まずは、基礎知識です。

のれんといえば、あなたは何を連想するでしょうか。

「そりゃあきまってるだろ!飲み屋やそば屋の入り口に かかっている、あののれんじゃないか!」

…はい、そのとおりですね。

ある意味、のれんは「そのお店の顔」であり、「そのお店の象徴」でもあるわけです。

つまり、「A店ののれん」といえば、「A店の信用力」を示すわけで、
「A店のお弟子さんが、のれん分けをしてもらって独立した」といえば、店の信用力を使ってよい、という許可をもらったに等しいわけです。

ちなみに、のれんは、会計の世界では超過収益力とも言われまして、「その業界の平均値を上回る部分」と解釈されます。

もう少し具体的にいうと、一例として、その界隈のおそば屋さんの平均的なROA(総資産利益率)を2%としますと、A店のROAが5%ならば、ROAで測定したA店の超過収益力のは(5%-2%=)3%です。
まちがっても、超過収益力5%とはいわないでください。

業界平均を上回っているから、「超過」収益力なのですね。

で、こののれんの原因となる要素ですが、柴山的に分類すると、大きく次のようなものにわけられます。

のれん(その事業の超過収益力)の源となる原因要素の例

事例1 立地要因(人通りが多いなど)
事例2 技術的要因(すぐれた経営ノウハウ、技術などがある)
事例3 信用力要因(長い社歴、知名度の高いブランドなど)
事例4 顧客要因(良質かつ大量の見込み客リスト、固定客リスト)

ほかにもあると思いますが、とりあえず典型的には、上記の要因で、平均よりも多くの収益を上げることができます。

ちなみに、商売の大原則からいって、この中でどれが一番大事か知ってますか?

いいかえれば、
「事業の目的からいって、もっとも重要な収益の源はどれか?」
という質問です。

この一発のテストでも、知識偏重ではない、感覚としてのあなたの経営センスがわかります(笑)。

よかったら考えてみてください。

さて、話を戻します。

さまざまな要因で、その事業が「たくさん稼げる金のなる木」であることがわかっているならば、もしもその事業を第三者に譲渡する場面がきた場合、ちょっとは割り増しの値段で営業を買い取ってもらいたい、と思いますよね。

その、「割り増し部分」がのれん(営業権)というわけなんです。

連結決算で子会社を取り込む場合は、「連結調整勘定」などと、かつては呼んだりしていました。

(例)A社は、都内に飲食店事業を展開する会社です。
   ある日、新宿区内で30年間、そば屋の営業を続けていた
   Bさんが、体をこわして息子夫婦の世話になりたいということから、
   知人を介して、A社がBさんの新宿駅前そば屋の営業を買い取る
   ことになりました。
        Bさんのそば屋(B/S)
    ―――――――――――――――――
    普通預金 190|借入金   50
    棚卸資産  10|資 本  250
    固定資産 100|
         ―――|     ―――
      計  300| 計   300
         ===|     ===
    (注)Bさんのそば屋の過去5年の平均値
        売  上  高2400万円、役員報酬900万円
        税引き後利益300万円

この道30年ですから、もちろん 長い歴史を誇り、地元での知名度も抜群です。

加えて、長年支持されてきたそばとつゆの秘伝の味…(なんだか、書いてる私が食べたくなってきました(笑))

もちろん、これまでにごひいきにしてくれた顧客の名簿も、5000ではくだらない膨大な数です。

月日の積み重ねは、尊いですねえ。
これだけの見えない経営資源を持っているのですから、A社としても、色をつけてBさんに営業譲渡代金を払わなければなりません。

ちなみに、もしもそば屋の設備と借金にだけ着目するならば、最低限の評価額は、下記のとおりとなります。

 そば屋のオンバランス(B/S上)ベースの評価。
 1.積極財産(目に見えて使える財産)
    (1)普通預金 190万円    
    (2)棚卸資産  10
    (3)固定資産 100
            ―――
        小計  300万円
 2.消極財産(控除)
    (1)借入金 ▲ 50万円
           ――――
 3.純資産(評価額) 250万円
           ====
…つまり、バランスシート上は、目に見える部分だけで250万円の買取額、という見解もあるわけです。

でも、
「総資産の8倍も売り上げる、驚異的な回転率!」
「役員報酬を足すと、なんと売上の半分もとれる利益率の高さ!」
「総資産と同額の税引き後利益をたたき出す、非常識な総合力!!!!」

こりゃあ、設備等の代金マイナス借金の250万円で売るわけがないですよね。

ちなみに、ここでワンポイントですが、とりわけ個人事業とか零細企業の場合は、役員報酬がかなりアバウトに決められるケースが多いので、利益に役員報酬をたした金額で、財務分析をした方がいい場合が多いです。

上場企業とか年商10億円以上ならば、あまり気にすることはないですが…

ここらが、事業規模によって、会計上の分析の温度差のちがいになったりするんですよね。

で、A社をBさんの間での話し合いにより、ほんとうにざっくりですが、ここでは税引き後利益の5年分ということで、1500万円ののれん代積み増しということにし、純資産250万円とあわせて、1750万円をオーナーのBさんにお支払いして、A社はそば屋を譲ってもらうことにしました。

これで、Bさんは、1750万円という現金を手に、意気揚々(?)と息子さんの家に厄介になることができますね、たぶん…(めでたしめでたし)

さて、つぎに、A社の経理処理の話ですね。

ここで、簿記の仕訳という技術を使うと、次のように表現されます。

(借)普通預金 190万円  (貸)借入金   50万円
   棚卸資産  10万円
   固定資産 100万円
    +
  ※のれん 1500万円    ※現 金 1750万円
   ――――――――――     ――――――――――
   借方合計1800万円     貸方合計1800万円

参考までに、借方(かりかた)は、左側、貸方(かしかた)は右側、という意味です。

簡単に言えば、仕訳の右側の2行目、現金1750万円は、現金の減少を表します。

(現金は、左に書いたら増加、右に書いたら減少)

左一列は、A社が受け入れる財産の一覧表で、Bさんのそば屋の財産に、のれん(超過収益力という見えない財産)1500万円を加味して、バランスシートに受け入れればいいわけですね。

Bさんのそば屋を買収した時の、A社におけるB/Sの変動過程を、下記に示しておきますね。

    Bさんのそば屋を受け入れた時のB/S変動分
   ―――――――――――――――――――――――――
   現 金▲1750万円  |  借入金   50万円
   普通預金 190万円  | 
   棚卸資産  10万円  |
   固定資産 100万円  |
  ※のれん 1500万円  |
   ――――――――――     ――――――――――
   借方増加分 50万円     貸方増加分 50万円

※のれんは、バランスシート上、無形固定資産という区分に表示されます。

以上の結論です。

「買収する事業の純資産よりも、支払う対価(現金または自社株発行など)の価値が大きい場合は、その差額は「のれん」として、無形固定資産に計上される。」

こののれん、日本の会計基準では、5年とか20年とか、ケースによって、会社が決めた年数で少しずつ償却(費用化)していきます。
以上、のれんに関する基礎知識でした。

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