売上原価対立法による記帳(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第7回)

はじめに

まずビジネスの大きな流れとしましては、商品を安く仕入れて高く売ることで儲けを得るのが商売の目的です。

商品を仕入れ、そして売り上げる。卸売業者から商品を安く仕入れて店頭で売るということです。

三分法とは

三分法による記帳を見ていきましょう。
三分法の復習なのですが、卸売業者さんから120個120円で仕入れました。
これは14,400円になりますが、借方仕入14,400、貸方買掛金14,400、だいたい掛けです。

そして一方、売上です。100個としましょう。売価が400円なので400円と120円の差、280円はまあまあの利幅です。
280円×100個なので、28,000円儲かったことになります。

その場合の仕訳、借方売掛金40,000、貸方売上40,000、100個販売という形で、店頭で商品を売ったと考えていただければいいでしょう。

それをふまえて、最後期末の段階で、120個仕入れて100個売っていますので、20個在庫が残りました。仕入14,400が120個分だから100個に戻します。

そうすると、一旦借方14,400の貸方2,400引いて、貸方仕入2,400で借方繰越商品2,400というふうに入れ替えます。

一旦14,400で借方記入したものを2,400に貸方しましたので差し引き12,000円が売上原価、仕入れ勘定で売上原価が求められます。

14,400借方マイナス期末の繰越商品の決算整理、振り替えで2,400を引いて、12,000円の仕入れ。つまり100個かける120円で12,000円の仕入原価と売上が40,000円で28,000円という正しい粗利益、売上総利益が出ました。

という形で見ることができると思っていただけばいいかなと思います。

まずはここまでが三分法によるやり方。
繰越商品、結局決算整理が必要だということが今回のポイントです。

売上原価対立法とは

これをふまえて、売上原価対立法を見ていきましょう。その前に三分法の仕訳です。
単価120円の商品を120個仕入れまして、現金14,400円を支払いました。
これ現金にしましょう。借方仕入14,400、貸方現金14,400。②商品120個のうち100個を売りました。売価400円で現金40,000円を受け取りました。
借方現金40,000、貸方売上40,000。ここまでいいですね。

問題は仕入れたのが120個で、売ったのが100個なので、数量が合っていません。
数量個別対応ができていませんので、この仕入れも最後原価として100個対応にしたいのです。そうすると、20個多いので差し引き100個だけ払い出すということで100にします。

ということは、120を一回計上していますけど、20多いです。100個の売ったものに対して原価売価を比較したいのです。なので、20個引きます。

20個×120円で2,400円。貸方仕入2400、借方繰越商品2400で差し引き12,000円の売上原価、決算整理後の仕入れ勘定は売上原価にします。

12,000円は100個に対する原価、100個に対する売価の40,000で、100個100個で個別対応ができています。会計の時、これが売上と仕入れの個別対応と言います。

個別対応がちゃんとできています。40,000引く12,000で売上総利益28,000円。
これOKですね。決算で決算整理をしないと正しい売上原価が出ないというのが三分法の一つの特徴でした。

これをふまえて売上原価対立法にいきましょう。
商品売買に関する仕訳方法で、2級で学ぶのですが、これは最近よく出てきます。

実務上はなかなかやらないのだけど、製造業、完全工業簿記と言いますが、原価計算をやる場合はこちらです。

売上原価対立法に近い考え方を使います。仕掛品を製品勘定に振り替えて、月次決算で売上原価を振り替えますので、売上原価対立法に相当する考え方は、実は工業簿記でやっています。

読んでいきましょう。仕入時に商品勘定、資産を計上し、販売時には原価で売上原価勘定へとその都度振り替えることです。

販売の都度、短期的に。最後の決算でやるのではありません。期中にやってしまうのです。決算時には自動的に売上原価と期末在庫が記録されるが、販売時に原価が明確。何が言いたいかというと、決算時には自動的に売上原価と期末在庫が記録されます。

