まずは、企業年金の意味から確認いたします。
企業年金とは、福利厚生の一環として「企業が従業員のために年金を支払う私的な制度」のことです。
なお、ここで退職「年金」という考え方についてですが、退職年金は、退職金を分割して支払う方法です。
そのさい、将来の数年間にわたって支払うため、先の方の支払分は金利をのせて支払うことになります。

   退職年金=金利をのせた、退職金の分割払い

こんな感じです。

もちろん、従業員の側では、年金としてもらうのではなく、退職一時金での支給という選択肢もあります。
なお、従業員が退職時に一時金としてもらう場合のニーズとしては、住宅ローンの返済や、所得税の優遇措置の利用による節税、さらには退職後の開業資金など、さまざまありますね。

    企  業
  ・――――――・  退職金(一時金または年金)
  |      | (例)1千万円支給
  |      |    
  |      | →→→→→→ ●
  |      |        ■
  |      |       退職者
  ・――――――・

上記のように、退職金は、長年勤続した人などには、1千万円単位での支給も決してめずらしくないです。
つまり、「退職金は、支給時の資金負担が大きい!」というわけです。

そこで、従業員が在職している数年?数十年の間、掛け金として、毎月コツコツと、母体企業とは切り放された運用組織、すなわち年金基金に資金を少しずつ積み立て、これを金融機関などに運用委託して増やしてもらうという狙いが、企業年金にはあるのです。
そして、この外部拠出の年金資産から、退職金の全部又は一部を退職者に支払ってもらおう、という合理的なしくみなのですね。

    企  業              年金基金
  ・――――――・ 掛け金の拠出   ・――――――・
  |      | (例)月○○万円  |      |
  |      |    ?     | 年金資産 |
  |      | →→→→→→→→ |      |
  |      |          |※賢く運用。|
  |      |          | 資産増加?|
  ・――――――・          ・――――――・
                       ↓
              退職一時金/年金 ↓
              の支払い     ↓
             (例)1千万円   ●
                       ■
                      退職者

もちろん、退職時の支給額を一部企業でも負担するケースも多いですので、そのような額は、企業のバランスシート上、「退職給付引当金」という項目で、負債に計上することになるのです。
ちなみに、将来見込まれる退職金の要支払額を、「退職給付債務」といいます。
将来の支払義務をともなう負債です。

     バランスシート          年金基金
 ―――――――――――――――    ・――――――・
 現金預金500|           |      |
        |資 本 金300    | 年金資産 |
        |利  益200    |      |
        |           |※時価400|
                    |      |
                    ・――――――・

たとえば、上記の会社は、これまでの過去数十年で、すでに年金基金に400億円の掛け金を積み立てていたとします。
これにたいし、現在働いている従業員にかかる、将来の退職給付債務が520億円あったとしたらどうでしょう。
120億円、企業が負担しなければならない部分がありますね。
この、「退職給付債務?年金資産(時価)」が、退職給付引当金の「あるべき設定必要額」のベースと考えておけばよいでしょう。
もちろん、この分だけ、企業の利益が削られて、退職給付引当金にもっていかれます。

     バランスシート          年金基金
 ―――――――――――――――    ・――――――・
 現金預金500|退職給付120→→・ |      |
        |引当金      ↓ | 年金資産 |
        |・・・・・・・  ↓ |      |
        |資 本 金300  ↓ |※時価400|
        |利  益 80  ↓ |      |
                  ↓ |      |
                  ↓ ・――――――・
                  ↓     ↓
                  ・→→→→・↓
                       ↓↓
                       ↓↓
                    退職給付債務520
                       ●●
                       ■■…
                      従業員

ここで、年金資産の運用利回りが当初の想定よりも大幅に悪化したらどうなるでしょうか?
たとえば、上記の例で、バブルがはじけて、年金資産の一部として運用していた株式の時価が大幅に下落したとします。
それにより、15億円の積立不足が臨時に発生したら?
年金資産の期待運用利回りと実際の運用成果との誤差や、退職給付債務の計算の見積もりと実績の誤差などのことを、「数理計算上の差異」といいます。
このような予期せぬ差異が多額に生じた場合、この不足額を一年間の業績に突然反映させ、一気に費用として計上するのは、業績をゆがめてしまうだろう、といことで、10年とか15年とかの年数で、徐々に退職給付引当金に利益から振り替えることも、認められています。
※年金資産の時価が400億円から385億円まで下落し、 15億円の数理差異による積立不足が生じたとすると…
 (積立不足を、15年にわたって少しずつ引き当てるとします)
 
     バランスシート          年金基金
 ―――――――――――――――    ・――――――・
 現金預金500|退職給付121→→・ |      |
        |引当金      ↓ | 年金資産 |
        |・・・・・・・  ↓ |      |
        |資 本 金400  ↓ |※時価385|
        |利  益 79  ↓ |      |
                  ↓ |      |
                  ↓ ・――――――・
                  ↓ ・積立不足の残・
                  ↓ ・ =あと14・
                  ↓ ・・・・・・・・
                  ↓     ↓
                  ・→→→→・↓
                       ↓↓
                       ↓↓
                    退職給付債務520
                       ●●
                       ■■…
                      従業員
 ※退職給付引当金121
  =従来の設定額120+数理差異の償却額(費用化額)1
                   ↑
                   ↑
               15億円÷15年(上記企業の場合)  
 
とまあ、予期せぬ積立不足も、バランスシート上は、少しずつですが、引当金として負債計上することで、カバーしていくわけなのですね。
退職給付会計は、従業員の退職金が一般に多額であることから、非常に企業決算に与えるインパクトが大きいです。
この機会に、基礎知識をマスターしておきたいところです。

●退職給付引当金の用語解説はこちら
http://bokikaikei.net/taisyokukyuhu-hikiatekin.html

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