火災による損失(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第6回)

はじめに

火災で固定資産が消失した場合の会計処理についてです。
望ましくないのですが、災害とか不可抗力で建物など固定資産がダメになってしまった場合、保険金が下りたりしますが、その場合の会計処理はどのようにするのかなということを見ておきたいと思います。

まずは火災などで固定資産が焼けてしまったとか、一部無くなってしまった、あるいは壊れてしまった、倒壊してしまった場合にどういうふうに仕訳をするか、そしてそれを受けて保険会社から保険金の確定の連絡があった場合、どういう仕訳をするのか、これもたまに試験に出ますので、この機会に知っておいていただければと思います。

あとは会計実務をやっていても、何年かに1回はこのような話が出ることもあるので、まさかのための会計処理ということで、この機会に学んでおきましょう。これは2級レベルです。

火災による固定資産消失の会計処理

まずは1番目、火災で固定資産が消失などしてしまったケースです。
建物が火災で焼失した場合、あるいは他の理由でも建物を失ってしまうことがあります。
失ってしまった場合、建物勘定を貸方に減額記帳し、同時に減価償却累計額を借方に記帳して、お互いに残高を消し合います。

その固定資産の物件に関する残高をゼロにします。貸方建物、借方減価償却累計額です。だいたい期中です。ピンポイントで期首に無くなるということはめったにないので、だいたい途中で無くなります。

そうすると期首からその災害などがあって無くなる時までの月数で月割り計算します。だいたい月の途中で何かあった時も切り上げて計算します。少し多くなります。

少し切り上げます。0.5なら1にします。0.4でも1にします。
例えば、3月10日に消失しても3月31日に消失したとみなして、少し切り上げて計算することを一応頭の片隅に入れておいてください。

これも実務上よくそういうふうに考えます。あとは問題文の指示に従ってください。

帳簿価額、つまり建物の取得原価、固定資産の取得原価マイナス減価償却累計額、これは帳簿価額、あるいは未償却残高とか簿価と言います。帳簿価額相当額の勘定科目をどうするか、この分だけ差が出ます。

保険未加入の場合の火災損失処理

ケース1、普通は無いと思います。建物を建てて保険入れないというのは自殺行為なので、危なくて仕方ないので、普通は建物に保険を付けますから、ケース1は完全に問題のための問題です。

保険を付していない場合、非現実的ですが、これは火災損失です。問題としては出ることがありますが、実際のビジネスで火災保険に入っていないケースは、あってはならないです。

延焼や何かあったら無限なので、怖いので保険に入りましょう。当たり前です。
必ず不動産買った時に保険に入りますかという話になって、入らなかったら多分、融資すら下りないと思います。

この辺は想像ですが、保険に入らずに建物を買ったケースを見たことないので、普通は入りますから、これは空想上の話です。

稀にあるかもしれませんけど、一応保険つけます。
保険をしてないケースがあるならば、火災損失です。現実的に皆さんの実務は基本的にこちらです。保険を付しています。

限度額がどれくらいかによって限度額を超える簿価ならばこういうところは火災損失ですが、限度額を超えない分は未決算にしましょう。

とりあえず未確定、仮払金みたいなものです。場合によっては、仮払いでやっているケースがあります。実務的に一旦仮払いにしましょうと。未決算勘定なら未決算、仮勘定です。まだ保険金が確定していない、未確定なので、いつまでも未決算勘定ではいけません。

未決算という勘定科目もありえますし、火災未決算や盗難未決算など、そういった形で災害、事故、アクシデントの内容を書くこともあります。いろいろなアクシデントに対応するのは、未決算という3文字の勘定科目がいいです。

では実際に仕訳を見ていきましょう。
保険を付していない場合、帳簿価額を800としましょう。800万円です。

借方減価償却累計額200万円、貸方建物1,000万円、差し引き借方火災損失800万、費用です。通常は考えにくいです。

いきなりこれで火災損失が出るというのは、なかなか保険が普通はあるので、2番のほうが現実的でしょう。

でも試験に出る可能性あります。火災損失は。現実的ではないかもしれませんが、この形も知っておいてください。

保険加入済みの場合の処理と仮払金

それからケース2です。保険を付している場合、保険の額が未確定の状態なので、一種の仮勘定、仮払金みたいなものです。

借方減価償却累計額200、貸方建物1,000、借方火災未決算800。ただ注意が必要です。
2級の問題で出たことがあるのですが、保険金の上限が500万円としましょう。

500万円しか保証されませんから500万円を超える分は、もう損失確定なのです。そうすると、もう1行出てきます。

500万円の保険金ならば、火災未決算500、あと300足りません。300を火災損失とします。

火災未決算を計上する段階で 火災損失が一部出ることもあって、過去にこういった問題が出たことがありますので、一応注意してください。

保険金の上限がそこまで不備なこともないかもしれませんが、でも足りないケースも試験に出ています。もし足りなかったら損失が確定している部分がありますから、確定している分は火災損失になります。

