手形の裏書・割引(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第2回)

はじめに

今回は、手形を使った資金調達の方法、手形の裏書と手形の割引について学んでいきましょう。

手形を使った資金到達の方法について、簿記検定などで取り上げられる話を見ていきましょう。手形取引は将来的にはだんだんと数が減って姿を消していくという気がします。

手形取引の変遷

30年前から手形レスと言い始めていて、まだ私が20代のときに手形はいっぱいあったのです。
1億円単位の手形を見ると手が震えます。手形は現物を伴うので、無くしたり盗まれたり、リスクを伴います。

手形の現物は危険があるので、いまは現物を使わない電子取引がメインになっていますので、いろいろな意味で手形は無くなっていく方向です。

そうは言いながら、いまだに簿記検定などでは取り上げられますし、会計学的には大事なところもありますので、基礎知識として知っておいていただければと思います。

手形を使った資金調達の方法につきまして、手形借入が3級に出ます。
借り入れの金銭消費貸借契約書を作るのですが、そういう契約書でお金を借りるケースがあります。
証書借入というのですが、その中に約束手形を発行して借りるケースもあります。
昔私が監査したときも、手形借入について手形の控えを見ながら実務をしたことがあります。

手形用紙を契約書の代わりに発行してお金を借りることもあります。今は手形レスとさけばれてすごい時間が経っていますから、あまり手形を使わないのではないかという気がしますが、一応こういうのもあります。

借方現金預金、貸方手形借入金という言葉を使った会計処理を受験簿記上、知っておいてください。

手形の裏書と裏書譲渡

それから裏書譲渡です。これも僕が若い頃はたくさんあって、裏書譲渡の現物を結構見たのですが、いまの若い人はあまり見ないかもしれません。

手形取引が全盛だった昭和の時代や平成初期の頃は、結構手形割引がありました。いろんな意味でファクタリングなどがありました。裏書譲渡を見ていきましょう。

手形の裏面に名前を書いたら個人でもできるのです。譲渡の場合は連続が大事なのですが、手形の裏書譲渡といって支払いに使います。資金調達の一つです。
昭和の時代は特に、手形は便利だったのです。

割引きというのは、裏書の銀行に渡す版のようなものです。裏書は仕入れ取引などに使うのですが、これは銀行へ持っていって、利息相当を少し引かれます。

手形割引のリスクとメリット

手形割引は昔は代表的な資金調達方法ですが、やはり怖いのです。
不渡りが連鎖的に起きるので怖い部分があります。現実問題あまり使わないほうがいいです。

背に腹は代えられないので結構割引きを使っている会社はありました。銀行に手形を譲渡して早く現金化するのは正当な取引で、中には実態を伴わない手形を発行したりする良くない取引がありました。

融通手形があったけれども今はどうでしょうか。会計の世界では死語になりそうです。
割引き、裏書、手形借入は今でも少し学んでおけばいいと思います。

手形の裏書からいきましょう。手形の裏書をする目的としては、約束手形を受け取ると支払期日まで資金化できません。手形は支払う人にとってラッキーなのです。

戦後の経済混乱期にかなり活躍したと思ってください。今みたいにインターネットなどなかったし、資金調達も今ほどスマートにできない。高度成長期、昭和30年とか僕が生まれるか生まれないかくらいのときは、まだ戦後の混乱期なので金融行政は今ほど発達していません。

今みたいに銀行の機能などは整備されていなかったわけです。銀行は3時になったら業務が終わるから、結構厳しいです。今みたいにネットバンキングでバンバン取引できません。

この頃の資金調達は不便だったので、手形はとても便利だったのです。 手形はそのまま支払いに使えますから換金しなくていいのです。大体2、3か月待ってもらえるのです。

半年待つケースもあります。半年待つのは台風手形という俗称がありました。
大体2か月満期、3か月満期です。支払いを少し遅らせる間に物を売ってお金に変えられますから、手形は便利だったのです。

昭和が終わって、役割を終えている手続きなので、どんどん減っていく取引になります。一時期日本の高度成長を支えた一つの資金調達手段は手形だと思います。

手形取引の会計処理

約束手形を受け取ると資金化できません。払うほうは満期という支払期日まで払わなくていいから楽だったのです。もらうほうは嫌なのです。

売掛金で1か月待たされて、さらに3か月足されますから、下手すると4か月かかるのです。長ければ長いほど不利になりますから、もらうほうは嫌なのです。

その間、お金ができませんから寝かすのかといったらそうもいきません。
手形の制度として、受け取り人も多少メリットがないとまずいでしょう。手形の裏面に署名等をすることにより、自分の支払いに使えるのです。
俗に回し手形とも言うこともあります。回し手形は試験には出ないと思います。

