第9週④ 試算表から何がわかるかな?

【キッズ簿記(BOKI)Step3】

今回は「試算表から何がわかるかな?」というテーマです。

柴山政行氏(以下、柴山):レッスン41から43までで、月次試算表の考え方や枠の選び方次第で、いろいろな情報を手に入れることができるということを学習しましたが、具体的に何がわかるのかということについて、数字の組合せや読み取るポイントなどを一緒に勉強していきたいと思います。

進行:今回ももかさん、りょうたくんの2人と一緒に勉強していきます。
まず、キッズベーカリーの8月の月次試算表から見てもらいましょう。
先生、月次試算表には格好良い別名があるそうですが、それは何でしょうか?

柴山:この表には「合計」と「残高」が出ているので、「合計残高試算表」という名前があります。

進行:こちらのほうが正式な名前なのですか?

柴山:そうです。
簿記という学問では、「残高試算用」と「合計試算表」と、そのどちらも含めた「合計残高試算表」というものがあります。
合計残高試算表には残高も合計も書かれているので、情報量が一番多い試算表です。

進行:合計と残高が書いてあることは大事なことなのですか?

柴山:たとえば、合計が書いてあれば、左右の数字が一致していなければ記入内容に間違いがあるとわかりますが、そのように、いろいろなことがわかるきっかけがたくさんあったほうが良いのです。

進行:この試算表で「いろいろなことがわかる」とおっしゃっていましたが、それを教えていただけますか?

柴山:月次試算表では、次のことがわかります。
1)1か月でどれくらいのお金が動いたか。
これは前回まででやりましたね。
左側が入金合計で右側が出金合計です。

2)月末にいくら現金や預金が残っているか。
現金をあまり多く残しておくと防犯上良くないという話は以前もお話しました。
現金が増えたら、一定額を残して預金しましょう。

3)月末時点で、そのほかの資産や負債がどれくらいあるか。
資産といえば、金の他にどんなものがありましたか?

りょうたくん(以下、りょうたくん):物・権利です。

柴山:もう完璧ですね。
金・物・権利です。
それでは、負債にはどのようなものがありましたか?

もかさん(以下、もかさん):借入金と買掛金です。

柴山:そうですね。
それらがいくらあるかがわかるということです。

4)1か月でどれくらいの売り上げがあったか。
これは試算表の右下のほうを見るとわかります。

5)1か月でどれくらいの費用がかかったか。
これについて、表のどこを見ればわかるのかということは前回までに学習しましたので、思い出してみてください。
さて、このようにいろいろなことがわかる月次試算表ですが、前の月の試算表の数字と比べると、もっといろいろなことがわかります。
学校の成績と同じで、去年の成績と今年の成績を比べるようなものです。
過去との比較をすることが大事なのです。
これは、昨日、りょうたくんともかさんに作ってもらったキッズベーカリーの7月の月次試算表ですが、この表を使いながら、何を、どう見たら、どんなことがわかるのかをこの後学習していきます。

進行:7月と8月の月次試算表を比べたらどんなことがわかるのかを教えてもらう前に、2人に、2か月分の月次試算表から、8月のキッズベーカリーの商売を分析してもらいます。
2人には、考えるための資料と答えを書くボードをお渡ししますが、さすがに何も知らない状態から分析をするのは難しいと思うので、説明をお願いします。

柴山:では、月次試算表の読み方や分析のポイントを教えたいと思います。
これは実際の商売にも役に立つので、みなさんからお家の人にもアドバイスができるかもしれませんので、頑張って挑戦してみてください。

ポイントは4つあります。

1つ目は、前の月に比べて、売上は増えたか、減ったかを確認します。
これは7月と8月を比較するだけなので、簡単ですね。

2つ目は、現金預金の残高は前月と比べて増えたか、減ったかを確認します。
もし増えていたら、その理由も考えてみてください。

3つ目は、前の月に比べて、売上や現金預金以外に大きな変化をしている項目があれば、その理由を考えます。

4つ目は、今月の売上から費用の合計(仕入+その他の費用)を引いたら、いくらになるか(いくら儲かっているか)を確認します。

以前にお話したかもしれませんが、サラリーマンなどの個人の場合は、給料から生活費を引くと手元に残った「儲け」が出ますが、それと同じ発想で、利益を求めてください。
この4つに注目して分析してみてください。

進行:では、分析をお願いします。

…では、分析が終わったようなので、もかさんから読んでもらえますか?

もかさん:7月と8月の売上を比べると、8月は売上が減りました。
その理由は、配達売上の金額は7月よりも8月のほうが多かったのですが、それ以上に店頭売上の金額は、7月に比べて8月のほうが少なかったので、売上が減ったのかなと思いました。

進行:続いてりょうたくんお願いします。

りょうたくん:7月に比べて8月の売上は減りました。
その理由は、8月は夏休みで人もたくさんいるから売上も伸びるだろうと予想して、仕入を多くしたけれど、お客さんは旅行などお出かけをしているからお店に来る人が少なかったからだと思います。

次に、現金預金の残高は増えています。
理由は、今月は売上が少なかったけれど、一応96万シバは儲けているから増えているのだと思います。

そして、それ以外に変化をしているところは、買掛金が増えたことです。
理由は、売れると予想して多く仕入れたからです。
最後に、今月の利益は184,400シバで、予想が外れたから利益が減ったのだと思います。

進行:先生、2人の分析はどうでしょうか?

