職金は、「従業員の退職を事由として」支給される金銭です。
退職金は、民間企業の場合、もともと法律で支給を義務付けられているわけではありません。
就業規則や労働協約などの定めがある場合に、支給義務が発生します。
だから、退職金を支払う会社と支払わない会社があります。
ところで、なぜ、企業は一時的な負担が増大する退職金制度を採用するかというと、

●労働力の確保
●労働力の定着
●帰属意識の高揚

などがあげられますね。
特に、財務基盤が脆弱な中小企業にあっては、「退職金の負担は、かなり厳しい」というのが、経営者の本音です。

…でも、役員が辞めるときなどは、○○千万円とか、ときには億円単位で景気よく支給されるのですが…
このあたりは、オーナー企業の一側面ですね。

ちなみに、従業員への「雇用関係に基づく退職給付」と、役員への「経営委託関係に基づく役員退職慰労金」は、性質がまったく違います。
役員退職慰労金は、まさに「慰労金」であって、オーナー側が自分で決めるのですから、お手盛り可能なので、税務上も、支給額については目を光らせます。
法的性質としては、従業員への退職金と役員への退職「慰労」金は、異なります。

しかし、「会社から、一時的な退職金負担が出る」という、財務的な影響という意味では、どちらも一緒ですよね。
ちなみに、中小企業退職金共済制度(中退金)や適格退職年金(適年;後年消滅)や厚生年金基金などのように、社外積立をしている部分を除いては、自社で負担しますので、理論的には、「将来の退職金として支給が見込まれる額」を、「退職給付引当金」・「役員退職慰労引当金」として、負債(借金などの返済義務を表す区分)に金額表示しなければなりません。

(例1)A社の、決算前のバランスシート上は、
    借入金2000万円、資本金1000万円、
    利益剰余金4000万円があった。
           B/S-1
  ―――――――――――――――――――――――
  諸 資 産  7000|借 入 金  2000
             |
             |
             |・・・・・・・・・・・
             |資 本 金  1000
             |利益剰余金  4000
  ―――――――――――|―――――――――――
  合   計  7000|合   計  7000
  =======================

(例2)今期になって、決算の過程で、従業員の退職金1500万円
    と役員退職慰労金1500万円につき、支払い義務が
    簿外(「帳簿=バランスシート」に非計上)だったことが
    判明した。よって、適正に負債を計上することにした。
           B/S-2
  ―――――――――――――――――――――――
  諸 資 産  7000|借 入 金  2000
             |退職給付引当金1500←・
             |役員退職引当金1500←・
             |・・・・・・・・・・・ ↑
             |資 本 金  1000 ↑
             |利益剰余金  1000→・
  ―――――――――――|―――――――――――
  合   計  7000|合   計  7000
  =======================

このように、退職金の手当てをしようと思った場合、「○○引当金」のような名称で、負債の区分に、将来の支給見込み額を表示すればよいのです。
そして、事後、やはりバランスシートの左側合計と右側合計はイコールの関係を維持しなければならないので、利益剰余金の額が4000万円から1000万円まで取り崩され、その減少額3000万円が、退職金の引当金に振り替えられている、ということになるわけです。

「退職金の支給見込み額(負債)は、利益を取り崩して 事前に設定しておく」

これが、会計上の必要処理です。
しかし、残念ながら、現在の税法では、これら退職金の引き当て額で利益が減っても、その額を費用として認めてくれないので、法人税などの計算上、節税にならないことから、中小企業では、あまり積極的に退職金の引当金を設定したがらない、という現状があります。

したがって、「中小企業の決算書で、バランスシートの右側の 退職金関係の引当金がゼロか非常に少ないな」
と感じた場合は、従業員の人数とか、退職金の負担予想額を加味して、バランスシートを読み替えないと、自己資本(純資産)を過大評価してしまう危険があるので、注意しましょう。
以上、退職金の財源にかかわる、「引当金」のお話でした。

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