船井電機、追徴税額の会計基準変更で下方修正

4月27日の投資・財務面(17面)で、税金の会計処理に関する非常に興味深い話題が出ていたので、ご紹介します。

船井電機は、4月26日付けで業績の下方修正を発表しました。
※プレスリリース4.26
http://www.funai.jp/pressrelease/2007/topic_070426.html

そこで、税引き後の当期純利益につき、当初の予想額174億円から、▲36億円と、210億円もの大幅下方修正が公表されたのです。
その要因について、プレスリリースを拝見すると、欧州市場での液晶テレビ価格下落など、市場要因もあるのですが、なんといっても大きかったのは、「会計ルールの改正による税金コストの処理方法の変更」でした。

これは、毎年のように大きく変わる会計法令の変動リスクの一側面として、知っておきたい事柄です。
具体的には、以前に大阪国税局から更正通知を受けたタックスヘイブン対策税制適用案件で、合計191億円の
追徴課税が仮払法人税等(船井電機の決算書上は「長期仮払税金」)として、表示されていました。
これは、バランスシートに「未解決の資産項目」として表示しており、今後、この案件については、国税当局との審理の結果、会社側が勝訴する可能性を考え、費用として確定していないことから、将来返してもらえる可能性を信じて、資産計上しているものと想像できます。

※船井電機の2006.9.30中間連結B/Sの一部(概略)

           バランスシート    (億円)
     ―――――――――――――――――――――
               |
               |
     長期仮払税金 191|純資産   1973
               |    
                            
                            
             損益計算書          
       ――――――――――――――――     
       売 上 高        ×××     
         :           :      
                   ――――     
       税金等調整前当期純利益  ×××     
       法人税、住民税及び事業税 ▲54
                     :

ところで、公認会計士協会の方で、2007.3.8付けで監査・保証実務委員会報告63号というのを出しまして、それによると、追徴税額について、

「課税を不服としてその撤回を求め法的手段をとることを会社が予定している場合も想定されるが、その場合であっても、法的手段をとる会社の意思のみでは未納付額の不計上あるいは納付税額の仮払処理を行うことは適当ではない。」(委員会報告63号2.(1)4より抜粋))

このような扱いが、今般新設されたことにより、船井電機としても、監査法人と協議の結果、会計処理の再検討を迫られ、結果として赤字転落につながる業績下方修正の主因ともなってしまったわけです。

監査委員会報告、おそるべしです。

なんか、税務通達で、時としてバタバタさせられる納税者・税理士の関係にも似たイメージを想起させられます。
このように、国会を通過しないサブ法令みたいな変更で実務が影響を受ける、というケースは、あまり表面化しませんが、けっこうありがちです。

規則制定に関しての「適正手続」と「迅速・柔軟性」の綱引きですね。
これも立派な「経営リスク」の一つと思うのですが、いかがでしょうか。

ご参考までに、上記の状態で、もしも長期仮払税金が全部当期の費用となった場合、下記のような中間B/S、損益計算書が想像できますね。

           バランスシート    (億円)
     ―――――――――――――――――――――
               |
               |
     長期仮払税金   0|純資産   1782
               |    
                            
                            
             損益計算書          
       ――――――――――――――――     
       売 上 高        ×××     
         :           :      
                   ――――     
       税金等調整前当期純利益  ×××     
       法人税、住民税及び事業税▲245
 
※1782=1973-191
  245=54+191
※以上は、知りうる公開情報の範囲で、柴山が想像した
 過程図なので、あくまでご参考程度にとどめおいてください。
 一定の事実を保証するものではないので、ご注意下さいませ。

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