今回は、負債の中でも「長期資金の調達」に役立つ社債について解説いたします。
社債とは、会社が資金調達のために発行する債券のことです。
参考までに、一般事業会社が発行する社債で、新株予約権がついていないものを普通社債SB(Straight Bond)といいます。
企業が長期的に資金調達を行う際に利用すると、信用力が高い場合には低い金利で資金を手に入れることができるので、大変便利な調達方法といえますね。
なお、社債の発行は、「100円につきいくらの払い込み」みたいに表現されます。
ここにいう100円のことを「額面(がくめん)」といいます。
これは、「将来、返済(償還)するときに払う100円に対して、現在、いくら払い込んでいただければよいですよ」という意味で、
◎額面100円に対し、同額で発行することを「平価発行」、
◎額面100円より低い金額で発行することを「割引発行」、
◎額面100円より高い金額で発行することを「打歩(うちぶ)発行」
といいます。
ちょっと、具体例で一緒に考えて見ましょう。
・発行価額 300億円
・年限 5年
・利率 1.67%
・払込金額 100円につき100円(平価発行)
・払込期日 平成19年6月20日
・償還期限 平成24年6月20日
・取得格付 日本格付研究所AA(ダブルAフラット)
●払込時(2007.6.20)のバランスシート
バランスシート (億円)
―――――――――――――――――――――――
(流動資産) |(流動負債)
現金預金 300|
: |
(固定資産) |(固定負債)
| 社 債 300
|
―――| ―――
計 300| 計 300
=== ===
この後、毎年300億円×1.67%=5.01億円の社債利息を支払うことになりますね。
ちなみに、上記の日本郵船のケースは、平価発行です。
・発行価額 300億円
・年限 5年
・利率 1.82%
・払込金額 100円につき99.94円(割引発行)
・応募者利回り 1.827%
・払込期日 平成19年1月29日
・償還期限 平成29年1月25日
・取得格付 日本格付研究所AAA
●払込時(2007.1.29)のバランスシート
バランスシート (億円)
―――――――――――――――――――――――
(流動資産) |(流動負債)
現金預金299.82|
: |
(固定資産) |(固定負債)
| 社 債299.82
|
―――| ―――
計 299.82| 計 299.82
=== ===
この後、毎年300億円×1.82%=5.46億円の社債利息を支払うことになりますね。
さて、ここで「応募者利回り1.827%」というのがあります。
利率(償還額300億円に対して約束された利払い率)が1.82%とありますから、若干、実質的な利回りが高くなっていますね。
ちなみに、実質的な利回りは、「金融収入の合計/投資額」です。
約束された表面上の利率(約定利率)と、実質利回りは異なるものですから、ご注意下さい。
九州電力さんの場合は、約定利率1.82%が、ちょっと世間で妥当とされている利率よりも低いとの印象があるのでしょう。
「この利率では、投資家が魅力を感じないかも」と思えば、額面よりもちょっとだけ割り引いて、安く発行することもありますよね。
つまり、割引発行は、金利の調整として行われるのが一般的なのです。
ご参考までに、ざっくりとですが、実質利回り1.827%の計算過程を推測してみましょう。
※九州電力の社債を買うことによる一年あたりのリターン推定
1.毎年の利息の受取額…300億円×1.82%=一年あたり5.46億円
2.割引発行による
1年あたりのお得額…300億円×(100-99.94)/100円
=0.18億円
0.18億円÷10年 =一年あたり0.018億円
3.一年あたりのリターン概算…5.46億円+0.018億円=5.478億円
4.社債購入者の投資額…300億円×(99.94/100)=299.82億円
5.実質利回りの概算…5.478億円÷299.82億円=1.8271%
以上より、実質利回りがほぼ1.827%に近いことがわかりましたね。
(※実際の計算はもっと精密だと思いますが、今回は、知りうる情報の範囲で、概算にて検証させていただきました。)
このように、割引発行するときには、社債を購入する応募者の利回りを引きあげる効果があるのだ、ということをしっておいて
いただけるとよいでしょう。
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