簿記2級から1級につなげよう!~委託販売~

がんばろう日商簿記1級合格、今回は「2級から1級につなげよう、委託販売」というテーマでお話をしたいと思います。

みなさんが苦手になりやすい論点の1つが特殊商品売買で、その筆頭は割賦販売なのですが、それ以外にも未着品販売、試用販売、委託販売という取引があります。

特に委託販売については論点が多く、総合問題になると、原価率の算定などで苦労される方が多いです。

今回は特殊商品売買の1つで、簿記2級の仕訳の知識から簿記1級の知識に繋がる、委託販売の話をします。
委託販売などの特殊商品売買は、簿記2級レベルでは、第一問の仕訳対策として勉強することが多いですが、その仕訳がその後どのように集計するのかということについては基本的に学習しません。

その部分で簿記1級と簿記2級に大きな違いがあるので、これから簿記1級を勉強される方や、簿記2級の委託販売について理解を深めたい方はご覧ください。

まず、簿記2級レベルの仕訳をおさらいします。
たとえば、4/1に商品10個(@1,000円)を掛けで仕入れました。
仕訳は「借方 仕入10,000」「貸方 買掛金10,000」となります。
4/2に商品3個(@1,000円)を受託者に積送しました。
今回は発送諸掛はありません。
手許の商品の仕入を取り消して、積送品という資産勘定が増えます。
仕訳は「借方 積送品3,000」「貸方 仕入3,000」です。
本試験レベルであれば、これに加えて「発送にあたって運賃500円を現金で払った」などという取引が増えることがあります。

その場合は「借方 積送品3,500」「貸方 仕入3,000 現金500」となります。
これが日商簿記検定2級の本試験レベルですが、今回は簡単に説明しています。
4/3に商品4個を1個1,600円で掛け売りしました。
1,600円×4個で6,400円なので、「借方 売掛金6,400」「貸方 売上6,400」となります。
そうすると、この時点で倉庫にある商品は何個になるでしょうか。
10個仕入れた商品のうち、3個を積送して、さらに4個を売ったので、3個残っています。
倉庫に残っている手許商品の期末棚卸高は1,000円×3個で3,000円になります。
そして4/4には、受託者へ4/2に積送した3個の積送品のうち2個の売上報告がありました。
今回は受託者立替諸掛がないとします。
売価が1個1,600円とするならば、2個で3,600円なので、貸方は「積送品売上」として、一般の売上とは区別します。

仕訳は「借方 売掛金3,200」「貸方 積送品売上3,200」となります。
そして、積送品3,000のうち2,000を減らして、仕入勘定へ振り替えます(売上原価の増加)ので、「借方 仕入2,000」「貸方 積送品2,000」と仕訳をします。
積送品売上を計上する都度、積送品勘定から仕入勘定へ振り替えることを、日商検定では「その都度法」といいます。

売る度に積送品が減るので、決算整理前残高試算表では1,000の残高になります。
これは期末の積送品の在庫といえます。

ここから簿記1級レベルの話になります。

積送品、売上、積送品売上、買掛金、売掛金の各勘定の集計まではご自身で練習していただくとして、問題は仕入勘定です。

決算整理前残高試算表では仕入勘定の残高が9,000となっているのですが、どういう計算をして9,000になったのかということを、仕訳で見ていきます。
まず、4/1には借方仕入10,000(10個)、4/2に貸方3,000で、差し引き7,000です。
そこから、4/4に積送品の売上原価2,000を借方に振り替えました。
10,000-3,000で7,000、7,000+2,000で9,000になっています。
したがって、決算整理前残高試算表の仕入勘定は9,000になりますが、この9,000はただの差額で意味がないのです。

これが簿記1級レベルです。
簿記3級や簿記2級で勉強したときは、決算整理前残高試算表の仕入勘定は当期に仕入れた分だと漠然と教わっているのですが、特殊商品売買がある場合、積送品に振り替えるといったん仕入勘定が減りますが、売上があると再度仕入勘定へ振り替えるので、決算整理前残高試算表の仕入勘定9,000という数字には意味がないのです。
当期仕入高は10,000なので、当期仕入高ですらないので、9,000自体には意味がないのです。

ここを日商簿記検定1級レベルでは意識してください。
決算整理前残高試算表の仕入勘定の残高には意味がないのです。
決算整理仕訳を行うことによって、仕訳勘定に意味を持たせます。
仕入勘定に注目してもう一度確認します。

4/1に「借方 仕入10,000」「貸方 買掛金10,000」。
4/2に「借方 積送品3,000」「貸方 仕入3,000」と振り替えています。
この段階での仕入勘定は差し引き7,000です。
4/3に売上げているので「借方 売掛金6,400」「貸方 売上6,400」。
4/4には積送品の売上があったので「借方 売掛金3,200」「貸方 積送品売上3,200」と仕訳すると同時に、その都度法で積送品の原価を仕入勘定へ振り替えて「借方 仕入2,000」「貸方 積送品2,000」とします。

そうすると、仕入勘定の中に2,000という「異物」が入ることになります。
積送売上の都度、積送品原価を仕入勘定に振り替えている場合は、決算整理前残高試算表の仕入勘定は、積送品の売上原価という「異物」が入っているので、この数字に意味がないのです。

簿記2級では委託品販売を考慮した決算整理前試算表の仕入勘定が問われることはありません。

仕入勘定の意味を考えるのは1級なのです。

この違いを覚えておいてください。

簿記1級では、その都度法といって、売上の都度「借方 仕入」「貸方 積送品」という仕訳をすることを知っておくだけで、簿記1級レベルの委託販売の勉強が違ってきます。
簿記1級では決算整理前残高試算表の仕入勘定の金額は当期仕入れ高ではないということを意識しましょう。

柴山式簿記1級を受講されている方は、柴山式のテキストの該当部分をよく見てください。
柴山式総勘定元帳は、特殊商品売買の全体像を掴むときにも威力を発揮します。
よかったら参考にしてください。

私はいつもあなたの簿記1級合格を一生懸命応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

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