西武グループ、持ち株会社による再編を模索

8月10日(夕刊)1面と、8月11日(朝刊)3面は、西武グループの経営再建に関する興味深いトピックが載せられています。
西武鉄道、コクド、プリンスホテルの3社合併という手段を断念し、「コクド+プリンスホテル」と西武鉄道の上に持ち株会社を設立する、という仕組みを発表しました。

ご存知のとおり、西武鉄道は、有価証券報告書という公表書類で虚偽記載を行ったことから、上場廃止となっています。
従来、西武グループの主力銀行(みずほ)の意図としては、西武グループの経営再建に際して、債務超過であるコクドとプリンスホテル、そして今なお財務体質の健全な西武鉄道の3社の合併により、コクド向け債権の格付けを上げ、貸倒引当金の積み増しを回避したい、という考えがある、とされています。

上記[1]の事例でいくと、甲さんと丙さんをひとつの家族にして、丙さん向けの不良債権50万円を、優良債権の分類に変える、といった感じでしょうか。
…かなり強引なたとえですみません。でも、的は得ていると思います。
      
        71.3%
  「コクド」→→→→→→→→「西武鉄道」←一般株主(コクド以外)
    ↓
  「プリンスホテル」

●従来のプラン…上記3社を合併し、コクドの不良債権を、優良債権化。
●新プラン…コクドと西武鉄道を別個に存続させ、その上に連結グループの親会社として、持ち株会社を設立。

コクドという会社が、「西武鉄道+コクド」となれば、西武鉄道の財務健全性と相殺されて、債務者としてのランクは上がるので、元の銀行としてはハッピーとなるはずでした。
しかし、西武鉄道の株を従来から持っている一般株主は、面白くありません。

なぜなら、コクドとひとつの会社になると、西武鉄道単独のときよりも、当然、財務体質が悪くなり、企業価値が低くなるからです。
そのような、一般株主の利益を害する合併に反対する人たちの批判をかわす目的もあって、合併による完全一体化の再編ではなく、持ち株会社による連結支配関係という、間接的な手段で妥協した、という見方もできそうです。
結局、コクド自体も存続しますから、債権者である銀行も、コクド向けの貸付債権の評価は、上記[1]の丙さんのように、厳しいものになるでしょう。
いずれにせよ、今回の再編案でも、企業編成の技術的な話が主で、西武グループの収益改善に関するシナリオが見えないままなので、先行き不透明感はぬぐえませんね。
不良債権(親会社)の債権者と、優良な子会社の一般株主の利害が対立するという構図が、見て取れます。
貸倒引当金に対する理解、持ち株会社や合併に対する理解を深める上で、好材料と思い、取り上げました。

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