柴山:りょうたくんは予測の観点が多いですね。
こういった発想は大事なことで、予想が外れたときのフォローまで考えることは良いことです。
未来志向で良いと思います。
もかさんは、細かいところに目を向けて、コンサルタントのような分析で非常に好感が持てます。
それぞれのキャラクターを活かした、非常に良い分析をしてくれたと思います。

それでは、私が用意した、一般的な分析のお手本を紹介します。
まずは1つ目、配達売上も店頭売上も、7月に比べて8月は100,000シバ以上ダウンしています。
考えられる理由は、お盆休みがあって営業日数が減ったからということと、暑くて外に出られなかったということです。
昼間は暑いので、夜の営業を長くするなどの工夫もできます。
商売はこのようにして考えるのです。

2つ目、現金は60,000シバで同じでしたが、普通預金は7月末に比べて40シバ近く増えました。
現金の額は変わらないということは、もかさんが答えてくれましたが、防犯上の理由で預金するという、以前学習した内容を書いてくれています。

3つ目、7月に比べて大きく変化した勘定科目は2つありました。
売上が下がっていたら仕入も費用も下がるはずですが、これに近いことは2人とも答えていたような気がします。
仕入は、7月が387,500シバでしたが、8月は444,000シバとなって増えています。
その他の費用は、7月が177,500シバでしたが、8月は385,000シバと、ほぼ倍増しています。

進行:その他の費用が上がっているのは、クーラーが原因ですか?

柴山:鋭いですね。
他にも、夏のお休みの間に内装を変えたなど、いろいろな理由が考えられます。
先程、りょうたくんが「予想をしてたくさん仕入れたけど実際には売れなかった」と分析していましたが、そのような見方もできます。

そして分析例としてもう1つ、儲けの計算方法も紹介します。
売上代金から仕入や費用の支出を引くと儲けがでます。
7月の利益は742,400もあったのに、8月はだいぶ下がって184,000しか利益が出ませんでした。

次に、利益が減った理由として考えられる例を紹介します。
1つ目は、8月のお盆休みが喫茶ABCは5日、キッズベーカリーは3日あったということ。
以前、BtoBという言葉を学習しましたが、相手の会社やお店が休んでしまったら、こちらも売上が減るということがあります。
これがBtoBの1つのポイントです。

2つ目は、売上が下がったのに、ムダな仕入が増えていたということ。
これはりょうたくんが分析していたことですね。

3つ目は、8月にエアコンと配達用の自動車が故障して、エアコンの買い換えと自動車の修理に20万円近くのお金がかかってしまったことです。

このように、2か月分の月次試算表を比べるだけでも、いろいろなことがわかったり、いろいろな理由が推測できたりするということがわかってもらえたかと思います。
「お店の通信簿」という意味も少しわかってもらえたと思います。
商売をするうえで、結果を毎月分析することは本当に大事なことなのです。
売上が下がったり、利益が下がったりした理由を考えて、対策を立てます。
夏に故障が多いならば、故障しないように大事に使うとか、いろいろなことを考えます。
いくらお客さんに喜んでもらっていても、ムダな仕入をしていたり、必要以上にお金をたくさん使っていたりしたら、お店が閉店してしまって、ケイイチくんのケーキのファンであるお客さんも困ってしまいます。
お客さんのためと、ケイイチくん自身の生活のためにも、商売を続けるための分析は大事なのですね。

進行:先生、レッスン44のまとめをお願いします。

柴山:1番目、合計残高試算表を分析するポイントは、①売上 ②現金 ③儲け(利益) ④大きな変動、に注目するということです。
2番目、8月の儲け(利益)は184,400シバでした。
ちなみに7月は742,400でしたので、ずいぶん下がりましたね。
3番目、儲けが減った原因として考えることは、①お盆休みがあった ②仕入とその他の費用が多かったということです。

進行:8月の利益が下がったのは、ケーキの品揃えも悪かったのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

もかさん:夏はさっぱりしたものが良いので、ケーキはあまり食べないですね。

柴山:ケーキの他にはどういうものが良いですか?

もかさん:ゼリーも良いですが、私はところてんが好きです。
ちょっと和食を入れて(笑)

りょうたくん:アイスケーキが良いです。

進行:このように、試算表からいろいろな意見を交えていくというのも大事になるのですね。

柴山:いろいろな分析をすることによって、少しずつ商売のやり方を変えていって、1年後にはビジネスが大きくなるということもあるのです。
日々改善ですね。

進行:柴山先生、明日の内容を教えてください。

柴山:明日は第9週のまとめです。
日々の取引内容がひと目でわかる月次試算表、あるいは合計残高試算表というものを学んできましたが、そのなかの大事なポイントについておさらいしたいと思います。

PREV
第9週③ キッズベーカリーの試算表は?
NEXT
会社員が育児の合間のコマ切れ時間を活用して見事1級合格!第137回日商簿記検定1級合格体験記(R.I.様)