決定付ける要因は、大きく3つあります。

1.売上高 … 一年間における販売高。
        入金額ではなく、商品・サービスの提供高。
        輸出企業の場合、市場の需要や競争の程度に加え、
        為替レートの変動も、業績を左右する要因となる。

        具体的には、円安(1ドルあたりの円が増える)に
        なると、売上高が増加する。
        (例:1ドル110円で10ドル販売=1100円。
           1ドル120円で10ドル販売=1200円。)

2.売上原価… 上記の販売高に対応する仕入原価。
        製造業の場合は、上記の販売高に対応する
        製品の製造にかかったコスト。
        具体的には、材料費+労務費+経費で
        求められるので、「原価の3要素」とも
        呼ばれる。
        原材料を海外から輸入している場合は、
        円安になると、調達コストが上昇する。

        最近では、日産のリバイバルプランのように
        部品の調達先を減らして集中化し、一箇所からの
        大量仕入による単価削減がトレンドとなっている。

3.販売費及び一般管理費… 一年間で消費した販売活動の経費と
              管理活動(本社)の経費の合計

              一番大きいのは人件費で、
              減価償却費、広告宣伝費、発送費など
              も、十分な管理が必要となる。
              インフレ経済下では、特に慎重に
              管理しなければならない。

以上、3つの財務諸表項目の要素が複雑に絡み合って、
営業利益という数字が作りこまれていくのです。

だから、経営管理者の視点では、どの要因が一番の問題点か、
優先順位からいって、どこから先に改善に着手すべきか、
など、迅速かつ的確な意思決定と指示・行動が必要になります。

さて、今回の日産自動車については、営業減益要因として、
以下の点が上げられています。

●北米でトラック系車種の販売が低迷している。 …売上高要因
●国内の販売不振が続いている。 …売上高要因
●為替相場は、当初の117円の想定値よりも5円ほど円安と
 なるので、この点では増収効果が見込まれる。 …売上高要因
●しかし、4-6月期は輸出自体が大きく減っている。 …売上高要因
●新潟中越沖地震で操業停止がコストに影響するか? …売上原価要因
●新車効果で下期は増益に転じるか? …売上高要因

いちおう、売上高要因と売上原価要因が、多く
思い浮かびましたので、上記のようにピックアップしてみました。

ご自身でも、ブレーンストーミングのつもりで、
ほかに原因が挙げられないか、ぜひ考えてみてください。

営業利益を構成する要因を日ごろから考え、
文章で表現できるようなトレーニングは、非常に効果的ですよ。

2008年10月24日

在庫削減の弱点~部品メーカー停止の波紋(日経2007.7.20*9)

先日の新潟における地震では、
多くの方がご苦労されたことと思います。

さて、災害による会社の操業停止という事態は、
経営上のリスクとして、常に頭の片隅に入れて
おかなければなりません。

特に、日本の場合は、
●台風
●地震
は、風土的特徴からいっても、
いざという時のために、備えられるものなら、
可能な範囲で備えておきたいですね。

2007年7月20日の9面「企業総合面」では、
「復旧力問われる『カンバン』」というタイトルで、
自動車部品大手リケンの操業停止を受けて、
自動車メーカー全12社が順次生産を休止し始めた、
という、ある意味衝撃的な記事が掲載されていました。

ちなみに、自動車の製造に必要な部品の点数は、
約3万点だそうです。

このように、あまりに莫大な「材料」を必要とする
メーカーの立場としては、いかにこの材料の在庫を
削減するか、という問題は、事業継続の死活問題とも
なりうるものですね。

参考までに、材料は、消費されれば「仕掛品(未完成時)」
または「製品(完成時)」として、バランスシート上、
在庫扱いで計上されます。

         バランスシート
  ―――――――――――――――――――――
  (流動資産)    |
   現金預金  ×××|
   売 掛 金  ×××|
   製  品   C | →→→→→→→→→・
   材  料   A |          ↓
   仕 掛 品   B |          ↓
     :     : |          ↓
                       ↓ 
                       ↓ 
そして、製品(C)が倉庫から出荷され、    ↓
お客様の手元に届けられると、販売された    ↓  
(証拠から消えた=消費された)として、    ↓
「売上原価」という損益計算上の項目として、  ↓
計上されます。                ↓
                       ↓
          損益計算書        ↓
     ―――――――――――――――   ↓
     売  上  高     ×××   ↓
     売 上 原 価      C ←←←・

