繰延税金資産をなぜ取り崩すのか?(税効果会計)

がんばろう日商簿記1級合格、今回は商業簿記・会計学のテーマで「繰延税金資産をなぜ取り崩すのか」についてお話します。

これは柴山式1級の受講生からいただいたご質問にお答えする形になります。

共有したほうが良い質問があった場合には動画でご紹介をしようと思っています。
税効果会計のところで繰延資産というものがあります。

会計上、将来の利益に対して発生するであろう税金を前払いしたときの処理です。
前払保険料のように、税金の支払い額の一部を前払費用として来年以降に繰り越すという調整で、経過勘定と同じです。

法人税法などを知らないとわからない部分があり、日商検定1級は税務をやる機会がなかなか無いので、一般の受験生は苦労するところです。
実務でわかれば良いと思うので、わからないところは暗記でも構いません。

柴山式の受講生で、法人税の実務がわからない高校生でも1級に受かった方がいらっしゃいますので、ある程度大まかなイメージが掴めたら、細かい実務は社会に出て現場でやればいいのであって、今はとにかく試験に受かることを優先して、仕訳をしっかり暗記して対応してください。

受験生の段階で税効果を完璧に理解するのは難しいですから、今はまず、ある程度処理ができるようになりましょう。

そうは言っても、やりながら疑問に思うことがあります。
たとえば、日経新聞などで会社の決算発表があったときに、バランスシートの借方に繰延税金資産というのがあるのを見かけると思います。
将来、会社の業績が悪化すると見込まれたときに、繰延税金資産を取り崩して費用にしますが、費用を取り崩すとかえって業績悪化に拍車をかけてしまうというのは変な感じがするのですが、これはどう考えたらいいですか?というご質問があります。

たしかにわかります。
将来業績が悪化するのにまた費用が増えるだけです。
繰延税金資産を取り崩す理由について、簡単に実例を使ってご説明したいと思います。
回収可能性に疑問が出てくる場合に取り崩します。

ステップ1

当期にある利益が出ました。
たとえば、実効税率40パーセントとすると、100÷40パーセントで250万ぐらいの利益がでて、他に申告徴税がそれほどなかったとすると40パーセント、税効果には、税引後の利益に対してだいたい一定の安定した税負担比率で法人税等をあげましょうというコンセプトがあります

概ね250万ぐらい利益があって40パーセントの法人税をかけて100万と、本当はそう考えるべきなのですが、今回のケースだと税引前利益はおそらく200万ぐらいしかないはずで、200万の40パーセントならば本来は80万のはずですが、100万かかっているので20万余分にかかっているのはなぜか。

そこでステップ2がでてきます。

よくみると、当期の減価償却費がありますね。
私も監査法人で監査をしているときに見たことがありますが、減価償却は会社がある程度判断してやる部分があります。
会社の必要上、税法が定める償却限度額を超えて償却をすることもあります。
そうすると、減価償却費の一部が税法で認められている限度を超えた場合、たとえば50万超えたとすると、これを費用にしても認めてくれません。

たとえば、会社の利益が200万だとすると、200万に損金不算入、減価償却費否認ということで、50万プラスされて、会計上、損益計算書の税引前利益の200万に50万足して250万というのが課税所得といって、別表というところで計算させられます。

250万の40パーセントということで、100万となります。
ということは、減価償却費50万に対して40パーセント加算されています。
費用をたくさん計上するということは帳簿価額が減りますから、将来除却や売却をしたときに50余計に利益がでます。

だから、当期に費用として認めてくれないと困ってしまうわけです。
将来、帳簿価額が下がった状態で売却をしたときに利益が50出てしまうので、本当に売ったりしたときに、申告書に記載すれば認めてあげますよ、ということになっています。
それはなぜかというと、減価償却というのは見積り計算なので、会社がいくらでも計算していいことにしてしまうと、会社が不正をすることがあるので、税法上で決まっています。

会社の個別の事情で、固定資産の状態に応じて償却費を増やすことは会計上認められていますが、税務上の要件を満たさないので認めてくれないというズレがあります。
これを一時差異と言います。