保険の上限まで火災未決算です。 あるいは未決算勘定でもありです。資産勘定とか。

次です。当期首に、建物が火災で焼失した。期中の減価償却は無いということです。
建物の取得原価1,000万円、減価償却累計額200万円、上記建物には限度額1,500万円の保険が付してあったので、限度額内だから全て保険でカバーできる可能性があります。

この800は仮の資産です。借方火災未決算800。帳簿価額です。あるいは未収回収残高。そして借方減価償却累計額200、貸方建物1,000ということで、総勘定元帳は、貸方建物1,000、借方減価償却累計額200、差し引き800が火災未決算と、資産勘定です。これを3回くらい書く練習をしていただければいいと思います。
出たら確実に2級としては正解して得点しておきたいところです。

保険会社からの確定保険金の処理

では2番目、保険会社から連絡があって、保険金の額が確定した場合です。2パターン考えられます。こちらの方が試験に出る可能性は高いと思いますが、保険金よりも帳簿価額が大きい場合、火災損失になります。

仕訳の具体例

帳簿価額が例えば800のもの、借方火災未決算800の状態で、これが貸方800と、取り消しました。未決算の状態では無くなって、750だけで査定が下りました。

再取得原価、もう一回同じものを買い直した場合、いくらぐらいのものかなというイメージなのだけども、その当時の建物、同じ程度の機能のものをもう1回買った場合、いくらの時価かということを査定します。

その結果750と査定されたので、50が火災損失です。保険金は未収金になります。保険金の未回収なので、未収金にします。売掛金ではありません。

営業以外の活動なので未収金を使います。借方未収金750、火災損失50、貸方火災未決算800となります。

状況2、今度は帳簿価額より保険金が高い。これもあります。
資産が値上がりして保険金が多くなるケースはないことはないです。保険差益と言います。

税務上の扱いもあったりするけど、これはインフレの時はあり得るので、一応知っておいてください。例えば、借方未収金900、貸方火災未決算800、保険差益100。

これは特別利益です。特別損失とか特別利益とご理解いただければいいと思います。

では問題を見ていきましょう。
問題2、当期首に、建物が火災で焼失し、未償却残高、帳簿価額を火災未決算勘定で処理していたが、本日、保険会社から保険金750万円に確定したとの連絡を受けた。ということで、未収金は750です。借方未収金750、貸方火災未決算800、50だけ借方が足りないので、火災消失という特別損失になります。

日本の会計処理では通常火災損失は特別損失でしょう。借方未収金750、貸方火災未決算800、差し引き火災損失50です。火災が原因なので火災未決算、盗難なら盗難未決算となるかもしれませんし、未決算、または火災未決算どちらもあると思ってください。

この仕訳も3回くらい繰り返していただければオーケーかと思います。
試験にたまに出ることがあるので、ぜひ得点をゲットしてください。今回のテーマは以上となります。

まとめと学習のポイント

では、まとめです。火災で固定資産が消失した時の話をしました。
ケース1、保険を付していない場合、現実的ではありませんが、帳簿価額800は火災損失です。借方減価償却累計額200、貸方建物1,000とすると、借方800は費用です。火災損失です。

ケース2、保険を付している場合、これは問題文の指示に従ってください。
保険の額が未確定なので仮払金に近い仮勘定、借方火災未決算800、借方減価償却累計額200、貸方建物1,000。帳簿価額の分だけ800は火災未決算で、一種の仮勘定としての資産です。
仮払金に似ていますが一時的な仮勘定としての資産で、火災未決算、または未決算勘定でもいいです。800と理解しておきましょう。

次2つ目、取引の後半です。先ほどの前半は、火災未決算の計上、あるいは未決算の計上です。後半は未決算の取り消しです。保険会社から連絡があって保険の額が確定した場合です。

状況1、保険金よりも帳簿価額が大きい場合は、火災損失です。貸方火災未決算800、借方、保険金が750ならば未収金750、火災損失50です。状況2つ目、帳簿価額よりも保険金の方が大きい、インフレで時価が値上げしているケースです。
そうすると、保険差益が出てきます。貸方火災未決算800、借方、値上がりしていたので同種類の資産を買う場合900のお金が必要だから900の査定がおりました。
これは保険の上限範囲なので、もちろん払われることもあります。保険金借方未収金、貸方火災未決算800、差し引き貸方保険差益100ということがあります。

ぜひ参考になさってください。この辺りの仕訳を3回ぐらい練習していただくと、2級の試験で未決算や保険差益、火災損失の処理を自信持って取り組めますので、ぜひマスターしてください。

PREV
期中取得資産の減価償却(たのしく学ぼう日商簿記3級の超入門 第6回)
NEXT
商品の仕入(三分法) (たのしく学ぼう日商簿記3級の超入門 第7回)