このように、部品は、
特に自動車会社の場合、売上原価のかなりの部分を
占めると思います。

たとえば、日産自動車の決算書を見ると、
費用のおおむね80%が、なんと材料費で占められて
いました。

※日産の財務分析の詳しくは、柴山塾8/1でお楽しみ下さい。
  → http://bokikaikei.net/04jirei/66.html

さて、このような売上原価の大部分を占める材料費は、
個々の細かいレベルで少しずつ単価が高まっても、
あまりピンと来ないかもしれませんが、1台あたり3万点
もの材料を使うのですから、極端な話、
3万点の部品がすべて1円ずつ値上がりしたとすると、
1台の自動車を作るためのコストが、3万円ずつ上昇する
ことになります。

また、もしも部品の仕入政策がうまくいかずに、
使わない部品ばかり何万点も抱え込むことになったら…

これらは、非常に怖いことで、
だから、部品を少しでも無駄にしないよう、
カンバン方式をはじめとした、優れた在庫管理手法が
日本でたくさん生み出されてきたわけなのです。

また、大手ともなればたくさんの部品を必要とするわけ
ですから、多くの業者から少しずつ買うよりは、
少ない業者からたくさん買った方が、割戻しを受けることが
できるので、部品単価が大幅に下がり、コストダウンに
つながりますよね。

このように、

●工場内に余計な在庫を持たない
●部品の仕入先を少数に絞る
という政策は、コストダウン、キャッシュ節約の観点
からは、非常に有効な手段と言えます。

しかし、ひとたび災害などがおき、一極集中していた
仕入先の部品メーカーが操業停止になった場合などは、
一気に、「無在庫・少数仕入先」政策が危機にさらされます。

●自社の工場が健全であっても、ほしい部品が届かない…

監査の立場から言えば、仕入先の絞込みは、
その少数の仕入先の経営不振や関係悪化などによる
供給不足によるダメージの有無を、予備調査の段階で、
いちおう経営環境のリスクとして見たりすることがあります。

在庫削減・仕入単価削減のための業者絞込みには、
光と影の部分があるのだ、ということを教えてくれたのが、
今回の地震に係る操業停止の記事でした。

2008年10月26日

製造原価の3要素と外注費

会社の業種を2つに分けると、次のようになります。

1.製造業(メーカー)
2.商業(卸売、小売、サービス業)

ここで、製造業と商業の違いですが、
ひとことでいうと、
     「物を作るか作らないか」
の違いなのですね。

●物を作る=製造業
●物を作らない=商業

【製造業と商業のビジネスプロセス】

 1.製造業

       <工場内>  <製品倉庫>
     ・―――――――・
     |       |
     |  未完成  | 完 成    
     投入     生産      販売 ●
  ● →→→→ ● →→→→ ● →→→→ ▲
1原材料 |  仕掛品  | 製 品    得意先
      (しかかりひん)

         ↑
         ↑
       加工プロセス
     (2労務費、3経費)


  2.商業

       <仕入先>  <商品倉庫>
              ・―――・
              |   |
              |   |     
            仕入|   | 販売 ●
         ● →→→→ ● →→→→ ▲
       1仕入原価   商 品    得意先
        

上記のように、製造業では、「1原材料 2労務費 3経費」
と3種類のコストが発生しています。原価の3要素とも呼ばれます。

これに対し、商業では、「1仕入原価」の1種類しかコストが
発生していませんね。

このことを、損益計算書で見ていきましょう。

          損益計算書
     ―――――――――――――――
     売  上  高     ×××
     売 上 原 価    ▲××× ←←☆
                 ―――
       売上総利益     ×××
         :        :

上記の☆印、つまり売上原価の内訳が、製造業の3種類のコスト、
または商業の仕入原価になるわけなのです。

【売上原価の内訳】

1.製造業

  (1)材料費(物品の消費額。原料、素材、部品など)
  (2)労務費(労働サービスの消費額。賃金、給料など)
  (3)経 費(その他の資源の消費額。電力料、外注費など)

2.商業

  (1)仕入原価(商品を購入した時にかかった支出額)

