売上原価対立法と完全工業簿記の関係

売上原価対立法という商品売買の記帳法があります。
これは三分法と並列で考えて良いです。

三分法というのを習いますが、これは「仕入」「売上」「繰越商品」という3つの勘定科目を使います。

もう1つは「商品」「売上原価」「売上」という勘定科目を使う方法を売上原価対立法といいます。

この売上原価対立法という記帳の仕方について、これは完全工業簿記という簿記2級で学習する工業簿記の記帳方法にかなり通じるものがあります。

両者を比較すると工業簿記の仕組みが分かってくるので、この機会にお話をしてみたいと思います。

簡単な事例を用意しました。
商品を100で仕入れた(売上原価100)という話です。

最後に売上原価が100で売上が160になって、60の売上総利益が手に入るケースです。
2つケースを見てみます。

みなさんから見て左側は小売業や卸売業といった商業についてです。
商品を仕入れたら借方は商品100です。

三分法ならば仕入勘定となって費用が増えますが、売上原価対立法では商品という財産が手に入ったと考えます。

借方は商品100(資産のプラス)となり、貸方は買掛金100(負債のプラス)になります。
これが製造業ならばどうなるかというと、100の商品(完成品)を買ってくるわけではなくて、材料を買ってきて加工を加えて工場に投入して完成品を作るのです。

物を作るというプロセスが入るので、工業簿記は若干話が複雑になります。
例えば材料が全体の原価の半分ならば50で、給料などの人件費(労務費)が30、経費が20あるとします。

本当は製造間接費などいろいろ細かいことはありますが、ここではみなさんの理解を短時間で促すために省略しています。

原価100のうち50が材料で、賃金などの労務費が30、電気代や交通費や交際費などが経費20です。

コストの内訳はこの通りです。
材料50だけを掛けで仕入れて、貸方は買掛金50になります。
そして労務費の30と経費の20は現金で払ったので貸方は現金50になります。

みなさんから見て左右対称にしてほしいのは、商品売買の場合は完成した商品を商品勘定という1行で100になりますが、この商品100というのはよく見ると製造メーカーのほうでは材料50と労務費30と経費20というようにコストの内訳が詳しくなっていると思ってください。

商品100のコストの内訳が詳しくなっているのがメーカーです。
製造業の場合は製造に着手するというプロセスがありますが、これは商業や小売業にはありません。

材料という資産、労務費や経費という費用を貸方に書いて消費します。
そして仕掛品という新たな資産に転嫁します。

材料・労務費・経費を0にして、仕掛品という未完成の資産に置き換わります。
こんどは100の仕掛品が、製造が続いて、工場の最終工程を経て、最後に製品となります。

材料・労務費・経費から仕掛品へ、仕掛品から製品へという2段階があるのです。
そして、この完成した品物を工場から製品倉庫に移して、製品倉庫から出荷されて始めて販売です。

製造業の場合は仕掛品と製品という2段階を経ます。
(借方)売上原価(貸方)製品というパターンが製造業です。

一方、商業の場合は製造プロセスが要らないので、売れた場合は(借方)売上原価(貸方)商品となります。

製造業と商業の場合で似ています。
貸方の商品が製品になると完全工業簿記です。

そして、そのとき売れたのが160なので、借方売掛金160、貸方売上160で、これは製造業も商業もどちらも同じです。

違うのは借方の売上原価に対して売上原価対立法は貸方が商品ですが、製造業の場合は製品となります。

材料や仕掛品という未完成の段階があるのが工業簿記のポイントです。
このように売上原価対立法と完全工業簿記の簡単な流れを比較して似ていることを確認してみてください。

プロセスが違うだけでゴールは売上原価対立法も完全工業簿記も同じだということを知っていただくと、工業簿記が身近になりますので参考になさってください。
売上原価対立法は簿記1級でも簿記2級でも出る可能性が高いので、ぜひ理解してください。

私はいつもあなたの日商簿記検定2級の合格を心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました

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