偏差値30台からの逆転!簿記1級合格体験談その2

大野晃氏(以下、大野):「現状の、チャレンジしない人生は捨てないといけない」と思いました。

私は『Mr.Children』の桜井さんが好きで、歌詞が素晴らしいと思っています。
二十歳の頃によく聴いていた「終わりなき旅」という曲の中に「高ければ高い壁のほうが、上ったときに気持ちいい」というような歌詞があります。

私がそれを聴いて思ったのは、お金が欲しいということではなくて、「何かにチャレンジしてその『壁』を上ったときに、どういう景色が見えるのかな?」と、単純に思いました。
それが一番、チャレンジするきっかけになりました。

もちろん、いくら「冒険」とはいっても、生活のことも考えなければいけないと思ったので、間口が広い保険業界なども考えたのですが、仮に入れたとしても、そこですごい競争が行われてしまうと思ったのです。
それならば、入口が狭い業界に行ったほうが良いのではないかと思いました。

柴山政行氏(以下、柴山):入った後に競争するか、入口の段階で競争を勝ち抜いて後の戦いを有利にするかで、後者を選んだということですね。

大野:実際、税理士7万人に対して20代の登録件数は700人しかいないということは、1パーセントしかいないということですよね。
平均年齢は50台とかですからね。

柴山:今の60歳近い税理士の方が若かった頃は、おそらく高度成長期だったので、ビジネス原理も違いますからね。

大野:正直、ビビりましたが、そこを乗り越えたら何かが見えるのではないかなと思いました。

柴山:失礼な言い方ですが、今まであまり使ったことのない「頭を使う分野」にあえてチャレンジしたということですね。

大野:今思うと、コンプレックスが後押ししてくれたのかなと思います。
中学や高校ではスポーツができたり頭が良い人間がフィーチャーされると思いますが、私はそれらのどれにも所属できませんでしたからね。

税理士試験は大卒の方とかが受けているので、私みたいな偏差値30のような人間がその方たちと同じフィールドで戦わないといけないのかと思うと不安もありましたが、そこで勝てないようだったら、夢だ何だといっても超えられないなと思いました。

柴山:その当時は、「勝てる」という自信はありましたか?

大野:ないです。

柴山:自信が無いけど取り組んだという感じですか?

大野:唯一、私が知っていた四字熟語に「背水の陣」という言葉がありますが、まさにそれでした。
もし、税理士に本気でチャレンジできないようだったら、もうダメだと思いました。

柴山:そういう意味では、本当に「腹をくくった」という感じですね。
税理士に決めた動機が2つあるということですが、それはどのようなことでしょうか?

大野:1つ目は、私の父親も税理士なのですが、私が何もしていなかった頃に、従業員の方から「お父さんが『後継者はもういない』って言っていたよ」って言われたことがきっかけです。

他にも色々な方から「宝の持ち腐れだよ」などと言われていました。
しかし、私から見たら、父は中央大学法学部出身ですし、勉強も好きで、本当に「法律家」なのです。

父からも「大学くらい出てないと税理士は無理だぞ」と言われていました。
そういうこともあって、当時は「親父にぎゃふんと言わせてやりたい」と思いました。

意識しないつもりでしたが、やはり意識していましたね。
今は父とは仲が良いのですが、当時は会話なんてありませんでしたし、第一、金髪の奴なんて嫌いだと思いますからね。

そして2つ目が、どうせやるなら、人が「面倒臭い」と思う道を選んだほうがいいなと思ったことです。

一般の人でも6年か7年かかっても早いと言われるくらい大変なものですし、今まで勉強をしてこなかった分、勉強をすることが楽しくなったので、それぐらい大変なもののほうが良いと思ったのです。

柴山:それにしても、簿記1級を取るまでによく頑張りましたよね。

大野:普通は簿記3級に合格して、次に簿記2級に合格して、そして簿記1級を受けるという順に進むと思いますが、私の場合は簿記3級に落ちて、簿記2級にも落ちて、そのまま簿記1級に進んだので、たしかに異色ではあると思います。

柴山:はじめて簿記3級の授業を受けたときは金髪だったのですか?

大野:資格試験というのは当時の私からしたら馴染みがなかったので、資格試験はすごいイベントだというイメージしかなくて、金髪のままスーツを着て試験を受けていました。

柴山:どこかの怪しい消費者金融のお兄さんみたいな感じですね(笑)

大野:それは言われたことがあります、「金融のために簿記やっているの?」みたいな感じで。
そもそも勉強の仕方自体がわからなかったので。

柴山:復習とかはしたのですか。

大野:最初の授業の1・2回目だけですね(笑)。
やはり、人間、決断したからといってすぐに変わるものではないですね。

柴山:勉強する習慣が今までなかったからでしょうね。

大野:私が途中から崩れたのは、学校でミニテストがあったのですが、1・2回目で簡単にできたので、そこで「復習はいらないじゃん」と思ってしまって、バイトをしたり彼女と遊んでいたりしました。
そんなふうになってしまったので、3回目以降は1点・2点という感じになりました。

柴山:簿記3級を舐めてしまったわけですね(笑)

大野:舐めるような立場じゃないのに、舐めてしまったということです(笑)
それからは、ライブの授業も行かなくなって、それこそ、ビデオで時々見たり見なかったりという感じだったので、答練も受けてなかったです。

基礎もわかっていないですし、周りの電卓の叩く音も早くて、「もういいや」という気持ちになりました。

柴山:点数はだいたいどれくらいだったか覚えていますか?

大野:20点ぐらいです(笑)。
第一問の仕訳を運で得点した程度で、それ以外は「何か」で取って20点ぐらいになりましたね。

柴山:逆に20点を取るのは難しいですよ(笑)
散々なスタートでしたが、この後にどういうプロセスで簿記1級にいったのか、つづきは後半ということにしましょう。(つづく)

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