このように見ていくと、売上原価の内訳は、
製造業の方が、はるかに複雑となります。

これが、「原価計算」という会計分野が独立して存在する
理由なのですね。

さて、ここまでで、製造業のプロセスを見ていきましたが、
工場内の生産能力では、受注をまかないきれない、なんて
いう場合もあります。

そういった場合、受注の一部や、加工の一部を、
自分の工場では行わず、外部の者に委託することがあります。

こういった取引を「外注」といいますね。

自動車メーカーにおける部品の外注なんかは、
典型例です。

また、大手の製造業者が、一部の加工を
小規模でほぼ専任の外注先に発注することを
「下請けに出す」なんていったりしますね。

下請けは、外注形態の一つです。

工業簿記の世界では、個々の製品とのつながりがはっきり
している経費の事を「直接経費」といいますが、
外注費は、直接経費の代表選手です。

※工業簿記の入門知識を3時間でマスターしたい!
 という方は、下記をどうぞ!!
 → http://bokikaikei.net/03kaikei/38.html
 
ちなみに、外注先の下請工場なども、もちろんメーカーですから、
そちらの方でも「原価計算」は行われています。

つまり、外注費の中にも、「材料費+労務費+経費」は、
当然含まれています。
さらにいうなら、外注先の利益も乗っかっていますよ。

したがって、
外注費=外注先の「材料費+労務費+経費+利益」
という構図が成り立ちます。

だから、予定以上の受注があったりして、
生産をどんどん外注にまわすと、意外に利益が残らなかった、
なんていうこともあるかもしれませんね。

これまで外注していた部品や加工工程の一部を、
自社の工場内でできるようにすることを「内製化」といいますが、
これも、立派な原価計算の意思決定領域です。

この機会に、しっかりと覚えておきましょう。

2008年10月28日

三井造船、造船鋼板加工を内製化(日経2007.8.4*11)

日経新聞8月4日の11面の記事です。
三井造船が、主力拠点である岡山に、
造船用の鋼板を加工する工場を新設する、とのことです。

新聞によりますと、船の建造の流れは下記のようになって
おり、そのうちの、鋼材加工(切断・曲げ)の部分を
三井造船で内製化することになります。

 鋼材購入→鋼材加工→船体ブロック→船体→進水→機器類の 
           の組立    組立    取り付け
       ↑
       ↑
    ●ここを内製化!

なお、ご参考までに、造船業の財務比較として、
平成19年3月期の三井造船と川崎重工業の
製造原価の内訳と、売上高総利益率を掲載してみました。

【大手造船2社の製造原価と売上高総利益率】H19.3月期

              三井造船     川崎重工業

   売  上  高    348

2008年10月30日

固定資産の収益性低下を決算書に反映~固定資産の減損会計~

固定資産とは、「企業が長期間、使用する資産」のことです。
具体的には、
●建物、機械装置、備品、車両、土地など、
 形のあるもの                …有形固定資産
●商標権、特許権、電話加入権、ソフトウェア、
 のれんなど、形のないもの          …無形固定資産
●長期貸付金、投資有価証券、敷金保証金など、
 投資目的で保有しているものその他      …投資その他の資産
以上があります。

           バランスシート
     ―――――――――――――――――――
     (流動資産)   |
      現金預金    |
        :     |
     (固定資産)   |
      有形固定資産  |
       建物     |
       構築物    |
        :     |
      無形固定資産  |
       ○○権    |
        :     |
      投資その他   |
        :     |

このように、固定資産として表示されているものは、
総じて、現金として全額が資金回収されるまでは、
何年もかかります。

かんたんにいうと、
「事業活動を通じて、今後数年~数十年かけて、
 じっくりと投下資本(投資額)をキャッシュで
 回収することを予定する資産」なのが、
固定資産というわけですね。

たとえば、ある事業を始めるに当って、
5000万円を資金投下して、
建物3000万円、土地2000万円を
購入したとしましょう。

          バランスシート1
     ―――――――――――――――――
     現金預金5000|資本金 5000
             |
     ―――――――――――――――――
      計  5000| 計  5000
     =================

          バランスシート2
     ―――――――――――――――――
     現金預金   0|資本金 5000
             |
     建  物3000|
     土  地2000|
     ―――――――――――――――――
      計  5000| 計  5000
     =================