手形の書面は本当は印紙を貼るところなどもっと細かくいろいろありますが、約束手形という文言がないとまずいのです。法律があります。

ABC株式会社殿、これは宛名です。裏側にひっくり返すと、表記金額を○○さんへお支払いくださいと書いてあって、裏書をします。裏書をした相手を被裏書人と言います。

例えば、XYZ商事様にお金を払ってくださいと、どんどん手形が回ってくるのです。ABC株式会社はお金をもらえないのですが、XYZ商事から物を買って、この裏書して代わりにXYZ商事からお金をもらってくださいと支払いに使えるのです。これは便利です。

もちろん保証人の立場になるので、もし不渡りが起きたらお金は立て替えるのです。XYZ商事が困ってしまいます。連帯保証人の立場になります。

裏書譲渡とその仕訳

裏書譲渡の話です。手形の裏面に署名等をして譲渡します。借方買掛金、貸方受取手形マイナスです。よく支払手形とやってしまう人がいます。手形の支払いではありません。
受け取った手形を譲渡するので、貸方受取手形という権利が減ります。

裏書手形の仕訳問題をみましょう。
①商品を売上げ、額面200万円の得意先振出し約束手形を受け取りました。借方受取手形200万です。貸方売上200万。資産と収益です。

②手形の満期日前に、商品250万円を仕入れ、額面200万円の約束手形を裏面譲渡し、残額を翌月支払いの掛けとした。借方仕入250、200の受取手形を貸方に書きました。50は買掛金。借方仕入250、貸方受取手形200、権利の譲渡です。
そして買掛金という支払い義務、債務が発生しました。借方仕入250、貸方受取手形200、貸方買掛金50、このパターンをぜひ覚えておいていただければと思います。

手形割引の仕訳

次、割引にいきましょう。
銀行に手形を譲渡して現金化する。当座預金借方や、現金預金借方、貸方受取手形です。ただ満額はもらえません。銀行も商売ですから手数料を取られます。

金券ショップのようなものです。古い制度だと支払い割引料と言って利息のような感覚ですが、今は証券の売却ということで、手形売却損に統一されています。

私が初心者の頃は支払利息割引料と言って違う扱いだったのです。今は手形売却損に変わりましたので、手形の証書を売ったと、手形売却損が一般的です。
借方手形売却損、当座預金借方、少し安く入金します。貸方受取手形という権利の譲渡です。

仕訳です。同じく商品を200万円で売上げて、受取りの権利が手に入りました。次、銀行に満期日前に、200万円の約束手形を割引に付し、銀行から手数料3万円を差し引かれた残額が当座預金口座に入金された。

手形貸方200万円、当座預金に197万円しか資産はありません。差額は費用に落ちます。仕訳は、借方当座預金197、借方手形売却損3、貸方受取手形200となります。

額面の満額をもらうわけではないというのが割引手形です。裏に署名をして銀行に渡せばいいです。裏書の応用系と考えていただければいいでしょう。
ここまでがポピュラーな仕訳例ですので知っておいてください。

まとめ

今回のまとめです。
手形を使った資金調達の方法が3つあります。1つは手形借入で、借方現金、貸方手形借入金です。2つ目は裏書譲渡です。3つ目は割引きです。

銀行に持ち込んで手数料を引かれて、少し少ない金額が振り込まれます。差額は手形売却損と言います。2.裏書譲渡に関して、手形の裏面に署名等をして譲渡します。

借方買掛金や仕入です。貸方受取手形です。権利の譲渡です。

3.割引きは銀行に手形を譲渡して早く現金化します。借方当座預金など、借方手形売却損です。貸方受取手形という形を知っておいていただけばいいと思います。

手形を使った資金調達は伝統的に日本経済の発展に貢献した重要な取引です。
これからどんどん変化があり、手形取引の重要性は下がっていくかもしれませんが、日本経済をこれまで支えてきたということで知っておいてほしいのと、試験に出たときに、今申し上げたことぐらい知識を持っておくと対処しやすいと思いますので、練習問題等を繰り返してみてください。

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