決算整理仕訳はいらないのです。これがさっきの三分法の違いです。
三分法は繰越商品の仕分けが必要でしょう。これがいらないのです。

売上原価対立法はもう終わっているから。実は一行で終わっています。
決済時には自動的に売上原価と期末在庫が記録されるので、決算整理仕訳はいりません。

わざわざ三分法のような繰越商品へ振り替えるような決算整理仕訳はいらないが、販売時に原価が明確でなければ使えない。
売ったときいちいち原価を把握していられないから。情報処理があまりできていない小さい会社とか、あるいは普通の会社は、商品は1個ではないから細かく情報処理する必要がない。

スーパーで考えてみてください。スーパーは下手すると、1,000点から10,000点くらいの商品なのに、いちいち原価を見ていられない。売ったときだけ記録しておいて、売上原価をまとめてやってもいいわけです。

という場合は三分法でいいのですが、POSシステムではないけど、大きい会社とか情報システムをちゃんとしているならば、別に売上原価対立法でやってもいいけど、通常はいちいち原価を把握しなくて、最後の最後、月次決算でもいいのですが、あとでまとめて繰越商品というやり方のほうが、一応手間は少ないので、小さい個人商店なんかは多分三分法のほうがいいです。
いちいちこれをやっていられないからです。というふうに考えていただけばいいかなという気がいたします。
販売時に原価が明確でなければ使えない方法です。

三分法と売上原価対立法の比較

三分法は商品売買の取引を仕入、繰越商品、売上の3つの勘定科目で記録します。
売上原価対立法は、売上と原価を分けられればいいけど、やっていられないところもあるでしょう。特に小さいお店がそうです。

わりと小規模の事業とか、いちいち原価計算システムがないケースは三分法のほうがいいです。決算で振り替える。ざっくりしたやり方です。

取引の内容にいきましょう。同じ取引です。売上原価対立法で記帳します。
商品を仕入れたとき、三分法のときは借方仕入だった。これを商品勘定にします。
商品14,400。売ったとき、売上は同じです。借方現金40,000。貸方売上40,000。
三分法はこれでおしまいだけど、売上原価対立法は違います。もう一行つきます。
借方売上原価12,000、貸方商品12,000。売ったときに商品から売上原価に振り替えます。

このような感じです。最後決算整理前の段階で在庫が2,400と商品に出ています。
これが売上原価対立法のポイントです。決算整理はいりません。
決算日、期末商品は20個だけども、別に極端な話、実態を知らなくても帳簿だけで分かりますからね。現品調査しなくても。もう途中で分かっている。もし原価を把握できれば、簡単なやり方です。

売ったときに、借方売上原価12,000、貸方商品12,000。この仕訳が入ることが売上原価対立法のポイントで決算整理仕訳は要りませんということを知っておいていただけばいいかなと思います。

これが2級で出てくる売上原価対立法で、最近ときどき出ますので、三分法との比較をできるようになっていただければと思います。

まとめ

まとめです。
1つ目、ビジネスの大きな流れとして、商売は商品を安く仕入れて高く売ることで、儲けを得るのが目的です。120個を120円で仕入れて400円で売るという形です。
卸売業者さんから買って、店頭で高く売る。小売業者さんの立場です。

この流れをふまえて、三分法でやるやり方は、売ったときに原価の振り替えがないから、決算整理で借方繰越商品2,400、貸方仕入という、一旦費用にしたものを取り消す手続きが必要だということを知っておいて欲しいと思います。

売上原価対立法は見て分かる通り、販売の都度、売上原価に振り替えますので、繰越商品のような面倒な在庫の調整の決算整理仕訳がないことが売上原価対立法のポイントだったりするわけです。ここが大きな違いです。

一方で、売上の都度原価を把握するのは難しいので工業簿記でもない限り、なかなかできないということが実務上あると知っておいてください。

わざわざする必要もないし、決算整理で繰越商品1本の仕訳で売上原価を計算するやり方でもいいではないかと、これが三分法と売上原価対立法の違いということで知っておいていただけばグッドです。

ぜひこれを機会に商品売買を得意科目に近づけて欲しいと思います。

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