建物の耐用年数が20年、残存価額(寿命が来た時の処分価値)
が0円としましょう。
20年間で、毎年200万円ずつの税引き後利益を獲得した
とすると、200万円×20年=4000万円の
キャッシュ・イン・フローになります。
その間、まったく配当がなかったとして、
建物が20年後に価値が0円となり、その代わりに
20年間で現金預金が上記の計算どおりに増えたとします。

          バランスシート3
     ―――――――――――――――――
     現金預金4000|資本金 5000
             |
     建  物   0|
     土  地2000|利 益 1000
     ―――――――――――――――――
      計  6000| 計  6000
     =================

このように、20年間で、
正味の現金収入4000万円-建物の減価償却3000万円
=1000万円の利益(現金増加分)が手に入りました。
さらに、事業終了とともに、土地2000万円も、
取得時と同じ金額で売却処分できたとしましょう。

          バランスシート4
     ―――――――――――――――――
     現金預金6000|資本金 5000
             |
     建  物   0|
     土  地   0|利 益 1000
     ―――――――――――――――――
      計  6000| 計  6000
     =================

けっきょく、バランスシート2の時点と較べて、
「建物3000万円、土地2000万円に投下した
現金5000万円」は、20年間かけて、
「6000万円のキャッシュとして回収」できた、
ということができますよね。

このように、固定資産への投資は、
長い期間をかけて、「それ以上のキャッシュフローが
得られる」と思うからこそ意味をなすわけです。

ここで、もしも、「最初の10年間は、毎年200万円の
キャッシュを予定通り獲得できていたが、11年目以降は、
事業の経済環境の急激な悪化が予想される。」

「よって、11年目から20年目までは、毎年50万円ずつ
しかキャッシュが入らなくなり、なおかつ20年目の土地
の売却時価が2000万円ではなく800万円まで値下がり
すると予想された」としましょう。

■10年後のバランスシート
          バランスシート5
     ―――――――――――――――――
     現金預金2000|資本金 5000
             |
     建  物1500|
     土  地2000|利 益  500
     ―――――――――――――――――
      計  6000| 計  6000
     =================

※現金預金2000万円=200万円×10年
 建物1500万円=3000万円-10年×(3000万円/20年)
上記の固定資産の帳簿価額(帳簿上の評価額)を見ると、
建物1500万円+土地2000万円=3500万円ですね。
ここで、11年目以降の、予想されるキャッシュフローは、
毎年50万円×10年= 500万円
20年目の土地売却額= 800万円
           ―――――
       合計  1300万円
           =====
帳簿価額3500万円よりも、将来見込まれるキャッシュフローの額
の方が低いですよね。

このような状況を、「減損の兆候がある」といいます。
キャッシュの回収が、帳簿価額よりも下回るのだから、
「減損損失(臨時的な評価額の切り下げによる損失)を
計上しなければならない」とされるのが、減損会計なのです。

そして、実際にどれだけの損失額を計上するか、といえば、
「回収可能額と帳簿価額の差額」とされています。
では、ここでの回収可能額を、
「売却時価:建物650万円+土地900万円=1450万円」
であるとしましょう。

10年後の決算時点では、建物の帳簿価額が1500万円、
土地の帳簿価額が2000万円ですから、
建物の減損損失:1500万円-650万円= 850万円
土地の減損損失:2000万円-900万円=1100万円
となり、損益計算書(特別損失の区分)には、
合計で1950万円もの減損損失が計上され、利益が減少する
ことになります。

■10年後のバランスシート
          バランスシート5
     ―――――――――――――――――
     現金預金2000|資本金 5000
             |
     建  物1500|
     土  地2000|利 益  500
     ―――――――――――――――――
      計  6000| 計  6000
     =================
             ↓
             ↓
■減損後のバランスシート等
          バランスシート6
     ―――――――――――――――――
     現金預金2000|資本金 5000
             |
     建  物 650|
     土  地 900|利 益▲1450←←・
     ―――――――――――――――――  ↑
      計  3550| 計  3550  ↑
     =================  ↑
                        ↑
           損益計算書        ↑
        ―――――――――――     ↑
        売 上 高   ×××     ↑
          :      :      ↑
        特別損失            ↑
         減損損失  1950(-)→→・
          :      :
以上のように、ある時点で、固定資産の収益性の低下が
予想される場合には、減損損失を計上しなければならない、
というのが減損会計の趣旨なのですね。

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