さいきん、ちょっと注目を浴び始めている会計用語に、「無形資産」というのがあります。
これは、インタンジブルズとも呼ばれています。

定義としては、下記が参考になります。

「ブランド、特許、コンテンツ、研究開発、従業員・経営者の能力などキャッシュフローを生み出す無体または無形の経営資源」(ビジネスアカウンティング 広瀬善州著 東洋経済新報社P75)

バランスシートと株価の関係という視点で見れば、「会計上のバランスシートでは表現できないが、 株式市場では株価総額として評価されている部分との差額」と解釈すると、わかりやすいです。

(例)A社のバランスシート
         B/S    (億円)
 ―――――――――――――――――――
 現金預金  100|流動負債  180
 他の流動資産200|固定負債   70
 固定資産  300|純資産   350 ←ブックバリュー
       ―――|      ―――  (Book Value)
 資産合計  600|負債純資産 600
       ===       ===

上記は、企業の現金預金や、設備などを取得したときの(支出ベースの)評価額を基礎としたバランスシートです。
設備の評価にしても、毎年度末の時価を鑑定士などにいちいち鑑定評価してもらうのも煩雑ですし、もっというなら、鑑定士の判断によって、時価もいろいろと解釈の余地があり、どうも客観性の点で実務上、難しい面があります。

それよりも、その資産を購入したときの支出額を領収書などの証拠書類で決定し、それをベースに評価した方が、確実な評価ができるよね、という趣旨で、資産を取得時の支出(原価)ベースで評価するのが、(有価証券などを除いた)資産評価の原則となっているのです。

そして、この元がベースで評価した資産から、流動負債と固定負債を控除した残額が、会計帳簿に記載されている株主の取り分(ここでは350億円)ということになります。

この、会計帳簿に記載されている純資産350億円を、ブックバリュー(簿価純資産)ともいいます。

簿価とは、「帳簿価額」の略で、「帳簿上に記載されている評価額(=金額)」という意味ですね。

もちろん、バランスシートの左側、総資産600億円は、原価ベースです(=時価ベースの含み益は入っていない)。

いっぽう、固定資産を原価ベースで評価している以上、企業内の自助努力でこつこつと蓄積した「ブランド、知名度、
歴史、得意先の多さ、特殊技術」などは、お金を払って外部から購入したものでもない限りは、まったくバランスシートに載ってきません。

しかし、さいきんの企業価値(将来のキャッシュを生む力)を考えるやり方としては、「目に見えないブランドとか信用力だって、企業の価値(バリュー)を決定付ける重要な要因なのだから、この見えない価値もブックバリューに乗せて
評価しようよ!」という考えも強くなっています。

そこで、A社のブランド等の見えない価値(将来のキャッシュを産むブランド等の無形価値)を、150億円と仮に予測し、これをもとにA社の株を売買するとしたら、A社の株式時価総額(A社の株を全部買い占めて、完全支配するために必要な金額)は、次のようになりますね。

(例)A社のバランスシートと株式時価総額の関係
         B/S    (億円)
 ―――――――――――――――――――
 現金預金  100|流動負債  180
 他の流動資産200|固定負債   70
 固定資産  300|純資産   350 ←ブックバリュー(1)
 ・・・・・・・・・|・・・・・・・・・   +
+無形資産 +150|     +150 ←無形資産部分 (2)
 ―――――――――――――――――――   ↓
                       ↓
          ・―――――――――・  ↓
          |株価       |  ↓
          | ×    500|←株価総額
          |発行株数     |(M&A必要資金)
          ・―――――――――・

このように、 簿価純資産350+無形資産150=株価総額500のような関係になります。

つまり、無形資産(インタンジブルズ)は、「株式市場で評価されている企業の将来性も含めた値段」から、「会計帳簿上の簿価純資産」を差し引いた、「バランスシートに載らない無形の価値」である、ということがわかれば、OKなのですね。

ちなみに、感覚的ですが、上場企業の標準的なインタンジブルズ(無形資産)は、だいたいブックバリュー(簿価純資産)と同じくらいの額なのが一般です。

つまり、現在の会計制度では、株式市場で評価されるような、「企業の将来性を含めた企業価値の半分くらい」しか、バランスシートで評価できていない、ということの証左となりますね。

そういえば、PBR(株価純資産倍率)は、「株価÷1株あたり簿価純資産」です。

ここで、
「インタンジブルズ(1)+簿価純資産(1)」=株式時価総額(2)を簿価純資産(1)で割った指標(株式時価総額÷簿価純資産)がPBRであり、

その標準的な数値「株式時価総額(2)÷簿価純資産(1)」が2倍程度だ、

ということも、ほぼ上記のインタンジブルズと簿価(ブックバリュー)がだいたい同額に近いことと、同じような意味だと言えそうです。

(参考)上記のA社のインタンジブルズ比率(%)
     …(簿価純資産÷株価総額)
(350億円÷500億円)×100=75%

※50%以下だと、無形資産(インタンジブル)をたくさん抱えている、見えない資産の潤沢な企業といえます。

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