この50万は、将来、除却や売却をしたときに利益が余分に出るので、そのときに改めて申告書で認めてくれるということです。
「将来認めてあげるから、今は税金を払ってね」ということで、前払いなのです。

将来の減税の前払いだと思ってください。
今回は50万×40パーセントで20万円の税金がプラスされます。
2年後に除却を予定しているので、そのときに帳簿価額は減りすぎているので、50万円の償却費が認められなければ、50万円利益が余計に出てしまいます。

その50万円に税金がかからないように、申告書の別表に記載すれば認めてもらえます。
将来払うべき税金の前払い、除却時の減税効果を回収可能性といっています。
このポイントは、赤字になった場合、払うべき税金がない場合は還付されません。

中間納付や源泉税の支払いと違って返ってきません。
還付されないので、資産としての力が弱いのです。前払した保険料が返ってこないのと同じです。

私が財務分析をやるときには、中小企業でこれをやっていたら、自己資本が積み上がってしまうので、差し引いて無かったことにします。
それは余談として、将来の税金の前払いと思ってください。

貸方は法人税等調整額という名前を使います。法人税「等」です。
そうすると、「借方 法人税等100」。

本当は80ですが、50万の分をプラスしているので、250×40パーセントで100になったということです。
100から20の前払税金を引いて、損益計算書上は正味で法人税等80になります。
そうすると税引前利益200に80が40パーセント分です。
1回減らしているので将来のどこかで費用にします。前払税金をずっと置いておくわけにはいかないので。繰延税金資産は必ずどこかで取り崩します。

それが元々予定されている、これが将来の見込みですが、除却時に取り崩されます。
これの処理が利益が多めに出るときなのです。

ステップ3

2年後、固定資産を除却しました。未償却残高を1円とします。
除却時は1円しか廃棄損が出ません。

とすると、このときに利益50多めに出ますので、税務上は2年前に否認された減価償却費50万を遅れて認容減算させてくれます。

別表4・5・16という減価償却の明細があり、そこに記載します。
今年は会社が黒字だったので減税効果があります。赤字だったら還付されないので効果がありません。

今期、2年後、除却したときに借方は法人税等調整額20で費用にします。
貸方は繰延税金資産20です。

もし、この年が除却した年の損益計算書税引前利益400、他に調整がなかったとすると、400に40パーセントなら160のはずですが、今回は申告減算で400から50万減らしてくれるので、350の計算をしてくれます。

350の40パーセントは140なので、支払額は140になります。
それに前払させられた20を足して160という発生額に変えただけです。
160と400で40パーセントの合理的対応らしきことを言っているわけです。
違う期間における税金費用の付け替えです。
これは黒字だからできるのです。

もしこれが赤字だった場合はどうなるかですが、税引前がゼロだとすると払う税金がありません。還付されません。

減税効果がなければ資産をもっている意味がありません。
たとえば、ステップ2の1年後、ステップ3の除却の前年度になって会社が急に経営環境が悪化して赤字が見込まれるとなったら、次の年に取り崩します。

それが、よく日経新聞とかで言っている、本来なら税金費用が遅れて認容されるべきときに赤字になることが見込まれた場合に、繰延税金資産をもっている意味がないから、回収可能性がなくなったといって取り崩すのです。

泣きっ面に蜂のようなものです。
中小企業は、税効果会計に手間をかける必要はないと思っています。
ケースバイケースですが、中途半端にやって間違った処理をするなら無理する必要はないと思っています。

税金費用の繰延、発生の費用の考え方は知っておいていいと思います。
将来、黒字だから、税金の支払いがあることを前提に、それを減らす効果があるから繰延税金資産。

そもそも支払う税金がなければ効果も何もないので、取り崩しましょうということです。
ぜひ、あなたの1級の勉強の参考になさっていただきたいと思います。

わかったつもりで先にいっても構いません。

今の話で何となくイメージが湧いてくれればと思っています。
私はいつもあなたの1級合格を心から応援しています。
ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。

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