商品の売上(三分法) (たのしく学ぼう日商簿記3級の超入門 第8回)

はじめに

卸売業という形態もご紹介しながら、モノの流れを物流、商品を現金払いで売ったとき、商品を後払いで売ったとき、について解説いたします。

商売は「商品を安く仕入れて高く売る」ことで儲けを得るのが目的です。
まずモノの流れを全体として確認しておきます。

商品の流れと利益

例えば卸売業さんから、我々が小売店としましょう。
ケーキ屋さんとかお菓子屋さんです。商品をたくさんまとめて買います。
まとめて買うと安くなります。まとめて仕入れます。

原価1個150円のものを400円で売れば、差額の250円が儲かります。
25個×4箱、まとめて100個買いました。原価は150円です。

そして店頭で一人一人に細かく売っていきますが、それが蓄積されてトータルで100個売れました。在庫がないという形です。100個仕入れて100個売れました。

仕入れは一気に仕入れますけども、売上は徐々に売り上げていって、気が付いたら全部売れたという形です。
売価400円で店頭で商品を売りました。この流れを見ていきましょう。

売上に関する記録

売上に関して、どのように取引の記録をするかを考えていきましょう。
まずは現金で売上げたときの仕訳です。三分法という方法です。
三分割法とも言いますが、商品売買の取引を「仕入」「繰越商品」「売上」の3つの勘定科目で記録する方法です。

これは前に学びましたが、商品を仕入れ、現金で払った。
例えば100個×150円。左側、仕入という費用が発生します。
100個×150で15,000。借方仕入15,000、右側貸方が現金のマイナスを意味します。
資産のマイナスです。なので、貸方現金15,000となります。

商品の仕入れ15,000に対して高く売上げたいので、今回40,000円で売っています。
上記商品の100個をすべて売価400円で現金売りしました。
左側現金が40,000円増えます。借方現金40,000円、その原因として売上という取引があった。売上という収益が上がった。

従って売上の40,000円から仕入れの15,000円を引いて、差し引き25,000円の利益になるというわけです。

そして現金も40,000円増えて15,000円減っていますから、キャッシュフロー、お金の流れも25,000円増えたということで、めでたしめでたしとなるわけです。

この様子を取引例で見ていきましょう。
×1年度としていますが、商品25個×4箱で100個です。1個あたり150円。
@マークは1個あたりという単価を意味します。

1個あたり150円で仕入れて現金を払いました。
仕入15,000、費用のエリアです。仕入の左側15,000、100個×150円です。
そして右側、現金が減っています。まだ売上げていませんから、売上総利益と言います。
これは覚えてください。
売上と仕入れを差し引きした利益のことを売上総利益と言います。これを粗利益と言います。
商品の販売そのものから手に入れた儲けです。
結局は仕入原価、買った金額よりも高い金額で売ったその差額が利益、
この利益を目的とするのが商売です。そしてこれはビジネス用語ですが、
粗利益などと言うことがあります。

今度は売上です。いくらで売ったのか気になりますね。次を見ていきましょう。
②上記商品100個をすべて店頭で売上げ、現金を受け取りました。売価は400円でした。
売上総利益という言葉があります。これは商品の売買から得られる利益でとても大事な利益です。粗利益とも言います。
この言葉はよく出てきますので、ビジネスの現場でときどき目にしますので、ぜひ覚えておいてください。

ということで2行目、左側借方現金40,000円の資産が増えました。
総勘定元帳、パソコン内でこのように書かれます。右側の売上が収益ということです。
そして最後、売上の右側の40,000から仕入15,000を差し引きして、比較することが大事です。
売上と仕入、これを費用対収益の比較、費用収益の対応と言います。あるいは収益費用の対応、この対応が大事なのです。この売上と仕入をぶつけて、この差額を売上総利益と言いますが、25,000の儲けが多ければ多いほど、商売繁盛です。

商品の価格設定と値上げの重要性

できれば、少しでも安く仕入れられればラッキーです。
もちろん相手があまり安いと嫌がりますので、相手が嫌がらない程度に、相手が取引してもいいという程度に安く仕入れる努力をするのです。そして売るほうもそうです。
あまり高いとお客さんはライバルのお店に買いに行ってしまいます。
もう柴山さんのところは高すぎて買いたくないなんて言われたら困ってしまいます。
なので、お客さんが払える金額の範囲内で高く売ることが商売の基本です。
ぼったくりはいけません。高すぎるとぼったくりと言います。
でもわざわざ低くすることはないので、お客さんが払ってもいいというところを見極めて、そこの高めの設定の中でお客さんが許せる範囲内でお金をいただくことが商売の肝です。
これが価格設定です。お客さんが払える範囲内でできるだけ多く値段を設定する。

