さて、今回、大阪ガスを取り上げたのは、大手ガス3社のうち、唯一業績アップの予測がなされている、というだけでなく、その生存領域におけるシビアな将来予測が、中期経営計画に如実に現われており、非常にビジネススキルアップに役立つと思えたからなのです。

(資料)平成18年3月期の業績予測 

  会社名  売上高予想(年間)  経常利益予想(年間) 
  東京ガス  前期比5%アップ   前期比25%ダウン
        (1兆2480億円)     (990億円)
  東邦ガス  前期比5%アップ   前期比16%ダウン
         (3550億円)     (200億円)
  大阪ガス  前期比3%アップ   前期比3%アップ
        (1兆0050億円)     (1000億円)

この理由として、日経新聞の記事によりますと、

「東京ガスと東邦ガスは、値引きした」

「大阪ガスは値引きせず、M&A戦略をとりいれ、収益源が増えた」

というポイントが指摘されています。

で、これ自体は、そのとおりです。

そして、業績予想の各社の実態面にも、反映しており、説得力があります。
…と、ここまでは、一般的な分析の域です。

たいていの会計の専門家もこの水準まで現状を把握しておけば、まずまず、という感じでしょうか。

もう一歩、深読みしましょう。

実は、ここからが財務分析の本当に面白いところでして、

「ある財務比率←値下げせず、M&Aで多様な収益源の確保」

までで終わっては、標準レベル

「ある財務比率←値下げせず、M&Aで多様な収益源の確保←なぜ?」
                            ―――
                             ↑
                             ↑
                            ここ、
                            ポイントです

なぜ、多様な収益源の確保が必要なのか、なぜ、ねさげしないのか。

そこを推理するのが、本当の財務分析の醍醐味です。

たとえば、M&Aによる事業多角化を目指す背景は、大阪ガスのホームページを見ないと分かりません。

だから、
「本気で財務分析しようと思ったら、その会社のサイト、めっちゃチェックせんかい!」
…ということになります。

すると、
「大阪ガスは、将来も天然ガスを中核とするエネルギー会社であり、引き続き、都市ガス事業が収益の中心であります。一方で、近畿圏の経済成長率の鈍化、人口の減少トレンド、競合他社との競争を考えると、エリア内都市ガス事業のみを事業の中核とすることは将来の継続的な成長発展の可能性を狭めてしまうリスクがあります。今後とも大阪ガスが持続的な成長を実現するためには、都市ガス事業の競争力を引き続き強化していくとともに、電力事業の本格展開やエネルギー事業の広域展開など、新たに中核となる事業を強化してマルチエネルギー事業者へと発展していくことと、アドバンテージある非エネルギービジネスを拡大していくことが急務と考えております。
…以下略(大阪ガスホームページ Design 2008より引用)」

私は、この中でも、人口の減少トレンド、競合他社(おそらく、電気・石油などの周辺エネルギー分野も視野に入っているのでは?)との競争、
という観点から見ても、「マルチエネルギー事業者」としての生存決定をしているように思えました。

既存のモデルから脱却しようとする強い意志を感じます。

力強いですね。

だから、M&Aにしても、実は、北海の石油・ガス開発事業への進出によりエネルギー供給源を新たに確保したり、米国IPP(卸発電事業)
を買収してマルチエネルギー化を進めたり、上流への垂直的統合や周辺事業への範囲の経済性追求に余念がありません。

そのために2005年に入ってから、2度にわたり社債を発行し、400億円の資金を調達しています。かなり本気なのでしょう。

これが2年後、3年後、どのような結果をもたらすか、大いに興味が沸きませんか?

そのときの指針は、「粗利は増えたか?」「営業利益は増えたか?」です。

会計数値を上手に使えば、その会社の経営戦略の後日の姿が、非常に分かりやすいですよね。

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