柴山政行氏(以下、柴山):いくら儲けが出たのかだけではなく、キッズベーカリーにあるすべて財産の残高がどれくらいあるのかを確認しましょう。
そうすると、意外な事実がわかるかもしれませんね。
進行:今回ももかさん、りょうたくんの2人と一緒に勉強していきます。
決算日の後に行う総まとめとなる、確定申告書の作成に向けて頑張っているケイイチくんですが、開店1年目に儲けた額も確定して、ようやくゴールが見えてきました。
税金の計算までもうすぐなのですが、その前に、もう1つだけ集計表を作ります。
柴山:昨日勉強した損益計算書では、収益から費用を引いて利益を出しました。
どれぐらい儲かったかということはわかったのですが、金・物・権利といった、お店の大事な財産は損益計算書には出てきませんでした。
今回は、キッズベーカリーの、現時点でどんな財産がどのくらいあるのかがひと目でわかる、財産の一覧表を作って、お店の財産の管理を手伝ってあげましょう。
ということで、今回ももかさんとりょうたくんに手伝ってもらおうかなと思っています。
進行:では、試算表のなかで、資産と負債はどこにあるのかを答えていただきます。
柴山:りょうたくん、資産はどこにありますか?
りょうたくん(以下、りょうたくん):現金、普通預金、売掛金、車両運搬具、備品です。
柴山:金・物・権利のうち、現金と普通預金は「金」、売掛金は「権利」、車両運搬具や備品は「物」ということで、これらを資産といいますね。
では、この試算表のなかで負債はどれですか?
もかさん(以下、もかさん):買掛金と資本金ですか?
柴山:資本金は将来の返済義務ってありましたっけ?
もかさん:そうでしたね……では、買掛金だけです。
柴山:そうですね。
負債は、将来誰かに返すお金なので買掛金です。
その他にも負債がありましたけど何でしたか?
もかさん:借入金です。
柴山:そうです。
借入金も負債ですが、ケイイチくんは既に返済していますので、残高は無いということです。
資本金は負債ではありませんが、財産の1つになります。
では、資産・負債・資本の3つを切り離して1つの表にまとめるとどうなるかというと……やっぱり一番下の合計が左右で合いません。
左右の差額を計算すると、2,917,883シバになります。
2人とも、この数字はどこかで見た記憶ありませんか?
もかさん:あ、わかりました。
柴山:何でしょう?
もかさん:利益です。
柴山:そのとおりです。
これは、昨日勉強した、損益計算書で出した利益の金額と同じになります。
つまり、最初に言っていた「意外な事実」とは、どのぐらい財産があるのかという、この表からも利益がわかるということなのです。
そして、この表にも正式な名前があります。
「貸借対照表」といって、財産の一覧を見たいときに便利な表です。
ここで売掛金を見て欲しいのですが、売掛金は喫茶ABCに対してお金を貸したようなものですよね。
逆に、買掛金は○○屋からお金を借りているようなものです。
このように、むかしむかしの商売の記録というのは、貸し借りから始まっているのです。
昔はこのように貸し借りだけを記録していたこともあったので「貸借」対照表という名前になっているのです。
深い意味は無いので「左右対照表」でも良いのですが、そういうしきたりだと思って、しっかり覚えてください。
進行:財産がどのくらいあるのかを表す貸借対照表から利益の金額が出てくるというのは驚きでした。
ところで、どこからどちらに切り出すのかというのが混乱しそうなのですが……
柴山:それでは、ここでもう1度、試算表からまとめて一気に確認をしてみるとわかりやすくなります。
まずは、修正後の残高試算表から見ていきます。
この表の上半分、現金から資本金までの負債・資本の部分を切り取ると、貸借対照表になります。
そして、試算表の下半分を抜き出すと損益計算書になるのです。
ということは、試算表の上半分と下半分を漏れなく2つに割って抜き出すと、貸借対照表と損益計算書になるのです。
そして、貸借対照表と損益計算書では、それぞれ逆の場所に差額が出てきます。
進行:まずは、日々書き溜めた日計表から月次試算表を作って、さらに1年分をまとめた月次試算表があって、減価償却費を出して、修正をして、損益計算書と貸借対照表を作ったということですね。
たくさん積み上げてきたという感じですね。
もかさん:ケイイチくん1人では大変だろうなと思いますね。
進行:今までの内容を見てきて、りょうたくんはどうでしたか?
りょうたくん:1つずつ計算や表を積み上げていくので、ピラミッドみたいですね。
進行:すごいですよね、これで確定申告もばっちりですね。
柴山:でも佐竹さん、感動してばかりもいられないのです。
総まとめの仕上げがもう少し残っているのです。
それは、佐竹さんが心中穏やかではいられない、税金の話です。
税金はなかなか好きになれない部分はありますが、国民の義務なので、計算をしてみます。
レッスン51のときに、ケイイチくんは税務署へ行って税金を払いましたが、払った税金の額を「納税額」といいます。
納税額は利益に一定の税率をかけて出すことが多いのです。
日本の場合、稼いだ金額が大きくなるほど、税率も上がってきます。
これを「累進課税」といいます。
今回は、仮に税率を20パーセントとします。
これは、今の日本の税金の仕組みに近い数字です。
利益に20パーセントをかけると納税額が出ますが、では、キッズベーカリーの今年の利益はいくらだったでしょうか?
りょうたくん:2,917,883シバです。
柴山:そうですね。
それに0.2をかけるのですが、2人とも計算をしてみてください。
もかさん:583,576.6です。
柴山:小数点以下は切り捨てにしておきましょう。
583,576シバという金額を税金として払うことになるのですが、どう思いますか?
りょうたくん:金額が大きすぎて、こんなに払っているのかと思いました。
柴山:これだけ払っていると、政治家の人たちに「無駄遣いしないでね」と言いたくなりますよね。
みんなが一生懸命働いて納めた税金ですから、無駄なく、きちんと使われているのかをニュースなどを見てチェックしなければなりませんし、大人はきちんと選挙に参加しましょうということが言えますね。
決算をして税金を納め終わる頃には、新しい年度が始まっています。
こうして、キッズベーカリーの商売はずっと続いていくということなのです。
柴山:1番目、試算表から生まれる2つの通信簿の名前は「貸借対照表」と「損益計算書」です。
2番目、貸借対照表からは、どんな財産がいくらあるかがわかり、損益計算書からは、いくら利益がでたのかがわかります。
3番目、利益が出たら、最後に、国や地方に支払う税金の額を計算して求めます。
進行:1年間商売をしてきて、2つの通信簿を出すという流れがわかりましたが、今回はどうでしたか?
もかさん:あれだけ税金を払っているのに、まだ国の税金の収入が不足しているというに驚いています。
進行:りょうたくんはどう思いましたか?
りょうたくん:税金ってあんなにたくさんもっていかれるのですね。
進行:対策も色々考えていかなければいけないのですよね、先生。
柴山:だから、税金を払うために、あるいは払ってもお金が無くならないように、資金繰りといって、資金の管理をすることが必要なのですね。
進行:柴山先生、明日の内容を教えてください。
柴山:明日は「いよいよ最後だ!第11週のまとめ!」です。
今週は、キッズベーカリー開店1年目の通信簿作りをやってきました。
そして、税金を納めることを勉強してきましたが、改めて大事なポイントをおさらいしたいと思います。
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