会社の設立・増資(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第1回)

「株式会社」制度が必要な理由

まずはポイントの1つ目、「株式会社」制度が必要な理由について考えていきましょう。

株式会社の定義です。なかなかそこから考える機会はないと思います。

株式会社って何なのか改めて考えてみましょう。

株式会社とは「株式」という出資者の地位を発行し、この社会に散在する財産を集め「資本」、そして「営利目的の事業」(公共・営利・健全)を大規模に行うための組織形態のことです。

ここで重要なのは、利益を得て社会に分配するという営利目的があるということです。
そして、営利目的の事業には公共・営利・健全の3つの考え方があります。

まずは営利、これは利益を稼ぐことです。

次に健全は、十分な資本金と利益があることです。

財産の状態に安定性があるということです。
また、コンプライアンスと十分な自己資本があることです。

そして公共は、会社の得意なことで世の中に豊かさをもたらす貢献性のことです。

これは会社に限らないですが、組織として動く分には公共の意識が大事です。
これは会社に限らず、すべての人がやるべきことですね。

しかし、公共に加えて営利がなければ、役所や非営利団体、ボランティアになります。

公共だけだとボランティアですが、公共に営利が加わると会社です。
利益を得てやらないと会社とは言いません。

そのため、公共・営利・健全、この3つを効率よく回して、そしてそれをバランスよく豊かさにつなげていくのが経営力です。

これは社長の力量にかかってきます。
公共・営利・健全、ぜひ覚えてください。

さらに事業の経営で大事な3つの視点において、健全は、個人が元手を出して小さく商売をするなら個人商店でも大丈夫です。

社会のあちこちにいるたくさんの人から少しづつお金を集めたほうが社会にとって必要な大規模事業が行えます。

例えば保険とか、海運とか、陸運などです。
そういう大規模事業をするために、リスク分散をして、みんなでお金を集めます。

土木も保険も同様です。

大きな仕事をしようと思ったら個人では無理だから、やはり会社組織しましょうということです。

お金を集めるにあたって、出資者は無限の責任を置いてない、これを有限責任といいます。

個人事業は個人としてやるので個人に全部の借金が来ます。

しかし法人、会社形態の場合は、所有と経営も分かれて出資者はいるうえ、自分の出資額を超えて預けた株式を買ったお金を超えて借金を負うことはないです。
これを有限責任といいます。

改めていきますと、株式、つまり出資者である株主の地位と権利が2つあります。

1つ目は株主総会を通じて経営に参加できる権利です。
これを経営参加権といいます。経営に参加できます。

2つ目は、利益の分配を受ける権利です。これを利益配当請求権といいます。

財産分配請求権という会社を生産するときに残った財産をもらう権利です。

会社法では、継続企業は、清算しないことを前提に考えますので、経営参加権と利益配当請求権、この2つが株主の大事な株式です。

加えて、上場企業の場合が多いですが、例外として時価で株式を売却できることを株式譲渡自由といいます。

しかし、小さい会社は譲渡制限という例外があります。
株主に変な人が入ったら困るからです。

本来、株式を譲渡することによって、社員の地位をやめています。
株式は儲かっていれば、高く売れます。

高く売ることをキャピタルゲインといい、株主総会を通じて経営に参加できる。
それから配当がもらえる。さらに株を高く売れば儲かります。

この3つの利点があります。

では個人事業と比較しましょう。

まず共通点は、営利目的事業を行うことということです。
社会が必要とする商品やサービスを提供し、対価を受領して元手の増分(利益)を得るということです。

次は相違点です。所有と経営の分離があるかどうかです。
また、有限責任かどうかです。

所有というのは、株主(出資者)と経営者取締役は本来別人格で、原則として、制度的には会社を大きくしてほしいので、多くの株主から細分化された出資を集めて、経営者は経営のプロとして大きくしなさいという役割分担が本来あるということです。

