起業からM&Aまでの成長プロセスと、個別決算・連結決算の関係

今回の「頑張ろう日商簿記1級合格」は、起業からM&Aの成長プロセスと個別決算・連結決算の関係についてお話ししたいと思います。

まずステップ1ですが、起業をしてA社という会社を興します。
最初のうちは自宅などを事務所(本店)として、小さく始めることが多いでしょう。

このときの会計は、仕訳帳・元帳という会計帳簿と決算書があります。
仕訳帳と総勘定元帳は青色申告をする上で必要な帳簿です。

まずは自分の家計簿から会計帳簿を独立させるところからスタートします。
個人の会計からビジネス用の家計簿を作ります。

これが複式簿記の会計帳簿です。
ここから始めて、ビジネスが拡大してきたら本店だけでは市場にニーズに応えられなくなります。

そこで近隣に支店を出します。
例えば埼玉県の大宮や千葉県の市川あたりに2つ支店を出したとします。
ある程度規模が大きくなると、それぞれの支店にも会計帳簿を持たせます。

小さいうちは本店で帳簿を持っていて、大宮支店や市川支店からメールなどでその日の会計データを送ってもらって、本店で経理担当者がすべてのデータを記帳するという方法があります。

これを本店集中会計制度といって、日商検定3級の範囲です。
簿記2級になってくると、支店独自に帳簿を持たせる独立会計制度が出てきます。

支店の利益や業績は各支店の支店長に責任を負わせて管理させます。
その場合、各支店は損益計算書と貸借対照表を独自に作ります。

だから、各支店にあたかも独立した会社のごとく仕訳帳・元帳と決算書を持たせます。
これを支店独立会計制度といいます。

これについては、昔は簿記2級で決算までやらせたのですが、今は簿記1級で本支店会計の決算手続を学習するようになりました。

大宮支店と市川支店はそれぞれ決算書を作っています。
そして、本店の決算書と合わせて最終的に本支店合併B/S・P/Lを作ります。
細かく言うと残高試算表を合算するのです。

本店の決算整理後残高試算表と、大宮支店・市川支店それぞれの決算整理後残高試算表を合算して、合併整理というのを行って本支店合併貸借対照表・損益計算書を作ります。

決算整理後のデータを合算して、調整をして、本店勘定と支店勘定を相殺消去して本支店合併B/S・P/Lを作ります。

これがA社全体のB/S・P/Lですが、まずこれを出します。
ですから、本店独自のB/S・P/Lもあるし、大宮支店独自のB/S・P/Lもあるし、市川支店独自のB/S・P/Lもあるのです。

この3つの会計単位を合算してA社の本支店合併B/S・P/Lを作ります。
ここまでが個別決算の段階です。

次はA社の本支店合併B/S・P/Lをトップに持ってきます。
そして、今度はさらに会社を買収します。

自分からゼロから支店を出して地域に根付いて時間をかけて支店を育てるという方法もありますが、M&Aという方法もあります。

M&Aというのは、いわばビジネスを成長させる時間をお金で買うことです。
既に地域で持っている顧客リストや信用やノウハウを買い取るのです。
それが買収です。

このときにはいくつかやり方がありますが、今回は株式の取得を考えましょう。
昔は簿記2級で本支店会計をきちんとやってから簿記1級で連結を学習したのですが、今は簿記2級で本支店会計の決算をやらずに簿記1級でやります。

そして、連結が簿記2級の範囲になりました。
このあたりは若干歪みがありますが、今は本支店会計よりも連結のほうが大事なので、大事な連結会計を簿記2級でやろうという話です。

しかし、本支店会計をきちんと理解していないと連結も理解できないので、そのあたりは痛し痒しかなと個人的には思っています。

そういった歪みを調整するためにこの動画があると思ってください。
ビジネスを成長させる方法には色々ありますが、今はみなさん気が短いので、すぐにノウハウを買ってしまおうという発想になります。

ともあれ、M&Aというのは時間をお金で買うことです。
つまり、ゼロから始めて10年ぐらいかけて信用を培うという、その10年分の信用がある企業をお金で買ってしまうのです。

例えばX社とY社という会社を買って大きくなります。
こうやって大きくなっていって、将来的に上場するケースもあります。

このようにM&Aを効率的に使うのが現在の風潮でもあります。
ここでX社とY社を買いましたが、実はX社やY社にも支店があるかもしれません。

その場合、それぞれに本支店合併B/S・P/Lがあるはずです。
A社の本支店合併B/S・P/Lと、X社の本支店合併B/S・P/Lと、Y社の本支店合併B/S・P/Lを合算します。

そのあとは子会社株式とX社・Y社の純資産の項目を相殺消去します。
これは本支店会計でいうところの本店勘定と支店勘定の相殺消去に似ています。

連結会計というのは本支店会計の大規模版のようなものだとイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

そして、最後にはA社の連結B/S・P/Lを作ります。
スタートはA社単独の企業で、規模が大きくなると支店を出して、支店を出すと本支店合併B/S・P/Lを作ります(支店独立会計制度)。

そして、A社の本支店合併B/S・P/Lを作った上で、さらに同業他社のノウハウをお金で買います。
そのほうが会社の規模を大きくするには早いです。

買収をしてX社とY社を子会社にすると、X社の本支店合併B/S・P/LとY社の本支店合併B/S・P/Lを合算して、さらに大きなレベルでA社の連結財務諸表を作ります。

このステップを考えてみてください。
これによって、あなたが今勉強している簿記の会計単位がどこかなのか分かります。

個別・本支店・連結という3つのステップで意識していただけると、簿記や会計の勉強に興味が持てるのではないでしょうか。
ぜひ参考になさってください。

私はいつもあなたの日商簿記検定1級合格を心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

PREV
自分の考えを伝えたい時は、「説得」よりも「質問」が効果的です
NEXT
難しい問題を解決する大きな秘訣は、人としての影響力!