安ければいいというものではありません。安いと今度は会社が成り立ちません。
これがいわゆる経済社会のルールです。

お客さんが払えない値段の設定をしてしまうと、お客さんが逃げてしまいますので、その値付けが大事です。会社も利益が必要なので、あまり低くてもだめです。

ほどほどに高い金額、お客様が我慢できる範囲で、どれくらいまでならいただけるかと、ちゃんと見極める。

商品の勘所、センスが問われますが、それが社長さんの役割です。安すぎると給料も払えない、会社がどんどんじり貧になってつぶれてしまったら社会に貢献できません。
会社を維持できるレベルの利益を得る、そしてお客さんがここまでなら払ってもいいという許容範囲で値段を設定する。
ベストはお客さんが払える上限です。一番上に近いところに設定できればビジネスは上手くいきます。お客さんがここまでなら払ってもいいと、忍耐の限度のところでお金を設定していただくのがポイントです。

値上げは商売の基本です。値上げができなければ、我々中小企業は特に生きていけません。
値下げは基本的にしないほうがいいです。

私はコンサルティングをやっているのですが、何でも安くすればいいと思うのは違います。安くなればなるほど給料を払えませんから従業員もきつくなるのです。
自分の首を絞めます。だから実は値下げはあまり良くないです。
不当に高いのはいけません。安ければいいというものではありません。
みんなジリ貧です。野球やサッカーの全然点が入らないゲームはつまらないでしょう。
ある程度、適性の値段があります。高すぎず安すぎず、ということです。
みんなで値下げ競争をしてしまうと、共倒れですからほどほどの値段、値決めが経営ということです。粗利益は大事です。

卸売業者の役割と信用取引

では次にいきましょう。商品を後払いで売ったときどうなりますかという話です。信用取引と言います。
株式の信用取引とは違いますので注意してください。信用取引、後払いの取引フローです。

後払いにすると何が起きるかと言うと、お金を持っていなくても商売ができるのでお客さんが増えます。
売上アップをするときはこの掛け取引、信用取引を導入すると売上がぐーんとアップして会社の規模が上がります。

従ってある程度ビジネスが落ち着いてきて、信用が高まったら、後払いの形、掛け取引でやったほうがビジネスは増えます。
だから後払いの信用取引というのはビジネスを拡大する上では外せない商売のやり方なのです。

卸売業者の立場になってみましょう。今度はメーカーさんから商品をたくさん仕入れます。

例えば、25個×100箱で2,500個×100円、たくさん買いました。
2,500個×100円ですから250,000、たくさん買いました。それを一つのお店ではなくいろいろなお店に売ります。卸します。

例えば、25店舗の取引口座を持っています。それぞれ25個4箱、100個ずつ25店舗に売りました。ちょうど売り切りました。

こういった商売の仲介というか、メーカーさんと小売店さんの間に立ってビジネスの物流、物の流れの交通整理をするのも卸売業者さんはとても大事です。
この信用取引はいずれにせよ、たくさん買ってたくさん売る、そして後払いになれば商売はどんどん拡大しますので、掛け取引、信用取引は大事です。

商品の売掛金と買掛金

後払いなので売掛金、買掛金という言葉を使います。仕入れの場合は買掛金、売りの場合は売掛金となります。ちなみに、卸売に限らず小売店でも売掛金はあります。後払い、つけで物を売るときはあります。

飲み屋のつけのようなものです。ちょっとおばちゃん、悪いけど今お金ないから、給料日にまとめて払うからつけといて、あいよ、みたいなものでつけで売る。これも売掛金です。

では取引例を見ていきましょう。商品を250,000で仕入れました。
25個×1000箱で仕入れ、代金は月末払いとした、掛仕入と言います。

なので、借方仕入250,000、貸方買掛金という負債が発生しました。まだ売上が足りません。今度、②2,500個全てを各店舗に掛け売りしました。
150円です。150円×2,500個なので375,000。電卓をたたきましょう。
2,500×150で375,000で、結構大きな取引になってきました。
375,000売上貸方収益、借方売掛金が375,000となります。

後払いで売ったときは売掛金になります。掛け売りをするときのポイントは、先ほど申し上げましたが、ビジネスを拡大できます。

お金を持っていなくても、いちいち支払いをしなくてもたくさんものを買えるので便利です。売掛金取引がある場合は商売を拡大するチャンスです。そして売上が375,000と仕入れが250,000、差し引きで125,000が売上総利益、粗利になるということをご理解いただければいいと思います。

まとめ

まとめです。

まず、商売は「商品を安く仕入れて高く売る」ことで、儲けを得るのが目的なのですが、物を売るときに、後払いにしたほうがお客さんが増えます、ということで、今回の掛け取引が重要です。

ここでは現金で売上げた場合は、借方現金40,000、貸方売上40,000。左側が現金です。売掛金は未回収の売上代金という意味を持った売上債権とも言いますが、お金を返してもらう権利が手に入りました。資産です。

資産というのは、お金、物、権利とありますが、今回は権利という資産です。
売掛金という勘定科目は左側に書いて、貸方売上375,000とご理解いただければいいと思います。
そして売掛金、買掛金は卸売業以外の業者と掛け取引を行います。皆さんの身近な商売でも売掛金はあり得ます。

私がやっているコンサルティング業でもありますので、売掛金、買掛金はメジャーな取引です。多くの業種で使っていますので、この機会にご理解いただければと思います。

PREV
売上原価対立法による記帳(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第7回)
NEXT
クレジット売掛金(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第8回)