あとは個人事業の場合は、所有者と経営者が同一人物で、事業の負債は個人が負担します。

株式会社の場合は、株主と経営者別の人物です。
事業の負債を株主は負担しない、これが個人事業との違いです。

個人事業は所有者と経営者が一致しています。
株式会社は原則として制度的な趣旨の株主と経営者は別です。

事業の負債は、個人事業は個人としての負債です。
会社は会社の負担なので個人に及びませんというのが基本です。

次です。なぜ株式会社にするといいのかというと、メリットが多いからです。
会社の借金と個人の借金は別です。また、信用が付きます。

だから私は会計事務所としてコンサルティングとか相談を受けるときは、将来会社にすることを伝えます。

やはり、将来、株式会社にすることも想定しながら会社の規模を大きくする余地を残しましょう。信用が違います。
規模拡大に適するのが会社です。

税制上の節税メリットは、株式会社のほうが税制上の優遇を受けられる可能性が高いと思っています。

デメリットは手続きが面倒です。こういうメリットがあるので、しっかり手続きを踏んでください。
これは司法書士さんやほかの専門家の方に任せればできます。

「資本金」の意味と仕訳・転記

次は、資本金の話になります。こういった会社制度を前提とすると、資本金は少し大事そうですよね。
特に信用が違います。株式会社の信用があるわけです。
資本金は信用尺度になります。

例えば自分の親戚、あるいは子供が会社行きたいと言ったとすると、資本金10億円の会社と資本金1000万円の会社と資本金100万円の会社の中であれば、資本金10億円の会社が一番良いと思いますよね。
資本金の額は会社の信用のものさしなので、やはり大きいほうがいいです。

設立時または設立後の株式発行に際して、株主から払い込まれた金銭という財産が資本金の定義になります。

資本金の意味は、対外的に信用のものさしになるということです。

例えば、資本金100万円の会社と取引するのと資本金1億円の会社とでは、やはり1億円のほうがしっかりしていると思いますよね。

1億円という資本金を信じて始めたのに、1年後5000万に減ったら騙されたと思うはずです。

つまり、資本金を上げるのは信用が高まるので増資は簡単に意思決定できますが、下げるときは株主に伺いを立てなければいけないうえ、信用が下がってしまうので円滑な商売が阻害されてしまうので簡単には下げられません。

資本金額には法律上の決まりがあります。
資本金の仕訳は、会社の設立後に増資によって、払い込まれた額の全額を資本金(純資産)とするのが原則です。

また、資本金準備金とは、設立または増資に際して、株式から払い込まれた金銭等の財産のうち「資本金」に組み込まれなかった額のことです。
資本金は扱いが厳格ですが、資本準備金は甘めになっています。

「資本準備金」の意味と仕訳・転記

次に、資本準備金の2つの意味について考えましょう。

1つ目は、資本金よりも減少させるときの手続きが簡単でやりやすいので、将来の大きな赤字が出たときに取り崩す可能性があるということです。

そのため資本準備金を残すのが、20年くらい前からのトレンドです。

2つ目は、税制上のメリットなどから資本金を抑えたいときに、払込金額の半分までを資本準備金にできると助かるということです。

これは簿記では学びませんが、これを学ぶことでなぜ資本金を減らすのかということを理解することができます。

今度は、資本金準備金の仕訳の仕方についてです。
会社の設立または設立後の増資において、株主から払い込まれた額の1/2まで資本金とせず、資本準備金として処理することができます。

まとめ

まず、株式会社と個人事業の違い3つについて確認しました。

1つ目は「所有と経営の分離」、2つ目は「有限責任」、3つ目は「規模の拡大に適しているかどうか」です。

次に、「資本金」の意味についてです。
資本金は会社の信用の物差しで、いったん決めたら簡単に減らせないということです。

そして、「資本準備金」の意味についてです。
資本準備金は払込額の1/2以下の金額のことで、資本金よりも減少手続きが簡単なので、将来の赤字を相殺しやすくなるうえ、節税のために資本金を抑えることができるという特徴をもっています。

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