「引当金」という会計特有の負債について、考えてみましょう。
今月は、バランスシートの話を、多く取り入れています。
バランスシートの理解こそが、会計理論をマスターするコツだからです。
そこで、もう一度、バランスシート(貸借対照表)のフォームを、簡単に確認します。

      (左側)   貸借対照表   (右側)
      ―――――――――――――――――――
       (資産の部)  | (負債の部)
       現金預金    | 買掛金
       売掛金     | 短期借入金
       未収金     | 賞与引当金    ←注目!
       短期貸付金  | 退職給付引当金  ←注目!
       立替金     |・・・・・・・・・
       有価証券    | (資本の部)
       棚卸資産    | 資本金
        :       | 当期未処分利益
                 |   :

上記のうち、左側の資産は、会社が持っている財産をたてに一列並べたものです(現金預金、売掛金…)
これに対し、右側の負債は、将来の返済や支出を伴う義務などですね。

この額だけ、将来、資金の支払が生じるのだ、と思っていただいて結構です。(買掛金、短期借入金…)
ここで、買掛金は「仕入代金の未払い」、短期借入金は「銀行などからの借入れ」を表します。

そして、次からが注目なのですが、「○○引当金」と書いてありますね。
これ、会計上は、すごく大事な項目なので、かつ一般には非常になじみの薄い科目名ですから、ここで、ぜひ、さわりだけでも覚えて置いてください。
では、上記の表に即して、よく決算書で見る2つの引当金項目を説明します。

1.賞与引当金…当期の労働に対して、将来支払われると見込まれるボーナスの未払い額。(見込み支給額)
2.退職給付引当金…当期までの労働に対して、将来、従業員に支払うべきと見込まれる退職金の未払い額(見込み支給額)

つまり、「引当金」というのは、当期の何らかの原因で、将来、支払うべき債務がある場合に、当期の未払債務として「引き当て」計上する項目なのです。
たとえば、平成17年1月-6月の労働に対して、平成17年7月にボーナスが600万円支払われるとしましょう。

                   (賞与:600万円支給)
                     7月
    -+—–+—–+—-+–→
     1月    3月    6月       時間の流れ
     |     |  ↑
     ・―――――・  ・――次期の労働力の消費(4~6月)
    当期の労働力の消費      次期のコスト300万円
    3ヶ月分(300万円)

ここで、平成17年3月を決算月(計算の締め)とすると、3月までの労働力の消費に伴うコストを集計する必要がありますよね。
そして、3月の時点でみると、ボーナスの支払は7月と将来ですが、そのボーナス600万円には、「1月から3月までの労働に対する報償」という意味もあるはずです。

それならば、「平成17年3月までのコストを、現金で払っていようが未払いだろうが、正しい業績表示のためにすべて集計するべきだ」という現代会計のポリシーがありますので、見込みで未払い計上(引き当て計上)することになるのです。
具体的には、次のようなB/S、P/Lの関係になります。

                     
                       <貸借対照表の未処分利益
      <決算書のベース>          の計算過程を表す表>
          ↓          |       ↓
        貸借対照表        |     損益計算書
 ――――――――――――――――――― | ――――――――――――
          |(負債)       |     :
           |   :       | 販売費及び一般管理費
  ☆将来の賞与の→|賞与引当金 300  | ・賞与引当金繰入▲300
   未払い見込み  |          |           :
           |・・・・・・・・  |           :
           |(資本)      |           :
           |          |           :
           |   :                ――――
           |未処分利益▲300 ←← 未処分利益  ▲300
           |     ――――
           |   計 ±  0
                 ====

このように、貸借対照表の右側で、利益がマイナスされ、それが上の賞与引当金の数字に入れかわったのです。
つまり、「利益を一部食って、その分を、7月のボーナスの未払いに回した」という理解でよいでしょう。

そして、その利益の減少は、右側の損益計算書では、販売費及び一般管理費、つまり「営業コスト」として明細表示され、利益を減少させるのです。
「貸借対照表の右下にある未処分利益を拡大して、詳細を表示したのが損益計算書である。」という関係です。
覚えておきましょう。

この賞与引当金のような考え方・処理は、退職金でも当てはまります。
「今年の従業員の働きによる退職金の増加分を、見込みで未払い計上しよう」
というのが、退職給付引当金なのです。

(例)前期まで、退職給付引当金を700万円未払いとして計上していた。当期中に、200万円を追加で設定することにした。

 (1)当期の決算で、200万円を設定する前の状態。
                       <貸借対照表の未処分利益
      <決算書のベース>          の計算過程を表す表>
          ↓          |       ↓
        貸借対照表        |     損益計算書
 ――――――――――――――――――― | ――――――――――――
          |(負債)      |     :
          |   :      | 販売費及び一般管理費
  ☆退職金の  →|退職給付  700 | ・退職給付費用    0
   未払い見込み |引当金       |           :
          |・・・・・・・・  |           :
          |(資本)      |           :
          |          |           :
          |   :                ――――
          |未処分利益±  0 ←← 未処分利益  ±  0
          |     ――――
          |   計 ±  0
                ====

 (2)当期の決算で、200万円を設定した後の状態。

                       <貸借対照表の未処分利益
      <決算書のベース>          の計算過程を表す表>
          ↓          |       ↓
        貸借対照表        |     損益計算書
 ――――――――――――――――――― | ――――――――――――
          |(負債)      |     :
          |   :      | 販売費及び一般管理費
  ☆退職金の  →|退職給付  900 | ・退職給付費用  200
   未払い見込み |引当金       |           :
          |・・・・・・・↑  |           :
          |(資本)   ↑  |           :
          |       ↑  |           :
          |   :   ↑            ――――
          |未処分利益▲200 ←← 未処分利益  ▲200
          |     ――――
          |   計 ±  0
                ====

退職金の場合は、「退職給付費用」という名前で、コストを表現します。

上場企業くらいになると、一人当たりの退職金が1千万円をこえることもザラでしょうから、従業員全体ともなると、何億円もの負担になり、財務戦略の観点からも、無視できない問題となるわけです。
以上、引当金という「将来の見込み費用の未払い計上」の話をいたしました。

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